「申請手続きは『従来通りに』 生活保護法改正で厚労省」『朝日新聞』2013年5月20日

どちらも同じ記者による記事。各自治体の親族扶養の取扱いについて、今後の動向に注目が必要です。なお、会合の配布資料は現時点(20:38)では厚生労働省HPに公表されていません。
「申請手続きは『従来通りに』 生活保護法改正で厚労省」『朝日新聞』2013年5月20日 【有近隆史】政府が国会に提出した生活保護法改正案をめぐり、貧困問題の専門家らが「申請のハードルが上がる」と批判している問題で、厚生労働省は20日、全国の自治体の実務担当者らを集めた会合で、「申請手続きの今の運用は変更しない」と説明した。  生活保護の申請書の記入項目はこれまで省令で定めていた。法改正案では、本人が資産や収入などを記した書類を提出することが明記された。厚労省は理由を「自治体の調査に関する規定との整合性をはかるため」と説明。窓口の運用については「申請事項や様式も含め変えない。改正で新たな資料の提出を求めることはない」と強調した。  一部のケースで認めてきた口頭申請についても「従来通りに認める」とし、申請権の侵害を疑われる行為をとらないよう求めた。  一方、保護を始める時に本人の扶養義務者に自治体が通知を出すことを定めた新規定については、「明らかに扶養可能と思われるにもかかわらず扶養しないなど、極めて限定的な場合に限る」と説明した。  これに対し、貧困問題に取り組む生活保護問題対策全国会議は「自治体の窓口では、申請を不当に受け付けない『水際作戦』が今もあり、法改正が口実に使われる」と懸念する。こうした懸念が現実になるかは現場の対応次第で、各自治体と厚労省の姿勢が問われそうだ。
生活保護改正案など閣議決定 自立支援と罰則強化」『朝日新聞』2013年05月17日  【有近隆史】安倍内閣は17日、深刻化する貧困問題への対応を盛り込んだ生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案を閣議決定した。生活に困る人の自立支援策と生活保護の引き締め策の二本立て。成立すれば、1950年に生活保護制度が始まって以来の大幅改正となる。  生活保護の受給者は過去最多を更新し続け、今年1月時点で215万人。生活保護費も国・地方の今年度当初予算で3・8兆円にのぼる。財政負担が重いため、政府は「物価下落」などを理由に8月から15年4月にかけて、支給額を大きく減らす方針。両法案はこれに続く対策だ。  生活保護を受ける人への支援策では「就労自立給付金」を新設。受給中に働いて収入を得た場合、今の制度では減らされる生活保護費の一部を積み立てたとみなし、将来保護から抜けた時に現金を渡す仕組みだ。金額は、安定した仕事に就いた時に支払わなければならない税金や社会保険料に近い水準を想定する。  生活に困る人が保護に至らないよう、その手前の支援も強める。幅広く相談を受け、状況に応じた支援計画をたてる事業を自治体に義務づける。「引きこもり」などですぐに仕事に就くのが難しい人に清掃などの作業機会を提供する企業やNPOへの経費助成や、本人の生活習慣や家計意識を向上させる支援も自治体に進めてもらう。  一方、生活保護の不正受給への世論が厳しくなっているため、さまざまな引き締め策も盛り込んだ。不正受給の罰金を「100万円以下」に引き上げ、不正の額に4割まで上乗せして返還を求められるようにする。自治体が調べられる範囲も本人の就労状況に広げる。  このほか、保護を申請した人の扶養義務者が扶養できるとみられるのに応じない場合、収入や資産について自治体が説明を求められるようにする。昨年に芸能人の母親が保護を受けていることが話題になった出来事などを受けた対応だが、専門家からは「扶養義務者に気兼ねし、保護の申請をためらう人が出かねない」といった懸念が出ている。  また、申請手続きでは、本人が収入などを記した書類を提出することを条文に明記した。生活保護問題対策全国会議は「窓口での申請拒否が広がる」と批判するが、厚生労働省は「自治体に通知を出して運用を変えないよう徹底する」と説明している。  施行日は、生活保護法改正案が来年4月1日(一部の項目は除く)、生活困窮者自立支援法案は15年4月1日。政府・与党は議員立法で提出を予定している子どもの貧困対策推進法案とあわせて審議し、今国会で成立させたい考えだ。 ■生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案のポイント 【自立支援策】 ・自治体が自立への相談を受け、本人と支援プランを作る※ ・仕事を失った生活困窮者に家賃相当の給付金を支給※ ・生活困窮家庭の子どもに元教員らが勉強を教えるのを支援※ ・家計管理の指導や仕事に就くための準備を支援※ ・働く生活保護受給者が保護から抜ける際に一定額を給付(就労自立給付金) 【引き締め策】 ・自治体が受給者の就労状況も調査可能に ・不正受給の罰金を「100万円以下」に引き上げ。不正受給の返還金に最大4割上乗せ ・自治体が必要と認めた場合は、扶養義務者に報告を求める ・受給者を診察できる医療機関の指定を更新制に。不正があった場合の取り消し要件も明確化 (※は生活困窮者自立支援法案に盛り込まれたもの。残りは生活保護法改正案)