【研修レポート】「今後のわが国の医療政策セミナー」主催:日本医療社会事業協会

今日は、日本医療社会事業協会主催の「今後のわが国の医療政策セミナー」に出席しました。 20090920121748.jpg東京医科歯科大学附属病院正面写真) 会場は、東京医科歯科大学附属病院。以前来た時には左側のビルは無かったように思います。快晴で気持ちがよかったです。 プログラムは、以下の通り。 第1部(13:00-15:00)講演 今後のわが国の医療政策 講師:厚生労働省保険局医療課課長佐藤敏信 氏 ○略歴 1983年山口大学医学部卒。同年厚生省入省。1990年大分県保健環境部健康対策課長。2004年岩手県保健福祉部長兼医務技監。2005年厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長。2006年同省医政局指導課課長。2008年7月から同省保険局医療課長。 第2部(15:00-16:00)報告 社会保険部による活動報告及び質疑応答 説明者:日本医療社会事業協会社会保険部委員 参加者は、100名程度か。テーマと講演者から、定員超過で立ち見が出るかと思っていたので、ちょっと拍子抜け。愛知からの出席者も見当たらず(みえてたらゴメンナサイ)。参加者が少なかった理由は、告知から開催までの期間が短かったからか、シルバーウィーク初日で旅行に出かけてしまっていたからかは不明。2007年03月25日に開催された、「2006年度 医療ソーシャルワーク研修会」(小山秀夫先生の講演)の方が、200名以上の参加があり熱気がムンムンだったのを良く覚えています。 20090920130516.jpg (講演の様子) 以下、報告します。 【印象に残った言葉】(※発表者の発言は、あくまでも私が聞き取ったものですので、正確さに欠けます。ご了承ください。) ○講演 今後のわが国の医療政策 ・医療政策の議論の基礎となるデータは必ずしも十分ではない。各種癌の5年後生存率などをどこの病院でも出している訳ではない。 ・救急部門が赤字だという話は良く聞く。しかし、具体的に何が原因で赤字なのか、どこを改善すれば良いのかを尋ねると具体的なことは分からないという。医療費を投入したいなら具体的にどこに増やしたいのかデータを提出して欲しい。 ・自治体病院には黒字病院もあるけれど、実際には①土地・建物のお金がかからない、②税金を払わなくてもよい、③繰入金という名目で赤字部分には税金が投入される。民間よりも優遇されている。 ・都市部にある私立病院のかつてのビジネスモデルは、若手勤務医の賃金を低く抑えることで人件費を圧縮するモデル。それを補てんするために謝礼金やバイトがまかり通っていた。 ・医師数が不足しているということについては、今後医学部定員増で対応していく。しかし、科ごとの増減をみると外科・産科が減少。リハ科や形成外科は増加。ただ増やすだけで、果たして産科医は拡充するのだろうか。 ・McKinsey & Companyの調査によると、日本では外来/入院患者がアメリカ・欧州に比べて2-3倍多い。医師はOECD諸国(図1)と比較して不足しているためこれから増やしていくが、看護師はOECD諸国(図2)と比較して不足しているとは言えない。しかし、日本看護協会は不足していると主張している。 ・外来/入院が多いのに、医師は少ない。ではどうやってきたかというと、今まではパターナリズム、説明の省略で何とか対応してきた。しかし、近年、マスコミなどの医療事故/訴訟報道によりインフォームドコンセントの必要性が高まり、従来の対応では立ちいかなくなっている。一方で看護師はある程度充足しているのでこれ以上増やすことは難しい。そこで注目されるのがコメディカル。みなさんに医師がやっている業務の一部を肩代わりして頂き負担軽減を図る。 ・科学的にやりたい。DPCにしたことで個々の病院の治療内容の比較が可能となった。みなさんのお仕事は非常にデータ化しにくいかもしれないが、それでもアメリカではQOLや満足度の指標を開発してきた。そういった努力が必要。 ・看護師配置13対1、15対1のいわゆる一般病床の入院患者を今回初めて療養病床で用いている、医療・ADL区分で検証してみた。意外と療養病床と似通っていることが分かった。