「【特集】新研修医に贈る 院内を駆け回るための15のTips」『週刊医学界新聞』№第2825号,2009年04月06日

新研修医が院内を気持ちよく駆け回るためのTips(ヒント)を専門家5名が3つずつ伝授。MSWが登場。 「【特集】新研修医に贈る 院内を駆け回るための15のTips」『週刊医学界新聞』№第2825号,2009年04月06日 黒木 信之(名古屋第二赤十字病院 医療社会事業課課長 医療ソーシャルワーカー
Tips1 急性期病床からの転院は複雑。患者の条件に合う転院先を選択しよう  医療機関は,医療機能分化,出来高払いや包括払いの導入で大きく変化している。患者の条件(年齢・病名・ADL・医療依存度・薬の量など)により,受け入れ先は,一般病床(出来高払い),亜急性期病床(包括払い),回復期リハビリテーション病床(包括払い),療養病床(包括払い),緩和ケア病床(包括払い)など大きく変わる。  急性期治療の終了後,治療継続が必要か,機能回復が必要か,また長期介護が必要か,緩和ケアが必要かの評価で転院先が決まってくる。患者の条件に合う転院先を選択しないと相手の医療機関とトラブルが生じてしまう。地域連携パスの診療報酬評価でますます地域との連携が重視されている。 Tips2 医療費の自己負担は,年齢・所得で異なる。医療保険の仕組みの理解が大切  医療費は加入している医療保険・年齢によって自己負担が異なる。またその自己負担も医療制度改革の中で年々増大している。医療費といっても,入院にかかる医療費と外来にかかる医療費とでは,患者の利用できる制度の違いで大きく自己負担が変わってくる。さらに入院にかかる医療費では,入院期間の短縮化で,例えば1泊2日の入院であっても,高度な治療を行えば百万円単位の自己負担が生じる。またDPCの導入により,がんの治療等の高額な医療を外来で行うことになり,外来1回あたりの自己負担も高額になっている。2008年には後期高齢者医療制度が始まり,75歳以上の高齢者の医療費は自己負担の増大かつ複雑な仕組みとなった。  いずれにせよ医療保険の仕組みを理解しておくことが大切である。 Tips3 がんの末期,高齢者や障害者の在宅療養は,往診医と訪問看護介護保険・自立支援法サービスのセットで  入院中の重度の難病患者,老衰の患者,末期がんの患者などで在宅での療養を希望する方々が増えている。2006年から24時間対応の在宅療養支援診療所が診療報酬で評価された。訪問看護介護保険のサービスを利用して,自宅で療養し最期まで看取れるようになった。  在宅における療養の実現のためには,患者家族の思い・病状・ADL・必要な医療処置・家族の介護力・自宅の状況・地域で利用できるサービスの内容で,在宅療養ができるかどうかを評価することが必要になる。適切な在宅療養実施基準のもとに評価を行い,地域の関係機関と連携して患者,家族をサポートする体制を作ることが重要である。 ◆ひと言メッセージ  国の医療費抑制政策で,医療機関は在院日数の短縮を求められている。クリティカルパスや地域連携パスの導入で医療が流れ作業のように行われている。感情のある人間を治療していることを意識し,不安な気持ちを受けとめられる医療を行うことが大事である。 n2825_04.gif