学会発表支援ゼミナールを運営して

学会発表を支援する研修を運営する中で思ったことをつらつらと記載します。

愛知県医療ソーシャルワーカー協会では、2020年に開催予定だった第40回日本医療社会事業学会(愛知大会)に多数の会員に発表してもらいたいという思いから、学会発表支援ゼミナールを開催しました。当協会では過去にも、何度か実践研究について単発の研修を開催しています。その場では、何だか分かった気になって研修を終えるのですが、実際に実践研究に手を付けるかといえば必ずしもそうはならず日々が過ぎていき、やがて忘れる、ということの繰り返しでした。この場合、講師が原因ということではなく研修の構造に原因があると考えていました。

無論、実践研究をやる意義についての喚起ということ点では、単発の研修で良いように思います。一方、初学者が学会発表をするにはやはり一緒に取り組んでくれるメンターが必要です。それは職場の先輩や上司が担ってくれるところもあると思います。しかし、上司がいても日常業務で多忙のためそこまで手が回らない。上司がいないので指導が受けられないといった悩みがあります。

そのため、そのウィークポイントを職能団体である当協会がきちんと支援することが必要です。この場合、単発の研修ではなく数回に渡り進捗に応じて継続的に支援をする研修構造である必要があると考えました。

幸い、実践研究に協力頂ける大学の研究者がいらっしゃったおかげで、全6回に渡る継続研修を開催することができました。本研修は、2019年度に初回が開催され、2020年度はコロナで中止、2021年度が現在開催されています。

2021年度学会発表支援ゼミナール

https://2021-gakkaihappyou-amsw.peatix.com/


研修の構造としては、参加者は10名以内。「研究のいろは」から「研究計画書の作り方」・「研究進捗報告」・「抄録報告」・「パワーポイントの発表」の5段階に分けて、それぞれに提出物の期限を設けています。これにより、一人で研究に取り組む際の、「まぁ、忙しいから今回はやめておこう」となりません。提出物については、研究計画書・抄録・パワーポイントについては講師から添削をしてもらい、その指導内容を踏まえて書き直したものを再提出してもらっています。また、ゼミナール形式にすることで一対一ではないことから、他のゼミ生(受講者)同士、お互いに励まされますし、進捗に一喜一憂します。適度な刺激は重要ですね。各回のプログラムとしては、本人からのプレゼンテーション、講師からの好評と受講者からの質疑応答・グループディスカッションを1つの回の中で行います。1回あたり3時間としています。

受講者として想定しているのは、初めて学会発表をする・したい人としていますが、それでもなお受講者の能力や事前準備状況・動機・テーマは様々なため、個別のフォローが必要となります。

実際に開催してみて気付いた、運営のポイントとしては、専門的な量的・質的研究法について教える時間はありません。そのため、それらについては大学や学会で開催している研修等について適宜情報提供しています。また、個別に濃厚に指導が必要な場合は、大学院の研究生や入院をお勧めしています。できれば、この研修をきっかけに、研究すること(学ぶことではない)の面白さに気づき、大学院に入院して、研究に取り組んでくれると嬉しく思います。実際にその様な方も登場しており、やっててよかったなと思います。

運営上、全6回でやれること・やれないことを明示しておくことが重要だと思います。各回の合間で講師に個別に相談したいことがある場合は事務局を通してもらうことで、講師に過度に負担がかからない様にします。だらだらとした関係にならないようにすることが大切だと思います。講師料の契約内容とも関係してくるため、研修当日以外の対応については予め講師と取り決めておく必要があります。

 

あくまでも初めて学会発表をする・したい人向けとコンセプトがぶれない様にしなければいけません。入り口が入りやすくないと、怖くて申込頂けなくなってしまいます。

オンライン開催とリアル開催の共通点と違いについて

オンラインの良い点は、会場の移動時間やCOVID-19の感染について気にしなくて良い点だと思います。仕事や家庭で忙しい受講者にとって、オンライン開催は研修参加のハードルを物凄く低くしてくれました。研修終了後も、直ぐに別の事に取り掛かれます。距離を問わないため、他県からの受講者がいても、何も支障はありません。

共通点としては、講義系の内容や各自の発表を聞くというところはオンラインでもリアルでも変わりがない様に思います。また、「研究のいろは」から「研究計画書の作り方」・「研究進捗報告」・「抄録報告」・「パワーポイントの発表」の5段階に沿って、課題の提出期日を設けることで、取り組む動機ができることにも変わりがないと思います。

違いとしては、リアルであれば講師と運営スタッフが離れた場所で打ち合わせをする。講師と受講者あるいは受講者同士が顔を合わせて身振り手振りも交えてグループディスカッションができます。オンラインの場合、それらのやり取りの中で、相手の表情や雰囲気などの空気感がなかなか掴みにくいため、ニュアンスを計りかねるところが苦労するところです。ブレイクアウトルームの場合、各グループの雰囲気を全体で把握することが物理的にできません。各グループに除きに行くこともできますが、話の間に入ることができずかえって会話を妨げてしまうなと思います。また、画面越しだと、ちょっと講師に聞いてみよう。隣に座った人にちょっと話しかけてみようという「ちょっと」がなかなか声掛けしづらいのかなと思います。

以上、学会発表支援ゼミナールの運営を通して気づいたこと・考えたことについてつらつらと記載しました。