「高齢者施設、お手盛り介護 『歌ばかり歌わされて…』」『朝日新聞』2014年2月18日

高齢者が入る施設で、必要のない介護サービスまで提供することを、「お手盛り介護」と呼ぶそうです。入居施設は低価格に設定し、入居者に自施設やグループ事業所からの医療・介護サービスをフルに利用してもらい採算を合わせる。初めてそういった施設の存在を知った時は、「こんなビジネスモデルもあるんだな」と思いましたが、それ以前から囲い込みの問題は指摘されていたと思います。

平成18年の介護報酬改訂で特定事業所集中減算ができましたが、規定では「正当な理由なく、当該事業所において前6月間に作成されたケアプランに位置付けられた居宅サービスのうち、訪問介護サービス等について、特定の事業所の割合が90%以上である場合に減算」とされたため事態は改善されません。こういったビジネスモデルの施設ができて以降、本来利用者とケアマネの二者契約であるはずですが、施設側が法人内だけでなく法人外のケアマネまでもコントロールする力を持ち始めたように思います。

ただし、抗がん剤治療や高額な内服・注射を行っていて老健に入所できない利用者・家族にとっては、適切に外部サービス・ケアマネを提供している施設であれば、満足度が高いことも事実であり、このビジネスモデル=悪いとは必ずしも言い切れない側面もあります。

【参考】『特定事業所集中減算関係法令等について』山口県
http://www.kaigo.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/file/1303/000879_f3.pdf


「高齢者施設、お手盛り介護 『歌ばかり歌わされて…』」『朝日新聞』2014年2月18日
http://www.asahi.com/articles/ASG2J74ZXG2JULFA00J.html

高齢者が入る施設で、必要のない介護サービスまで提供する「お手盛り介護」が相次いでいる。介護サービスの利用計画(ケアプラン)をつくるケアマネジャーが、施設などの意向に沿って介護報酬を増やす例があるからだ。高齢者に合った介護が提供されず、介護保険の無駄づかいにつながるおそれもある。
(報われぬ国)ケアマネ、施設の縛り 意に沿わねばクビ
 「歌ばかり歌わされて。嫌で嫌で」。東京都中野区の有料老人ホームにいた男性(92)は昨夏まで、夕方になると疲れ果てていた。童謡を歌ったり風船を突きあうゲームをしたりするデイサービスが、昼食や入浴を挟んで朝9時から午後4時半まで続いたからだ。
 昨年7月の利用明細には、ホームが運営するデイサービスが1日7~9時間、週6日びっしり。月に約3万3千円が本人に請求された。介護保険は本人が1割、保険が9割を負担する。「要介護4」の男性が使える限度額約33万円いっぱいがつき、ホーム側に介護報酬が支払われた。
 まもなく別のホームに移ると、デイサービスはなく、週2回の入浴と1回の外出介助ぐらい。請求額は10分の1以下の月約2600円に減ったうえ体調も良くなり、介護度は最も軽い要介護1に改善した。「なぜ施設によってこんなに違うのか」と驚いた。
 これは、前のホームのケアマネが作ったケアプランがお手盛りだったからだ。東京都も今年1月に前のホームなどに調査に入り、「ホーム側のデイサービスばかりがついている」と改善を促した。
 プランを作ったケアマネは家族にも会わず、男性の要望も聞いていなかった。朝日新聞の取材に対し、「前任者のプランをそのまま使った。ホームからもなるべくつけてと言われ、協力したかった」と話す。
 さらに悪質な例も相次ぐ。朝日新聞が47都道府県を調べたところ、この6年で介護報酬を不正に請求したとして50人のケアマネが資格を取り消されていた。架空のサービスを偽装したり、ケアプランを水増ししたりする例が多い。50人のうち「自ら主導した」が31人、「(施設などに)強要された」が11人いた。(松田史朗)
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 〈ケアマネジャー(介護支援専門員)〉 「要支援1~2」「要介護1~5」の認定を受けた高齢者が介護保険を使ったサービスを受ける際、高齢者と契約し、本人や家族の要望を聞きながら毎月の介護サービス利用計画(ケアプラン)をつくる。2000年に介護保険制度ができた時につくられたが、国家資格ではなく都道府県が認定する。全国で約14万人が働く。国はケアマネが所属する居宅介護支援事業所の運営基準を「利用者の立場で、特定の事業者に不当に偏らず公平中立」と定めている。