「備える 介護保険⑬ 削られる療養病床 退院後の対策 迫られる患者」『朝日新聞』平成20年6月26日

結構実態に近い話だと思います。療養病床削減の話題と同時に医療ソーシャルワーカーが紙面に登場するようになりました。皮肉な話ですね。 病院で退院後の療養先・方法について困ったら、是非入院先の病院の医療ソーシャルワーカーにご相談ください。もちろんそれ以外にも発症・受傷をきっかけとした生活問題全般についても相談にのってくれますよ。 以下、転載。
病院には一般病床と別に、長期の治療が必要な慢性疾患の患者が入院する病床があります。 療養病床と呼ばれ、介護保険が適用されるものもあります。しかし、厚生労働省はベッド数の削減を進めており、退院する時にどうすればいいか早めの準備が必要です。   ○ ○ ○ 療養病床は、医療保険が適用される医療型が25万床(2006年度、リハビリ用含む)、介護保険適用の介護型が、12万床(同)ある。 厚労省によると、介護型の平均在院日数は444日(2006年)。退院後の行き先は、他の医療機関39%、家庭15%、施設17%。施設の内訳は介護老人保健施設老健)と特別養護老人ホーム(特養)が大半だ。また、亡くなった人が27%。 療養病床には、医療の必要性は薄いが独居などのため入院を続けざるを得ない「社会的入院」も多いとみられる。厚労省は、2012年度までに医療型を20万床程度に減らし、介護型を2011年度にすべて廃止する方針だ。 退院後の生活をどうするか。相談先には、病院にいる医療ソーシャルワーカー(MSW)が考えられる。患者の心身の状態や意思、家族の希望、経済的事情に応じて助言してくれる。 東京都八王子市の永生病院(一般・療養病床)のMSW甲斐麻美さん(34)は「転院以外では、医療職がいてリハビリも受けられる老健がいい。自宅に戻るまでのワンクッションにもなる。また、長く入れて費用が安い施設を希望し、症状が軽い人には特養が向いている」と話す。ただ、老健は入所期間が短く、特養は待機者が多い現状がある。 甲斐さんは「訪問看護や介護のネットワークが整い、いざという時に入院できる医療機関が近くにあれば、要介護5でも自宅に戻ることが十分できる」と付け加える。入院時は寝たきりで会話や食事できなかった人が自宅に戻ることで、簡単な言葉を話し、食事できるようになった例があるという。 受け入れ先探しに注意が必要なのが、腹部にあけた穴からチューブで栄養を補給する胃ろうの人や、たんの吸引が必要な人たちだ。 横浜市青葉区たちばな台病院(一般病床)のMSW 、佐藤憲行さん(32)は以前、転院した先の療養病床を退院することになった患者の家族から相談を受けた。「胃ろうがあったので、自宅近くで受け入れてくれる老健が見つからなかった」という。 胃ろうの取り扱いやたんの吸引は医療職と家族に限定されており、医療職の少い老健では敬遠されることがある。「こうした行為を介護職にも広げなければ、療養病床の軽減で、施設に入れず行き場を失う人が出る可能性がある」とSさんは心配する。 厚労省は介護型の療養病床を、従来の老健より医療職の配置が手厚い「介護療養型老健」に転換して「受け皿」にする方針。だが、日本療養病床協会は「転換に具体的に動いているところまだ少ない」という。 患者にとっては、地域包括支援センターやケアマネージャーにも相談して、施設のメリット、デメリットを把握し、早め行動することが大切だ。