浦川雅広「地域情報共有システム『こまめる』の開発と導入の成果」『医療ソーシャルワーカーのための業務マネジメントガイドブック』中央法規出版,2023,pp.240-245

当方も3本執筆したMSWマネジメント本が出版社より届いたので早速読み始める。会長会での報告内容から以前より注目していた福岡県にある飯塚病院浦川さん(福岡県M協会会長)の論文を拝読。

浦川雅広「地域情報共有システム『こまめる』の開発と導入の成果」『医療ソーシャルワーカーのための業務マネジメントガイドブック』中央法規出版,2023,pp.240-245

スタッフによって退社時間が異なるのはなぜだろう 退社時間(遅くても退社時間から30分以内)に帰宅できる部署にできないだろうか

を取り組み動機とされ、業務改善に取り組まれた内容でした。

1つは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を用いた、転院・転所情報の電カル内からの自働生成システムの導入。なお、RPAとは、

これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組み

とのこと(日本RPA協会)。

本論文には字数の関係上書けなかったと推察しますが、グループ会社の麻生情報システムで開発した模様。RPA導入例は他にも、熊本済生会病院名古屋大学医学部附属病院がネット上で確認できました。

電子カルテから一つ一つ、転院打診のためのシートに転記していては膨大な作業時間になるのでこれはありがたいです。

もう1つは、論文タイトルとは異なりますが、QC活動。MSW業務時間調査は1分間タイムスタディーで35項目に分類した退院支援業務を計測し、それらを時間内・時間外に分け、時間外で最も時間を割いているのが記録であることを確認。その上で、多職種へリアリングし、原因分析を進め対策立案(ここまでで約1ヶ月)。

最後に、退院前カンファレンスの準備から実施までの調整にかかる負担軽減で、こちらも準備時間の計測。情報シート作成にRPAを活用。カンファレンス先として想定される、医療機関訪問看護、居宅17か所へヒアリングを実施して、受け手側が欲しい情報の基準を策定。他にも訪問診療医とはオンラインカンファレンスを導入。

また、分析手法としてQC7つ道具を使用するように心がけているとのこと。

smbiz.asahi.com

参考になるアイデアが6ページの中に満載でした。なお、上記の様に書くと浦川氏が非常な人の様に映ってしまうかもしれませんが、論文の最後にこれらの活動の背景にある想いがとても正直に書かれており、共感するところが多く、赤線を引きまくりでした。

不安はソーシャルワーカー協会でモヤモヤしていることを共感してもらうことで、気持ちの整理をさせてもらっています

という言葉も本当にその通りだと思います。

管理者MSWにとって必読の論文。関心のある方は是非本書を購入し、論文を読まれてみては如何でしょうか?