大規模急性期病院に勤める社会福祉士の将来

大規模急性期病院に勤める社会福祉士の将来。 ○大規模の定義:500床以上 ○大規模急性期病院に勤める社会福祉士の主な業務 ・退院調整(病院・施設・在宅) ・制度説明と具体的支援(心理・社会的問題への支援含め) A 平成22年度から始まる予定の「急性期病棟等退院調整加算1」の算定施設基準、部門内に看護師と社会福祉士のセット配置。現在は診療報酬も低いので、あまり組織図を変更するだけの理由にはならないが、今後報酬が高くなった場合、部門統合が加速する可能性は高い。また、既に地域連携室など部門統合している場合は、その強化となる。 →退院調整看護師は退院調整(在宅)に関わり、社会福祉士は退院調整(病院・施設)に関わる。 →社会福祉士が退院調整(在宅)に関わるのは社会的な問題が大きいケースのみに絞られる。 B 退院調整における急性期から回復期・療養型病院・施設への転院・転所のシステム化(パス化)。病院・施設間の連携や看看連携による「スムーズ」な転院。 →従来のアナログ式退院調整によって必然的に業務量が増大し、数を増やしてきた社会福祉士の数が現在ほどは不要になる(と経営者は判断する)。 →社会福祉士が退院調整(病院・施設)に関わるのは社会的な問題が大きいケースのみに絞られる。 A・Bより 社会福祉士が関わるのは社会的問題の大きい患者・家族となる。具体的には以下の3つ。そして、こういった層に対して退院調整(病院・施設・在宅)や外来対応を行うことに業務は収斂していく。 ①経済的に困窮している患者・家族。経済的問題は当該医療機関だけではなく、転院・転所先、又在宅サービス事業所においても未集金発生のリスクとなるため、システムの信頼性維持のためにも特に注意が払われる。経済的援助は、患者・家族のためだけではなく、組織を守るためという意味づけが実質的に追加される。 →最近、未集金対策に関するMSWの論文や、厚生労働省検討会の報告が散見される。 ②虐待、HIV、ホームレス、DV、外国人、多問題家族、ER、NICUなど少数だが極めて社会的問題が大きい患者・家族。 ③パスにおける「バリアンス」と呼ばれるカテゴリー内で社会的問題要因が大きいと判断された患者・家族。 →①~③の患者・家族は一般に比べて数としては多くない。但し、問題解決・軽減においてかなり知識・経験を有していないと対応できないため、新卒採用は部署内に教育体制が整備されていない限り難しい。 上記①~③の患者・家族は、退院調整が現在ほど多くはなかった時代の社会福祉士の援助対象者へと回帰していくことを意味している。 一方で、転院・転所のシステム化により、更に在院日数が短縮した場合、経済的問題以外の心理・社会的問題へ介入する時間的余裕は今以上にない。そのため、受け入れ側の亜急性期・回復期・療養型病院・施設においてその対応が必要となり、社会福祉士の業務が増大。 →社会福祉士の数は増える。 ※但し、転院・転所のシステム化はよほどやり手の人材がいないと実現しない。また、後方医療機関・施設の都合、地域特性も大きく影響するため、あくまでも部分的に留まる可能性が高い。医療機関・施設の場合、a安定した患者の供給母体を確保しているか、b地域に競合する後方医療機関・施設があるか、の2点が転院・転所のシステム化に積極的か否か態度を決める要因となる。積極的な病院は受け入れに際して敷居は低くなり、消極的な病院は敷居が高くなる。 Bの変化まで(部分的であっても)進む場合は、退院調整(病院・施設)が減少するため社会福祉士の数が現在ほどは不要になる(と経営者は判断する)。部門管理者は、一旦大きくなった組織を、自らの手で縮小に取り掛かることは心情的に難しく、どう維持していくかその活路を算段することとなる。 大規模急性期病院に勤める社会福祉士は、今後どの様に活路を見い出すか。現時点で考えられる活路は、以下の3つ。 ①1対1のケースワークだけではなく、転院・転所のシステム化(地域連携)をコミュニティ(メゾ)ソーシャルワークと位置づけ積極的に関わる。 ②病院として介入が必要である心理・社会的問題を抱えた患者・家族宅へのアウトリーチ(在宅患者への支援の強化)。 ③心理・社会的問題を抱えた患者・家族へのより濃厚な支援。 大規模急性期病院に勤める社会福祉士の将来は、私にとって上述の様に映っている。明るい将来が見えるように先進的な実践をしている病院の社会福祉士からお話を聞きたい。そういった意味では私も病院から「外に出る」必要がある。 ○引用文献 ・金井将人ほか「MSWと協働する未集金発生防止-医療ソーシャルワーカーの果たすべき役割-」『医療事務』№337,2009,pp.35-41 ・厚生労働省医療機関の未集金問題に関する検討会報告書』2008,p14 ・都成祥子ほか「医療費未収問題における医療ソーシャルワーカーとしての貢献」『病院』67巻,6号,2008,pp.520-522 ・水野大介「医療費未集金問題に対する医療ソーシャルワーカーの取り組みに関する意識調査」日本福祉大学大学院社会福祉学研究科『社会福祉学研究』第3号,2008,pp.55-62 ①2010.1.31 加筆・修正