厚生労働省が医療療養病床削減を断念

昨日、職場で目にしてビックリ。医療施設動態調査によると、H18.2末381,840床あった(医療・介護含む)療養病床は、2年後のH20.2末には361,145床と既に20,695床減少(-5.4%)している。但し、病院と一般診療所では減少幅が異なり、前者は15,566床減(-4.3%)、後者は5,129床減(-21.6%)で一般診療所の療養病床の減少幅が大きい。 なお、池上(2006)や厚生労働省(2006)が指摘している様に、一般病床と療養病床の比率や療養病床における医療保険介護保険介護療養型医療施設)の比率、高齢者一人当たりの給付費には地域差があり一概に多いとか少ないとかは言えない。日本、都道府県単位、市町村単位、それぞれのレベルで影響を分析する必要がある。 ちなみに筆者の集計によると、滋賀県ではこの2年間でむしろ355床増加(13.7%)、北海道では3,073床減少(-10.7%)していた。これに介護療養型医療施設の割合が加味され、H23の全廃以降、地域によって影響にグラデーションが存在しうることが予想される。なお、愛知県(2007)によると私の勤務している圏域にはH19.6.1現在、介護療養型医療施設が9施設(477床)ある。今後、医療療養病床も含めて動向に注目したい。 【引用文献】 ・池上直己「療養病床の将来-慢性期入院医療実態調査からの課題-」『社会保険旬報』№2284,2006,pp.14-20 ・厚生労働省療養病床再編成の意義』2006 ・愛知県『介護保険・高齢者福祉ガイドブック』2007 【参考文献】 ・二木立「療養病床の再編・削減-手続き民主主義と医療効率の視点から」『文化連情報』№343,2006,pp.28-35 以下、新聞記事を転載。


療養病床削減を断念 都道府県需要調査『25万床維持必要』厚労省方針転換」『毎日新聞』2008年5月24日夕刊 長期入院する慢性病の高齢者向け施設である医療型「療養病床」(25万床)を11年度末までに4割減らす計画について、厚生労働省は削減を断念し、現状維持する方針に転換した。都道府県ごとに需要を調査した結果、25万床前後の確保が必要と判断した。厚労省は療養病床削減により医療給付費を3000億円削減する方針だったが、今回の計画断念で高齢者の医療費抑制政策全般にも影響を与えることは必至だ。【吉田啓志】  政府は06年2月、「入院している人の半分は治療の必要がない」として、当時38万床あった病床のうち介護型療養病床(13万床)を全廃し、医療型療養病床を4割減らして15万床にする方針を決定。達成に向け、「医療の必要度が低い」と判定された人の入院費を減額し、そうした入院患者を多く抱えていた場合は病院経営が成り立たなくなるようにした。  しかし病床削減策は、入院先を求めて住み慣れた地域をやむなく離れたり、お年寄りを引き取った家族が介護に悲鳴を上げるケースなどを生んだ。「患者追い出しを誘導し、行き場のない医療難民を大量に生む」との強い批判も招いた。  このため厚労省は07年4月、医療型療養病床のうち回復期リハビリ病棟(2万床)を削減対象から外し実情調査。必要とする療養病床数を積み上げたところ、当初計画を7万床上回る約22万床に達することが判明した。一方で削減対象から外したリハビリ病棟は少なくともいまの1・5倍、3万床程度は必要になるとみられている。需要数を合わせると現状と同じ25万床前後となり削減計画の見直しに追い込まれた。
療養病床、削減手詰まり・都道府県計画、厚労省目標を7万床超過」『日経新聞』2008年5月24日 厚生労働省社会保障費抑制のために進めている「療養病床」の削減計画が行き詰まりかねない雲行きとなった。療養病床は慢性疾患を抱える高齢者などが長期入院する施設で、同省は今の35万床を2012年度末に15万床まで減らす計画だった。ただ、日本経済新聞が実施した聞き取り調査によると、各都道府県が残す予定の病床数は約22万床に上る。同省は都道府県などに追加的な見直しを求める。 「社会的入院」が多い療養病床は日本の医療費拡大の背景のひとつとされる。厚労省は医者による治療があまり必要ない患者の一定割合を介護施設などに移し、療養病床を15万床に削減。コストの高い病院から相対的に安い介護施設へ患者が移ることで、社会保障給付費を年3000億円節約できるとはじいていた。(24日 07:00)