2012年度診療報酬改定の基本方針の検討項目に退院支援が盛り込まれる

厚生労働省は9月16日、第45回社会保障審議会医療保険部会を開催した。 この部会では、高額療養費制度についても議論されたため、メディアでもその方面から取り上げられている。Online Medでも同日、以下の様に報じている。
200床以上病院のみで導入する案も、額は7000円以上(医療政策:制度改革)  厚生労働省は9月16日、社会保障審議会医療保険部会に、高額療養費制度の見直しと受診時一部負担についての議論を求めた。高額療養費制度の見直しでは年収300万円未満世帯の負担の軽減を図る考えを示し、受診時一部負担では例示としての「100円」を導入した場合、その後には再度保険財政が厳しくなっても100円の引き上げを行うことはしない方針であることを明確にした。  受診時一部負担については、財政中立の観点で行うものとされたことから、保険者側からは受け入れる方向での議論が行われた。一方、日本医師会常任理事の鈴木氏は反対を表明した。  また、学者側では、経済学の岩本氏が、こうした負担は保険料で対応すべきであり、受診時100円程度であれば保険料としての負担も大きくはないと主張した。これに対し、保険者側は、現状が赤字構造であることなどから保険料引き上げは困難と反論した。  一方、受診時一部負担については、「病院・診療所の役割分担を踏まえた外来受診の適正化も検討」とされていることから、厚労省は、100円負担とは別に、200床以上の病院の外来について紹介状がない場合に徴収することができることとなっている選定療養の制度を見直し、200床以上の病院に紹介状なしで受診する場合の一部負担を別途設定する方式を提案した。この場合、1回あたり7000円から1万円になるとしている。  200床未満の病院と診療所については、受診時一部負担を導入しない方式だが、この方式の場合、200床以上の病院に対する患者の受診が大きく減少ることが見込まれる。厚労省は、そうなると、すべての医療機関を対象に100円の負担を導入する場合に比べて、必要な財源が確保できなくなる恐れもあるとした。  日医の鈴木氏は、この方式にも反対を表明した。  この日の議論では、一律100円か、200床以上の大病院を対象とするかという議論にはならなかった。  今後、さらに議論を続ける。 資料1:社会保障・税一体改革成案における高額療養費の見直し等のセーフティーネット機能の強化、給付の重点化関係(厚労省) 資料1:9.16社会保障審議会医療保険部会配布全資料(厚労省) 出典:Online Med
併せて、本部会では2012年度の診療報酬改定の基本方針を検討する材料として、厚生労働省側から参考資料が配布されている。(1)(2) 検討項目として全18項目が挙げられている中で、「14. 退院調整について」が掲載されている。特徴的なのは、現在の連携のイメージとして「退院調整」という言葉が使われており、将来の連携のイメージとして「退院支援」という言葉が使用されている点である。言葉の意味については詳細に触れられていないが、「入院後症状の安定が見込まれた時期からの退院調整」ではなく「医療機関において入院早期から退院後の生活を見越した退院支援を行う」と述べられている。 なお、退院調整という言葉を用いつつ、入院早期(場合によっては外来の段階)からの介入が必要であると指摘している著者もいるため、これはあくまで定義の問題かもしれない。 ちなみに、退院支援という言葉を書籍のタイトル上で最初に用いたのは、『退院支援―東大病院医療社会福祉部の実践から』だが、退院支援と退院調整とを意識的に峻別して書籍のタイトルに用いたのは、『チームで行う退院支援―入院時から在宅までの医療・ケア連携ガイド』が初めてであった様に思う。後者の書籍が出版されて以降、従来の様に退院調整とのみタイトル表記する書籍は無くなり、退院調整と退院支援を併記したり、退院支援とのみ表記する書籍が出版される様になってきている。 退院を患者・家族の生活課題の1つと位置付けて退院援助を行ってきた医療ソーシャルワーカーにとっても、今後注目すべき議論であろう。