稲沢公一「第12章 構成主義・ナラティブ」久保紘章・副田あけみ編『ソーシャルワークの実践モデル』川島書店,2005,,pp.227-250

ソーシャルワークの各実践モデルについて解説している本はたくさんあるけれど、自分に一番フィットするのは、久保紘章・副田あけみ編『ソーシャルワークの実践モデル』川島書店,2005だ。何よりも読みやすい。


最近読み返してみて印象に残ったのは、上述書に収載されている稲沢公一「第12章 構成主義・ナラティブ」,,pp.227-250の中の次の文章。

「私個人は、構成主義やその影響下にある援助論から多くの有益な示唆が得られるものと思っているが、だからといって、構成主義的援助論だけで、実際のソーシャルワークが成り立つなどとはとうてい考えていない。構成主義もまた、一定の筋を持った物語の一つにすぎない。一つの物語に固執すれば、それだけ多くの他の物語が抑圧されてしまうとは、当の構成主義が教えるところであった。構成主義がもたらす最良の帰結とは、一つの理論(物語)に解答を求めてしまう『思考の怠惰』への容赦ない批判だったのである。それは、相対化をこそ生き抜く強さを援助者に求めている。大切なのは、どういう物語(理論)がクライエントにとって有益なのかということを、安易に『正解』を求めることなく、さまざまな角度から考え抜く姿勢であって、理論的な対話空間を可能な限り広く開示しようと努力し続けることなのではないだろうか。」p245

構成主義的援助論の「心の中の置き場所」を、分かりやすく教えて頂いた気がした。

『雑 筆 蔵』(稲沢公一)
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