中小病院はこれから、上流(急性期病床)にいくか下流(療養病床)に行くかを決めて頂かなくてはいけないだろう。 ・(フロアからの転院援助する上でなかなか行き先が無い現状を改善するための検討会を作る予定が無いかという質問に対して)きっと探せば空いている病院はあるはず。ミスマッチが起きている。ITの活用やコーディネーターの設置などあらゆる方法を駆使してミスマッチの解消をしていければと思う。例えば飛行機の空席状況を知らせるシステムみたいに。ただ、それが実現するためにはまだ時間が必要。 ○報告 社会保険部による活動報告及び質疑応答 北里大学病院 早坂氏】 ・今回厚生労働省に提出した当協会の要望書の第1項目は、「100床に対して1人以上の社会福祉士の配置基準の新設を要望する」としました。昨年までは、「50床に対して1人以上」という表記で要望していた。今回、なぜ基準を下げたかというと、日本の一般病床の病床数が約100万床。これに「50床に対して1人以上」の基準を当てはめるとMSWが2万人必要になる。しかし、現在のMSWは12,000人位。計算上足りない。そのため、もう少し現実的な要望に修正したということ。 ・要望では社会福祉士等ではなく社会福祉士とした。色々議論があることは承知はしている。今年の7月に実施されたDPC調査では社会福祉士の人員配置を尋ねる質問票になっていた。日本協会に事前に話があったわけではなく、突然の調査に驚いた。それもあって厚生労働省社会福祉士として尋ねてきたことを踏まえて、こちらも社会福祉士とした。 ・日本協会で実施した調査では、「100床に対して1人以上の社会福祉士」の配置基準を達成しているのは、療養病床の方で割合が高い。一般病床では割合は低い。これは回収率が影響しているのか。 【霞ヶ関南病院 榊原氏】 ・回復期リハビリテーション病棟においては、社会福祉士の専従配置加算の新設を要望した。こういった取り組みで社会福祉士の数が足りないという議論ではなく、雇用創出のチャンスと捉えて欲しい。 【聖路加国際病院 西田氏】 ・09年3月の日本協会が実施した調査は回収率が45%だった。誰かが回答するだろうからウチは出さなくても・・・という心理が働いていないか。もっと主体的に関わってほしい。 【考察】 ・今回の研修でなんとなく理解が出来たのは、「医師の業務量軽減策という流れの中でのコメディカルへの注目」ということ。看護師はこれ以上増加が望めない。またナースプラクティショナーの様に医師との業務分担について議論されているが、決着が付くような状況に無い。 受傷/発病を契機とした本人・家族の心理・社会的問題の解決、退院後の生活設計の支援、地域の社会資源の活用などの状況において医療ソーシャルワーカーカーは、現に医師の業務量軽減に貢献している。ただし、目的はあくまでも本人・家族の生活課題の軽減・解決であり、その副次的効果としての医師の業務量軽減効果という位置づけを間違えてはいけないだろう。 また、ますますデータに基づいた診療報酬への要望が求められておりそれに応えるべく、日本協会も社会保険部が創設され組織だって来ていることを感じることが出来た。 【資料】 図1 人口1,000人あたりの医師数    fig1.jpg 図2 人口1,000人あたりの看護師数 fig2.jpg

・『医療施設動態調査(平成21年6月末概数)』平成21年9月10日 ・日本医療社会事業協会『平成22年度 診療報酬改定に関わる要望書(第1版) 』平成21年9月18日(日医社協第09-167号) 【参考】 ・日本医師会平成22 年度予算 概算要求へ向けての要望書』平成21年6月26日 ・日本看護協会平成22年度診療報酬改定に関する要望書』平成21年6月24日 ・日本理学療法士協会/日本作業療法士協会/日本言語聴覚士協会『リハビリテーション供給体制の見直しについて』平成21年8月20日 ・日本精神保健福祉士協会『2010年度診療報酬改定に関する要望について』平成21年6月5日(JAPSW発第09-66の1、2) ・日本病院団体協議会平成22年度 診療報酬改定に係る要望書(第2報)』平成21年7月31日 ・日本慢性期医療協会『平成22 年度 診療報酬改定に係る要望書』平成21年7月16日