松田晋哉「地域医療構想・医療費適正化計画と医療保険者の役割」『週刊社会保障』№2873,2016,pp.21-27

松田晋哉「地域医療構想・医療費適正化計画と医療保険者の役割」『週刊社会保障』№2873,2016,pp.21-27

「(2025年の医療機能別必要病床数の推計結果によると)療養病床数がかなり少なくなると推計されるが、このこと他方で現在は療養病床で入院治療を受けている高齢者が大量に病院外でケアされなければならない、ということを意味している。『慢性期=療養病床+介護施設+在宅』であり、療養病床の必要量は後二者の状況に依存することを保健者は理解しておく必要がある。例えば、介護保険者である自治体の場合、療養病床から出てくる大量の高齢者を介護で受け取るということは、それだけの保険料負担に地域が耐えられるのか、また増大する介護需要に対応するための人材確保が可能であるのかを考えなければならない。」(pp.22-23)

「地域医療の現状と将来を検討するためのデータが、(中略)都道府県関係者と都道府県医師会に提供されている。具体的にはDPC病院の実績、救急搬送状況、National Database(NDB)をもとに算出された医療サービスの提供状況に関する資料(自己完結率)とSCR(年齢調整標準化レセプト出現比)が都道府県に配布されている。」(p23)

「今後、多くの地域で肺炎、骨折、脳血管障害が主たる入院患者となるが、その多くはすでに要支援・要介護状態になっている高齢者から発生する。(中略)推計結果で、なぜ今後回復期病床の需要が増えるのかがこれから理解できるであろう。地域包括ケア病床が回復期病床の典型であると筆者は考えているが、この機能を持った施設が入院医療と在宅医療、そして医療と介護とのつなぎ役になるのだと考えている。」(pp.23-24)

コメント:現在療養病床の見直し議論が同時に行われており、医療内包型、医療外付型といった選択肢が示されている。これは、外部産業から新規参入の多い住宅型有料・サ高住・無届け施設での看取りに加えて、相対的に医療依存度の高い高齢者を看取ってもらうには、これまでに実績のある医療法人でやってもらいたいという厚生労働省及び関係者の意図が見える。療養病床を減らせば介護保険料の増大と人材確保が課題もなると自治体へ「釘をさす」点が参考になった。今後、国保後期高齢者医療を管理する都道府県と介護保険を管理する市町村との間でコスト負担のせめぎあいが予想され、自治体として一括りにできない事情を押さえておく必要があると思った。

また、2025年の医療機能別必要病床数の推計結果で回復期の大幅な増床が違和感を覚えていた。脳血管疾患や骨折で回復期リハビリテーション病棟へ転院するイメージは湧くが、患者数が最大となる肺炎の場合、廃用での受入は相手側も積極的ではなくイメージが湧きにくかった。それが違和感の理由である。回復期はあくまでも病期であって、イコール回復期リハビリテーション病棟+地域包括ケア病棟・病床であると知り、腑に落ちた。