中央社会保険医療協議会 総会(第322回) 議事次第(平成28年1月13日)

平成28年1月13日、中央社会保険医療協議会 総会(第322回)が開催された。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000108957.html

配布資料『これまでの議論の整理(現時点の骨子)』の「Ⅰ 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点」「Ⅰ-3 地域包括ケアシステム推進のための取組の強化について」「【Ⅰ-3-3 患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるための取組の推進について】」に、以下の記載が見受けられる。

(1) 退院支援の更なる推進を図るため、退院支援に積極的に取り組んでいる医療機関医療機関間の連携に対する評価を推進する。
病棟への退院支援職員の配置を行う等、積極的な退院支援を実施している医療機関に対する評価を充実する。
② 新生児特定集中治療室からの退院や地域連携診療計画を活用した医療機関間の連携について、簡素化及び更なる推進を図る観点から評価を見直す。
③ 退院支援に係る評価のうち、算定回数が少ない一部の項目を廃止する。
(2) 医療ニーズが高い患者が安心・安全に在宅療養に移行し、在宅療養を継続できるようにするため、退院直後の一定期間、退院支援及び訪問看護ステーションとの連携のために入院医療機関から行う訪問指導について評価する。

退院調整加算は施設基準として退院調整に関する部門に社会福祉士と看護師が配置されていることを前提とし、個別のアウトプットへの評価をしていたが、改めてストラクチャーへの評価が病棟単位でなされることになる。どこの病院でも一定数以上のMSWがいる場合は、病棟担当制を敷いているところが多いであろう。診療報酬の単価が未定のためどれだけの収益になるかは分からないが、今回の報酬改定によりMSWの人件費の裏付けがなされることになる。

但し、下図の通り病院経営層とMSW部門の関係性および退院調整へのMSW部門のスタンスの2軸によって、対応は異なるかもしれない。

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1.病院経営層とMSW部門の関係性において後者の裁量権が大きく、退院調整へMSW部門が積極的な場合

MSW部門で病院全体の退院調整を全面的に引き受けていく戦術を選択するならば、今回の診療報酬改訂は追い風であろう。海外の事例で1つの病院に30人以上のMSWが配置されていることが紹介されていたがそんなイメージに近づくことになる。これだけの大所帯になれば病院全体の退院調整のデータにも影響を与えうる。但し、あくまで病棟の医師・看護師との協働の結果でもあり、お互いの業務を尊重しつつ、病院経営層とMSW部門はWIN・WINの関係で展開していくことになる。

2.病院経営層とMSW部門の関係性において後者の裁量権が小さく、退院調整へMSW部門が積極的な場合

今回の診療報酬改定では、それ程収益が見込めず中途半端な人員増位では病院全体の退院調整のデータへの影響力も弱まるが責任だけは重くなるため、平均在院日数削減などの管理目標項目達成のために自分たちが意図しない管理方法を求められる可能性も高い。
例えば、病棟から退院調整が必要な患者情報がFAXで退院調整部門に届き、退院調整担当者が患者・家族の誰にも会わずして転院調整を行う。そんなことが現実に起きている。退院調整は機能性・効率性を考えるとここまで行き着くことになる。この状況に危機感を感じる人達は、上述の担当者・部署のことをFAXワーカー、FAX連携室と表現している。

自分たちも積極的に退院調整に関っていきたいという思いと、病院側が求める退院調整とのギャップに思い悩むことになる。

3.病院経営層とMSW部門の関係性において後者の裁量権が大きく、退院調整へMSW部門が消極的な場合

退院調整は病棟に委ね、バリアンスとしての心理・社会的問題を抱える患者・家族の退院調整にMSWは専念するという考え方もあろう。近年の単身化・高齢化・地域力の低下・問題の複雑化により今後、ケース数は増加することが見込まれるため、決して仕事が減る訳ではない。その意味においてサラッと、今回の報酬を人件費の後ろ盾に有効活用するMSW部門責任者もいるであろう。

4.病院経営層とMSW部門の関係性において後者の裁量権が小さく、退院調整へMSW部門が消極的な場合

病院経営層からみてMSW部門が病院の方針から逸脱し、自己満足的な集団とみなされる危険性がある。部署は縮小化され、職場に残るものは制度活用等の限定的な業務に取り組むか、2で指摘したFAXワーカー、FAX連携室の側面が強い業務を強いられる可能性がある。また、多くのMSWは職場を去ることになろう。

上記4側面はあくまでも概念的なものであり、明確に区分されている訳ではない。同じ事実であっても、病院経営層・MSW部門共に受け止め方は様々である。病院経営層とMSW部門の関係性については、日常的なコミュニケーションとプレゼンテーション。病院の方針とMSW部門の方針の整合性に関する合意形成の程度が影響を与える。没交渉で自然発生的に良好な関係が築けるということはない。日々の積み重ねが重要となる。

平成28年度報酬における退院調整への評価に、各医療機関のMSW部門がどう相対するか。難しい判断に迫られることになる。