「大阪市:狭小住居 生活保護認めず『理念反する』」『毎日新聞』2013年10月17日

ホームレス自立支援法に基づく施設や生活保護法に基づく施設にも関係する話かと思います。
大阪市:狭小住居 生活保護認めず『理念反する』」『毎日新聞』2013年10月17日  大阪市西成区で今年6月、男性3人が生活保護費受給を申請する際、簡易宿泊所を改装したカプセルホテルのような部屋(1.5畳)を居住用「アパート」と申告し、市が「狭すぎて危険がある」として支給を認めない異例の決定をしていたことが分かった。専門家は「劣悪な住環境を防ぐ弾力的な対応」と評価し、厚生労働省も「全国でも珍しい対応」としている。「アパート」経営者は市の指摘で部屋を改装したが、生活保護法には受給者の住居に関する規定はなく、専門家は改善を求めている。  市福祉局などによると、アパートは西成・あいりん地区にあり、簡易宿泊所だった木造3階建てを改装した。各階にカプセルホテルのような部屋(高さ約1.7メートル)が上下2列に棚状に約10室ずつ並ぶ「脱法ハウス」のような構造だった。  各部屋に窓があり、風呂、トイレは共同。上層の部屋は、はしごで出入りする構造だった。家賃は同市の単身世帯への住宅扶助の上限額(4万2000円)に近い4万円だったという。民生委員から連絡を受けた市が6月に現地調査。出向いた職員は「カイコ棚のようで非常に狭く、靴を脱ぐ場所もない。出口から急にはしごになっており、危ないと感じた」と話す。  生活保護法には受給者の住居の広さなどに関する規定はないが、市は「健康で文化的な最低限度の生活」を目指す同法の精神に反するとして、3人に生活保護を支給できないと通知し、アパート経営者には改善を促した。  これを受けて経営者は従来の上下2室ずつ計4室を1室にまとめる改装を行った。現在、3人のうち1人がここに、2人は別の場所に住んで、いずれも生活保護費を受給できるようになったという。  報道で「脱法ハウス」が問題化した後の今年9月、国土交通省はカイコ棚状の狭小住居などを規制する基準を出した。市は「事後的に基準に照らすと、このアパートは脱法ハウスに該当した可能性がある。今後、同種の建物が貧困ビジネスに悪用されないよう注意したい」としている。 【茶谷亮】  ◇大阪市の対応は評価できる  生活保護制度に詳しい吉永純・花園大教授(公的扶助論)の話 劣悪な環境に生活保護受給者を住まわせるのは生活保護法の精神に反しており、弾力的に運用した大阪市の対応は評価できる。保護制度には支給額に関する規定しかないが、国は受給者の住居の面積や設備についても基準を設けるべきだ。