日本療養病床協会の平成20年度診療報酬改定に向けての提案

年末に向けて、いよいよ診療報酬改定への各団体の動きが活発化しだした。回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の会長である石川誠氏(初台リハビリテーション病院院長)は、日本療養病床協会の理事でもある。その辺りが今回の同協会の展望にも影響しているのか。いよいよ、MSWの必置制が現実のものとなるのだろうか。実現に向けて、MSWのマクロデータを収集・分析している各団体の関係者の方々、頑張って下さい。 以下、日本療養病床協会HPより転載。


リハビリテーション制度改革への展望 (平成19年4月12日)                                                                            日本療養病床協会 会長 木下毅   日本のリハビリテーションは現在、急性期・回復期・維持期に分けられている。しかしながら、急性期リハビリテーションは行われていないに等しく、現実に急性期リハビリテーションの役割を担っているのは、回復期リハビリテーション病棟の一部であると言える。今後、急性期DPC病院は平均在院日数がさらに短縮されることもあり、ますますその傾向が強まっていくと考えられる。 将来的には、急性期DPC病院にも現在の数倍のリハビリテーションスタッフの雇用が促進され、1~2週の短期入院期間においても適切で十分な急性期リハビリテーションが行われるであろう。しかし、それが実現されるまでは、回復期リハビリテーション病棟を、急性期リハビリテーション機能を有する「早期回復期リハビリテーション病棟」と、従来の回復期リハビリテーション機能を有する「後期回復期リハビリテーション病棟」とに分けて考えるべきではないだろうか。特に高齢の脳血管障害患者の場合、発症後6ヶ月でもともとのQOLを取り戻すことは非常に困難であり、少なくとも1年間のリハビリテーションが求められる。さらに、一部の後遺症が多く残る症例には、その後の慢性期リハビリテーションが必要である。 平成20年度から施行される後期高齢者医療保険制度では、『後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療を提供し、患者の尊厳を大切にした医療が提供されるように』と提唱されている。このような方針が打ち出されているにもかかわらず、リハビリテーションの算定日数制限により放置されている高齢障害者や、合併症等でターミナルを迎えた高齢者に、継続したリハビリテーションや適切な栄養補給が行われないならば、かつてのように、寝たきりのまま四肢の屈曲拘縮で動けなくなった患者が、累々とした大群で発生するであろう。老いさらばえ、枯れ果てたミイラ状態で死亡することも起こり得るだろう。そのような事がまかり通れば、高齢者の尊厳はどこにあるというのであろうか。 私たち国民は、戦後の日本の復興を支えてくれた高齢者が、そのようにみじめに死亡していく状態を決して看過することはできない。「死にゆく後期高齢者には栄養も水分も与えず、リハビリテーションの必要性もない」という、極端な意見を持つ人がいることは、まさに恐ろしいことである。たとえ回復の見込みがなく、心肺蘇生までは必要としない患者であっても、ターミナルリハビリテーションは行われなければならず、尊厳ある死を迎えていただきたい。 当協会会員病院は、早期回復期からターミナルリハビリテーションまでの幅広いリハビリテーションを提供できる能力をもつ病院が多い。100床当たりのリハビリテーションスタッフ数をみても、療養病床が平均3.2人、老人保健施設が平均2人となっており、療養病床の持つリハビリテーション実施能力が高いことが示されている。これらの病院が現在まで、誠実に適切な高齢者医療を行ってきた努力と結果を評価されたい。後遺症の残る患者にも適切で継続したリハビリテーションを行うことによって少しずつでもQOLを改善させてきたのである。 また、高齢者は介護保険関連施設のみで最期を迎えるわけではない。「発症からある一定期間過ぎたリハビリテーション介護保険で対応する」という割り切った政府の意向には賛同できない。リハビリテーションは医療であるということの原点に戻り、疾病発症からの継続したリハビリテーション体制が再構築されることを心より望むものである。 本年4月の診療報酬改定では、維持期リハビリテーションに関する微調整が行われたが、適切に評価しているとはいえない内容となっている。そこで、当日本療養病床協会として、平成20年4月の抜本的改革へ向け具体的な提案を行いたい。     [具体的提案事項]     ①回復期リハビリテーション病棟は、早期回復期と後期回復期の2種類に分けた診療報酬を新設する。     ②早期回復期は、発症後最大4ヶ月とし、後期回復期は最大8ヶ月までとする。     ③後期回復期リハビリテーション病棟退院の後は、慢性期リハビリテーションとしてリハビリテーションの継続を可能とする。     ④ターミナルの状態においても、関節拘縮の予防策と尊厳ある死を迎えるためのターミナルリハビリテーションを週2回程度認める。     ⑤リハビリテーションは、いずれも個別リハビリテーションを基本とする。     ⑥新しいリハビリテーション提供体制は、 「急性期→早期回復期→後期回復期→慢性期→ターミナル」 とし、後期回復期リハビリテーションまでは医療保険が対応し、慢性期リハビリテーション以後については、医療保険介護保険を適切に組み合わせて対応する。     ⑦急性期DPC病院での急性期リハビリテーションの必要性を再認識し、必要なリハビリテーションを行うようにする。     ⑧後期回復期リハビリテーション病棟入院以後の各期については、コメディカルによるチームリハビリテーションを診療報酬に新設する。 (参加必須職種:医師・看護師・介護福祉士・PT/OT/ST・MSW・管理栄養士)     ⑨リハビリテーションの診療報酬については各リハビリ期とも同一点数とするものの、1日あたりの実施単位限度を9単位から1単位までと、リハビリテーションの必要度により制限する。     ⑩在宅への訪問リハビリテーションや通所でのリハビリテーションを重視し、診療報酬上優遇する。また、訪問リハビリテーション医療保険対応とする。