新聞記事から

いくつか興味深い新聞記事があったので紹介までに。


①平岩勇司「この人に聞く(酒井隆史)」『中日新聞』2005年8月2日朝刊

インタビュイーの酒井隆史氏(大阪府立大学)は、アントニオ・ネグリほか(酒井隆史ほか 訳)『〈帝国〉』以文社,2003.1の訳者。専門は社会学、社会思想。

記者から「『不安』にとらわれない生き方を目指すには」と問われて。

酒井「まずはインターネットでなく、互いに顔が見える関係で問題意識を共有する仲間をつくることです。小さな読書会でも、映画を上映する会でもいい。人は焦るとつい声の大きい方向に走ったり、自分も声を大きくしなければと思ったりしますが、やっぱり西川きよしさんの言うように『小さなことからコツコツと』です。『個』を結びつけるため、とにかく動き出すこと。寺山修司の演劇の題名である『書を捨てよ、町へ出よう』という言葉がはやりましたが、『ネットの接続をはずし、書をもって、町へ出よう』と言いたいです。(下線は筆者)

【コメント】

今の自分の戒めに。


②「高齢者虐待 相談が急増」『中日新聞』2005年8月3日朝刊

名古屋市が、今年度7月に設置した「高齢者虐待相談センター」(熱田区)におけるこの1ヶ月間の相談・通報内容に関するレポート。

【事実】

・センターに寄せられた、7月1ヶ月間の相談・通報件数は53件。昨年熱田区役所の窓口として行っていた1年間の相談・通報件数68件に迫っている。

・相談・通報の経路は、設置以前はケアマネジャーからの通報がほとんどであったが、設置以後は本人や家族からの相談件数が15件(28.3%)と増えた。

・相談・通報で虐待者と指摘されたのは、「息子」が最も多く、17件(32.1%)。次いで「娘」と「子の配偶者」の10件(18.9%)、「配偶者」の9件(17.0%)。

・虐待の種類では、「身体的虐待」が約半分を占めた。また「心理的虐待」や「経済的虐待」も目立っている。

【考察】

市は、虐待の背景には、「介護疲れ」があるとみている。相談・通報に対しては、各区役所が中心となって、介護保険のサービス導入について助言を実施。

【コメント】

専門に相談・通報ができる場が出来たことは良い。ポイントは介護保険のサービス導入だけでは問題の解決・軽減には至らない事例である。hard to reach(積極的又は消極的問わず援助を拒む事例)や多問題家族に対する支援について援助者は頭を抱えている訳で。


③高間睦「介護者への支援必要」『中日新聞』2005年8月2日朝刊

加藤悦子氏(日本福祉大学)の報告の部分

寝たきりのしゅうとめを介護する嫁。おむつ交換は1日2回だけ。部屋には、においが充満している。こうした介護放棄に対し、援助職が「おむつ交換の回数を増やしなさい」と言っても解決にならない。口達者な義母に「いじめられた」思いがよみがえり、近づくだけで胸はドキドキ、血圧が上がってしまう。

加藤講師はこれを「介護者の主観的限界」と呼ぶ。客観的には介護できるはずが、苦痛が限界に達し介護できなくなる。どうしてこうなったのか、何に苦しんでいるのか、介護者の立場を見極めることが支援のかぎ。つらい気持ちをねぎらった上で、介護サービスを受けるよう勧めることだ。