金城学院大学医療ソーシャルワーク研究会に参加してきました

昨日6月15日、金城学院大学医療ソーシャルワーク研究会に参加してきました。 講師は、名古屋家族相談室の室長でソーシャルワーカーの市川季夫(すえお)氏。 名古屋市に就職後、主に生活保護ケースワーカーとして30年勤務し、定年退職まで2年を残して平成2005年4月に独立開業された。市川氏と臨床心理士の女性と2人体制で取り組まれている。 事業は、個別面接・夫婦面接・電話相談の3つ。 名古屋家族相談室 http://www.wa.commufa.jp/~sueo/index.html なお、電話相談については、名古屋市から委託事業として行っている。 名古屋市男性相談(電話相談) http://www.city.nagoya.jp/shisei/category/49-2-15-0-0-0-0-0-0-0.html DVを起こしてしまう男性とその妻を対象に3ヶ月のブリーフセラピーを提供しているとのこと。既に妻が出て行ってしまった場合には、夫婦面接が困難なため、場合によっては、DV加害者男性をDV防止教育センターに紹介することもあるそうです。 DV防止教育センター http://dvpec.exblog.jp/ コメント:DV加害者男性を対象としたプログラムを提供。代表:岩瀬祥代 精神保健福祉士。 同相談室が最も力を入れているのがDV加害者男性の支援。DV被害者の女性が相談する窓口は整備されてきていたけれど、男性の相談窓口は同相談室が開設された当初なかったそうです。 【印象に残った言葉】 ・生活保護ケースワーカー)は右手にペンを持ち、左手にお金を持っている。 ・ソーシャルワーカーは、右手にカウンセリング、左手に社会資源を持って仕事をする。 ・外在化(マイケル・ホワイト) ・精神疾患から派生する暴力を除いて、生きていく中で学習した暴力については、学習で無くしていく。 ・DV加害者男性へは禁固刑など懲罰だけしか与えられず、本質的な解決になっていない。懲罰と教育がセットで提供される必要がある。 ・転院援助行う際に、ただ退院先を探して終わりではない。転院を余儀なくされている患者・家族の気持ちをしっかりと受け止める。ソーシャルワーカーが行う退院援助は他とどう違うのか。 【感想】 60歳を過ぎてなお、誠実な方だと思いました。カウンセリングに関する知識・用語を多用するのではなく、あくまで自分の言葉で話される姿勢には大いに共感を覚えました。なかなかこの立ち位置で居続けることは容易ではないと思います。 普段の業務ではDV加害者男性と接することがないため、1つの社会資源として知ることができたのは良かったです。児童・高齢者虐待の分野でも、虐待を加えた側の支援も必要であると指摘されていますが、その発想と共通するものを感じました。 エゴグラム箱庭療法などの心理検査臨床心理士に実施してもらうなど役割分担をしつつではありますが、ソーシャルワーカーとしてもカウンセリングに取り組まれている実践家にお会いできたことは貴重な経験でした。 日常業務で最近思うこととして、MSWが社会資源の理解と活用にとても長けているという自負はあります。しかし、クライエントや家族にカウンセリングも併せて行うことが有効と思われる事例も散見されます。 そういった問題意識からカウンセリングを行うソーシャルワーカーは実際にどういう取り組みをしているのか、本研究会に参加し具体的に学ぶことができて良かったです。 但し、DVを含め家族問題が発生する基盤には貧困問題が存在するのではないかと思います。カウンセリングを受けることで効果は認められるけれども、継続して受けるだけの経済的余裕がないクライエントの場合、ジレンマが生じるのではないかと思いました。市川氏もその点に大変苦慮されていることを知りました。 学びの場を与えて頂いた、金城学院大学医療ソーシャルワーク研究会のみなさん、ありがとうございました。 【著書】 市川季夫「DVを主訴とした夫婦の面接:“夫婦のためのカップルコミュニケーションワーク”の導入により改善した事例」『家族療法研究』第28巻第3号,2011,pp.293-302 http://kongoshuppan.co.jp/dm/dm.php?cd=7071