「差額ベッド代:よく知って 4人部屋まで対象/平均で1日5740円 」『毎日新聞』2010年2月4日

ここで触れている「厚生労働省が定める基準」のもと文章はこちら。 ※「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について(平成18年3月13日付 保医発第0313003号 (最終改定:平成20年3月28日付 保医発第0328001号))から差額ベッドに関する部分を抜粋したものです。(埼玉県HPより)
差額ベッド代:よく知って 4人部屋まで対象/平均で1日5740円」『毎日新聞』2010年2月4日 病院に入院するとよく耳にする「差額ベッド代」。公的医療保険がきかず全額自己負担となるため、手術代など医療費より高額になる場合もある。「個室でなければ請求されない」と思ったら大間違い。入院の際に注意しなければならないことをまとめた。【有田浩子】  ◇「治療上必要」なら適用外 「同意書」署名前に確認を  町工場がひしめく東京都大田区大森にある医療法人財団城南福祉医療協会「大田病院」。現在改築中のため109床で運営しているがほぼ満床だ。1~8人部屋と1病室のベッド数はさまざまだが、差額ベッド代をとらない病院として知られる。  個室に入るかどうかは、医師が症状に応じて判断する。「お金を出せる人と出せない人で、医療に差があってはならない」と井口文子事務長。改築後は189床となるが、引き続き差額ベッド代はとらない。大田病院など全日本民主医療機関連合会に加盟する全国154病院も同様だ。    ◇  ◇  差額ベッド代は、医療保険に含まれる入院基本料を超えて特別な療養環境を提供した場合に患者に請求できる。厚生労働省が定める基準は(1)1室の病床数は4床以下(2)病室の面積は1人当たり6・4平方メートル以上(3)プライバシーが確保できる設備(カーテンなど)(4)個人用の収納設備・照明・小机など。基準が作られた74年は1室のベッド数は2床までだったが、いまは4人部屋もOKだ。  東京医科歯科大大学院の川渕孝一教授は「かつては、なかなか入院できなかったため、差額ベッド代は入院する権利のようにみられてきたが、最近は介護施設でも居住費(ホテルコスト)をとるようになっており、そうした意味合いが強くなっているのではないか」と話す。  1日あたりの差額ベッド代は50~21万円で平均は5740円(08年7月)。国立病院は全病床の2割以下、公立病院は3割以下、それ以外は5割以下と定められている。関西より、東京、神奈川など首都圏のほうが高い傾向にある。    ◇  ◇  差額ベッド代は原則「個室に入りたい」と患者が希望した場合に払うものだ。ただし希望してもとられないことがある半面、希望しなくてもとられる可能性があるから注意が必要だ。  「同意書がない場合は本人が希望しても請求されることはありません。また『治療上の必要』があると認められる場合は請求されません」。患者の主体的な医療参加を目指すNPO法人ささえあい医療人権センター・コムル(COML、大阪市、電話06・6314・1652)の山口育子事務局長はそう話す。コムルには「差額ベッド代を請求されたが妥当なのか」などグレーゾーンについての相談も少なくない。差額ベッドの電話相談だけで、年150~200件寄せられるという。  「治療上の必要」があるため、差額ベッド代を請求できないのは(1)手術後(2)救急(3)抗がん剤などを使用して免疫力が低下し、感染症を引き起こす可能性がある(4)終末期で著しい身体および精神的苦痛がある--などの場合とされる。ただし手術後や救急で入院した場合でも全員が「治療上の必要」に当たるわけではない。「個室に入ってもらう必要がある」と病院側から言われた場合は、理由を尋ね治療上の必要かどうか確認したほうがいい。  差額ベッド代をとる病院は、同意書にサインをもらう前、患者に料金の説明をきちんとしなければならないことになっている。とはいえ、患者や家族にしてみれば、入院前はせわしなく、聞き漏らしたり、書類に十分目を通せないこともある。「空きベッドがない」と病院から言われ、夜間などに急な決断を迫られた場合は「私の一存では決められない」と告げ、答えを保留することも大切だ。  山口事務局長は「認知症や歯ぎしり、いびきなど病院側の都合で患者に差額ベッドに移ることを求めた場合でも、同意書があれば請求できる。患者の選択によるかどうかは、同意書があるかどうか。同意の中身を確認し納得するまで説明を求めたほうがいい」とアドバイスする。 ==============  ■差額ベッド代のグレーゾーン事例  (1)院内感染を引き起こすような感染症患者  →強制的に移動させられた場合はとられないが、同意書を提出すれば支払う必要が生じる  (2)認知症、いびきなどで他の患者に迷惑を及ぼすと考えられる患者  →迷惑防止の観点だけで患者を差額ベッドに移すのは「治療上の必要」にあたらず、差額ベッド代が生じる  (3)空きベッドがないなど病院の都合で患者に入室を勧めた場合  →緊急を要し患者の選択によらず差額ベッドに入院させられた場合はとられないが、同意書を提出すれば支払う必要が生じる  (民主党桜井充参院議員が行った質問主意書への政府の答弁書をもとに作成)