第11回 医療・福祉研究塾

〇紹介された書籍

二木立『地域包括ケアと医療・ソーシャルワーク勁草書房,20189.1.22

〇内容
2017年の介護保険法改正と17~18年の医療・社会保障関連の主な閣議決定を複眼的に検討。改正の目玉である「介護医療院」の創設に込められた厚労省の狙いとは? 6年ぶりに改定された「高齢社会対策大綱」において「社会保障の機能の充実」が消失した意味とは? 法改正の背景から詳細に論じ、地域包括ケアの今後を展望する。

有馬明恵『内容分析の方法』ナカニシヤ出版,2007


〇内容
新聞記事、雑誌、マンガ、TV、CM…課題を生成し、いかに分析するか。言説分析の必須技法。

〇目次
第1章 内容分析からわかること
第2章 内容分析をするための準備
第3章 内容分析の実際
第4章 データの入力と分析
第5章 論文のまとめ方
付録1 理論・モデル紹介
付録2 研究紹介

岩崎晋也『福祉原理 -- 社会はなぜ他者を援助する仕組みを作ってきたのか』有斐閣,20118


〇内容
地縁や血縁など特定の「関係のない他者」を援助する仕組みである「福祉」。私たちは「福祉」という仕組みがあることで見知らぬ他者と共存し、社会を形成できているのだ。社会はなぜ「福祉」を必要とするのか。その正当化の論理を、歴史上の3つの局面に焦点を当て、壮大なスケールで描き出す。新しい社会福祉が向かうべき方向を指し示す、渾身の福祉原論。

〇目次
第1章 古代都市国家の「福祉」とキリスト教による転換
1 「関係にもとづく援助」の規範化
2 古代都市国家における「秩序維持型福祉」の誕生
3 キリスト教による「秩序再構築型福祉」の展開
第2章 近代市民社会の「福祉」と社会連帯論による転換
1 国家による社会防衛としての「秩序維持型福祉」
2 フランス革命後の「福祉」の社会的位置づけの変遷
3 社会連帯論による「秩序再構築型福祉」の展開
第3章 現代社会の「福祉」と「新しい社会福祉」による転換
1 もう一つの「福祉」の系譜──「社会福祉」の誕生
2 消費者へのサービス提供──「社会福祉」の解体
3 「新しい社会福祉」による「秩序再構築型福祉」の可能性
終 章 福祉の原理とは何か

松田純安楽死尊厳死の現在-最終段階の医療と自己決定 (中公新書)』中央公論社.2018.12.19


〇内容
21世紀初頭、世界で初めてオランダで合法化された安楽死。同国では年間6000人を超えて増加の一途である。
自己決定意識の拡大と超高齢化社会の進行のなか、容認の流れは、ベルギー、スイス、カナダ、米国へと拡大している。他方で精神疾患認知症の人々への適用などをめぐり問題が噴出している。
本書は、安楽死の"先進"各国の実態から、尊厳死と称する日本での問題、人類の自死をめぐる思想史を繙く。そのうえで「死の医療化」と言われる安楽死の現状を描く。

〇目次
序 章 肉体的苦痛の時代――戦後日本の事件と判決
第1章 安楽死合法化による実施――世界初のオランダの試み
第2章 容認した国家と州――医師と本人による実施
第3章 介助自殺を認めた国家と州――医師による手助けとは
第4章 最終段階の医療とは――誰が治療中止は決めるのか
第5章 安楽死と自殺の思想史――人類は自死をどう考えてきたか
終 章 健康とは何か、人間とは何か――求められる新しい定義

康永秀生『すべての医療は「不確実」である (NHK出版新書) 』NHK出版,2018.11.10


〇内容
抗がん剤抜きでがんが消えた」「がん治療に〝革命〟が起きた」「子宮頸がんワクチンは強い副作用が多い」「グルコサミンで関節痛が改善」「ビタミンCでかぜを予防」……。ネット時代、病気と治療をめぐる情報は氾濫する一方だ。これらに惑わされず、医学の進歩の恩恵を受け、幸せに長生きするにはどうすればよいか? プロが〝科学的根拠の有無〟を手掛かりに秘訣を伝授する。

〇目次
第一章 何が医療を進歩させているのか
第二章 タバコ、タミフルマンモグラフィ
第三章 ビッグデータが明らかにする治療の真実
第四章 「科学的根拠」のない治療
第五章 デタラメ医療情報の見分け方
第六章 「これさえ食べていれば」の罠
第七章 無益な検査、有害な検査
第八章 がんにはかかると覚悟せよ
第九章 認知症は改善できるか?
第十章 あなたはあと何年生きられるか

大平誠『徳田虎雄 病院王外伝 国内最大病院を巡る闘いの舞台裏』PHP研究所,2018.9.20

〇内容
徳田虎雄がまだ9歳だったある日の明け方のこと。3歳の弟の往診依頼のために、故郷・徳之島中の医師を駆けずり回るが断られ、弟は息を引き取った。夜間診療も休日診療もない時代。命が助かるのは裕福な家庭に限られることを知った徳田は、誰もが平等な医療を受けられる病院設立を目指して医師となり、昭和40年代から徳洲会病院を各地に設立。医療過疎地での病院設立や24時間・365日診療など、当時の概念を覆す施策が患者の心をとらえ、徳洲会グループは巨大病院に発展する。徳田はさらなる医療改革を進めるために政治の世界への進出を図るが、既得権益を次々に破壊された日本医師会は激怒。徳田の政界進出を阻むべく、対立候補を立て、対立はいよいよ激化した。本書は、こうした徳洲会日本医師会の闘いの舞台裏を明かすために、新聞記者や雑誌記者として数々の医療現場を取材してきた大平誠が当時を知る関係者を徹底取材。現在までの医療改革の真相を究明した書。

〇その他

今井友樹監督『夜明け前』2018

金川英雄訳『【現代語訳】呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況』医学書院,2012

〇内容
近代精神医療の原点、待望の現代語訳。
呉秀三は、明治・大正の時代に、精神病者監護法で定められていた精神病者の私宅監置義務を廃し、患者が精神病院において医療を受けられるための、新しい法制度を作ろうとした人物である。政治家を動かすために、呉秀三が作成した調査報告書が本書である。日本各地の座敷牢の実態をなまなましい姿で伝える本書は、民俗学社会学的にも貴重な歴史的資料でもある。
90年以上前に作成された旧漢字・カタカナ文による文章を現代語訳し、現代の私たちが難なく読めるようにした。

〇目次
第1章 緒論
第2章 精神病者私宅監置の実況
第3章 未監置精神病者の家庭における実況(十例)
第4章 民間療法の実況
第5章 私宅監置の統計的観察(統計十五表)
第6章 批判
第7章 意見
第8章 概括及び結論