ソーシャルワーカーのためのナラティヴ・セラピー入門

昨日は、金城学院大学医療ソーシャルワーク研究会主催の「ソーシャルワーカーのためのナラティヴ・セラピー入門」に参加してきました。年内最後の研修参加。講師は、愛知県がんセンター中央病院精神腫瘍科部の小森康永氏。ナラティヴ・セラピーの翻訳で有名です。

■印象に残った言葉

以下、10の言葉。
1.ナラティブ・セラピーは患者の話をしっかり聴こうというムーヴメントではない
2.ナラティヴとエビデンスは医療の両輪などではない
3.ナラティヴ・セラピーは社会構成主義をその認識論に据えなければならない
4.ナラティヴ・セラピーが重視するコラボレーションは、「無知の姿勢」よりも「共同研究」においてイメージしやすい
5.ナラティヴ・セラピーにおいて外在化・擬人化はそれほど行われないものの、絶えずその哲学が念頭になければならない
6.ナラティヴ・セラピーは「物語」の筋よりも「語り」の場に着目するのが肝だ
7.ナラティヴ・セラピーに関して「ストーリーを書き換える」と言う時は、「ストーリー」が「認知」と互換可能になっていないか省察すべきである
8.ナラティヴ・セラピーを名詞ではなく、副詞として考えてみるのもいい
9.ナラティヴ・セラピーが重視する透明性・多声性・平等性を体験するには、「あたかも症例検討会」が最適である
10.ナラティヴ・セラピーを学ぶには入門書ではなくホワイトの著作を読まなければならないのは、哲学と同じことである

・ナラティブ・セラピーって何ですか?ってよく聞かれますが、小説を読んでどうでしたかと聞かれた時、どう説明していいか分からないのと同じ。簡潔には答えられない。
・症例検討で症例提出者が傷を負ったことに対して、フォローはされるのかと聞かれるが、フォローはしない。症例を提示して無傷という訳にはいかないだろう。
※補足:「あたかも」症例検討は多声性があり、厳しい声も出るが、プラスの声も出る。その中で、どの言葉に惹かれるかはあくまで症例提出者次第であると思いました。

私:先生、「あたかも」症例検討を通して参加者に学んでほしいことは何ですか?
先生:教えません。そして、症例検討終了後も教えません。
私:!?

■参加して学んだこと・考えたこと
・分かりやすさを排し、多声性を全部受け止め、それは各自がどのように理解するかは自由。
・ナラティヴというあいまいなものについて、訳者から直接話を聞くのは非常にわかりやすかった。と同時に、これを体得するのは、理屈だけでなく師匠について経験を積むことでしか成し得ないと思った。
・「あたかも」症例検討を2時間じっくりと実施。多声性を体験。
・その後、講師を囲んで懇親会。非常に盛り上がる。やはり、偉人には著作・訳書だけでなくご本人に会うのが良いと再認識。
・「あたかも」症例検討は、決して事例の支援を展開するための具体的なコメントを求めることはなく、あくまでその登場人物の声を聴くことに主眼が置かれていました。そのため、ロールプレイとも異なり、侵襲度は低く、面白いやり方だと思いました。
・方法論に行き詰まりを感じている症例や、クライエントとその家族の気持ちの理解が不十分であると援助者が感じる場合に、本症例検討会の方法は有効であると思いました。

運営された金城学院大学医療ソーシャルワーク研究会のみなさま、どうもありがとうございました。