MENTAT

2016年6月、大塚製薬日本IBM合弁会社大塚デジタルヘルスを設立。「大塚製薬が持つ中枢神経領域の専門知識・経験とIBMのWATSONテクノロジーを活用して共同開発したデータ分析ソリューション『MENTAT(メンタット)』によって、精神化医療の課題解決に貢献することを目指しています。」とのこと。

CMがこちら。


その開発にあたり、データ提供したのが愛知県にある桶狭間病院

MENTATがやろうとしていることは、以下の通り。

数値化しにくい症状や病歴などが含まれる膨大な記述(テキストデータ)を自動的に統合・分析してデータベース化することで、患者さんの医療データを有効に活用し、より良い医療を提供できるよう支援していきたいと考えています。
例えば、これまでと同じ電子カルテ入力で、以下のような新しいデータ活用の道が開けます。

電子カルテ内の患者さんの情報をサマリー化】
    患者さんの情報を関連スタッフで共有可能
    過去の治療状況を整理し見やすくビジュアル化
    提出書類の必要項目を自動で抽出
電子カルテ内の患者さんを一覧表で表示】
    必要項目で検索が可能
【患者さんの入院長期化を過去の情報からビジュアル表示】
    医療上の観点から、看護の観点から、PSWの観点から表示
【院内の入院患者状況把握】
    退院移行状況確認、職員毎の難易度の高い患者さんの受け持ち状況、病床管理


症例検索という機能もあり、

テキストマイニングで取得した患者軸、入院軸、処方軸の約60項目の情報から症例を検索

可能とのこと。何と、PSW向けの画面もある様子。


他にも、ダッシュボードという機能は、以下の通り。

ベストプラクティス症例:高難易度でもアウトカムの良い患者をベストプラクティスとし、その割合と担当職員を表示

地域移行状況:低、中難易度の患者が早期退院し、地域生活に移行できた割合と担当職員を表示

高難易度患者の担当状況:職員ごとに高難易度患者の担当数を表示し、職員への負荷が偏っていないかを確認

退院調整:自宅退院患者の再入院の傾向と、施設退院患者の経済状況を表示。退院調整の状況を把握


何をもって、高難易度患者とし、何をもって地域生活に移行できたとするか、これはあくまでも人間側が定義づけることになる。そのため、これら分析結果をどのようなスタンスで活用するかが重要であろう。活用の仕方を間違えれば、アニメPSYCHO-PASSの世界となってしまう。

これまでにも、テキストマイニングによる分析支援ソフトは発売されているが、WATSONを用いた医療に特化したソフトというのが新味だ。

橘高先生が提唱した「援助内容キーワードデータベース」(p190)は、当時の情報処理技術の制約によりカテゴリーを意識した入力の煩雑さや、商業ベースの汎用性の高いソフトが身近でなかったことで広まらなかった。しかし、20年の時を経てようやく現実のものとなりそうである。

■引用文献
橘高通泰『医療ソーシャルワーカーの業務と実践』ミネルヴァ書房,1997