難波眞「法改正で施設ケアマネジャーは施設運営の要としての役割を」『GPnet』2005.12,pp.35-41

【論文の種類】評論 【内容】 一施設の施設長の目から見た、施設ケアマネジャーの役割についての論評。加えて、平成17年10月以降の管理栄養士の業務変化についても言及。 【コメント】 著者による以下の文章は、(実務経験が受験資格に満たないので)ケアマネジャー資格の無い支援相談員である私にとって、大変耳の痛い話ではある。しかし、これも老健にいる支援相談員の一側面であることは確かなので、参考まで以下に引用。


「ケアマネジャーの登場で、その立場が変化してきた職種に支援相談員がある。今まで利用者と家族への窓口になっていたのだが、通所とショートステイに関しては、在宅のケアマネジャーが立てたケアプランに基づいて施設利用の相談を受けるようになった。 利用者の相談窓口であったときは、支援相談員が日程の調整やベッドの調整について中心的な働きを行ってきたのだが、在宅のケアマネジャーが利用者の単位を考えて日程調整をしてくる。本来必要な日数でなく単位中心の考えである。施設の相談員は、その受付になってしまっている。 入所についても同じだ。施設利用者が施設に来る前の様子をよく知り施設内での事柄を理解し、対処についてはどのような社会資源とつなげていくかということが大切な働きであったが、施設内ケアマネジャーの登場と在宅のケアマネジャーの働きによって、その立場は微妙なものになってきている。 ケアマネジャーの資格を持たない支援相談員は、片腕をもがれた鳥のようなものだ。片肺飛行というもので、十分な力が発揮されないままに仕事をしていることになる。したがって、ケアマネジャーの資格を持たないことには、ただの受付と同じことになる。 施設内ケアマネジャーは、支援相談員と比べると大きな働きをすることになる。これからは施設内に複数のケアマネジャーを置くことが理想になってくる。一人で担当できる数に限りがある。在宅のケアマネジャーの理想的な利用者数はこれからは30名ほどになってくる。モニタリングに訪問できる件数が1日2件はなかなか難しい。それと同じように、ケアマネジャーが、100名の利用者に対して一人で関われるかというと問題だ。見直しが3ヶ月に1回でいいといわれても、老健施設では多くの利用者が、入退所を行っている。それらの人については、どうしても退所前にケアプランを見直しておかなければならない。そうすることによって、在宅でのケアマネジャーにつなぐことができる。 このように考えると、ケアマネジャーの働きは、以前の支援相談員の働きと同じことになる。ケアマネジャーが複数いることにより、その老健施設は、老健施設としての働きを十分に果たすことができるようになる。」(p41)
ちなみに、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」(平成一二年三月一七日老企第四四号)(各都道府県介護保険主管部(局)長あて厚生省老人保健福祉局企画課長通知)では、支援相談員の業務について以下のように規定されている。 四 支援相談員 (一) 支援相談員は、保健医療及び社会福祉に関する相当な学識経験を有し、次に掲げるような入所者に対する各種支援及び相談の業務を行うのにふさわしい常勤職員を充てること。 ① 入所者及び家族の処遇上の相談 ② レクリエーション等の計画、指導 ③ 市町村との連携 ④ ボランティアの指導 一方、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成十一年三月三十一日)(厚生省令第四十号)では、介護支援専門員の業務について以下のように規定されている。 (施設サービス計画の作成) 第十四条 介護老人保健施設の管理者は、介護支援専門員に施設サービス計画の作成に関する業務を担当させるものとする。 2 施設サービス計画に関する業務を担当する介護支援専門員(以下「計画担当介護支援専門員」という。)は、施設サービス計画の作成に当たっては、入所者の日常生活全般を支援する観点から、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて施設サービス計画上に位置付けるよう努めなければならない。 3 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画の作成に当たっては、適切な方法により、入所者について、その有する能力、その置かれている環境等の評価を通じて入所者が現に抱える問題点を明らかにし、入所者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握しなければならない。 4 計画担当介護支援専門員は、前項に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、入所者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、計画担当介護支援専門員は、面接の趣旨を入所者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。 5 計画担当介護支援専門員は、入所者の希望、入所者についてのアセスメントの結果及び医師の治療の方針に基づき、入所者の家族の希望を勘案して、入所者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、介護保健施設サービスの目標及びその達成時期、介護保健施設サービスの内容、介護保健施設サービスを提供する上での留意事項等を記載した施設サービス計画の原案を作成しなければならない。 6 計画担当介護支援専門員は、サービス担当者会議(入所者に対する介護保健施設サービスの提供に当たる他の担当者(以下この条において「担当者」という。)を召集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催、担当者に対する照会等により、当該施設サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。 7 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画の原案の内容について入所者又はその家族に対して説明し、文書により入所者の同意を得なければならない。 8 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画を作成した際には、当該施設サービス計画を入所者に交付しなければならない。 9 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画の作成後、施設サービス計画の実施状況の把握(入所者についての継続的なアセスメントを含む。)を行い、必要に応じて施設サービス計画の変更を行うものとする。 10 計画担当介護支援専門員は、前項に規定する実施状況の把握(以下「モニタリング」という。)に当たっては、入所者及びその家族並びに担当者との連絡を継続的に行うこととし、特段の事情のない限り、次に定めるところにより行わなければならない。 一 定期的に入所者に面接すること。 二 定期的にモニタリングの結果を記録すること。 11 計画担当介護支援専門員は、次に掲げる場合においては、サービス担当者会議の開催、担当者に対する照会等により、施設サービス計画の変更の必要性について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。 一 入所者が法第二十八条第二項に規定する要介護更新認定を受けた場合 二 入所者が法第二十九条第一項に規定する要介護状態区分の変更の認定を受けた場合 12 第二項から第八項までの規定は、第九項に規定する施設サービス計画の変更について準用する。 (平一五厚労令三一・旧第十三条繰下・一部改正) (計画担当介護支援専門員の責務) 第二十四条の二 計画担当介護支援専門員は、第十四条に規定する業務のほか、次に掲げる業務を行うものとする。 一 入所申込者の入所に際し、その者に係る居宅介護支援事業者に対する照会等により、その者の心身の状況、生活歴、病歴、指定居宅サービス等の利用状況等を把握すること。  入所者の心身の状況、その置かれている環境等に照らし、その者が居宅において日常生活を営むことができるかどうかについて定期的に検討し、その内容等を記録すること。 三 入所者の退所に際し、居宅サービス計画の作成等の援助に資するため、居宅介護支援事業者に対して情報を提供するほか、保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者と密接に連携すること。 四 第三十四条第二項に規定する苦情の内容等を記録すること。 五 第三十六条第二項に規定する事故の状況及び事故に際して採った処置について記録すること。 (平一五厚労令三一・追加) 上記の通り、介護支援専門員の業務のうち赤字の部分は全くといって良いほど、支援相談員の業務と重なっており、このことが、本論文の指摘に反映されているものと思われる。支援相談員と介護支援専門員の業務分担の程度や両職種の兼任の有無によって、同じ支援相談員でも業務にかなりの幅が出ることが予想され、このことが要因でもあって、以前から指摘するように同業種間でなかなか共通言語ができないのだろうか・・・ 【関連文献】 難波眞「施設内ケアマネジャーは地域を変える」『月刊総合ケア』10巻5号,2000.pp.32-37