ソーシャルワーク×ロビー活動

議員連盟
「医療基本法の制定に向けた議員連盟」が、2019年2月6日に発足したとマスコミ・患者団体が報じている。

 

「医療基本法制定へ議連発足 患者の権利を明確に」『福祉新聞』2019年2月18日
https://www.fukushishimbun.co.jp/topics/21652

 

「医療基本法超党派議連が設立総会、会長に尾辻氏」『m3.com』2019年2月6日
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/658079/

 

「『医療基本法の制定に向けた議員連盟』設立総会 報告」『日本難病・疾病団体協議会』2019年2月8日
https://nanbyo.jp/2019/02/08/iryokihon1/

 

「2/6 医療基本法議連設立総会」『羽生田俊ホームページ』2019年2月6日
https://www.hanyuda-t.jp/?p=6338

 

福祉新聞の報道によると、

同日の総会には患者団体のほか日本医療社会福祉協会、日本社会福祉士会、日本精神保健福祉士協会といったソーシャルワーカーの職能団体幹部も参加した

 

とのこと。日本難病・疾病団体協議会の報告には、各団体の誰が参加したかまで掲載されている。

 

福祉新聞の記事に掲載されている写真では、羽生田俊議員(元日本医師会副会長)の左隣に田村憲久議員(元厚生労働大臣)も同席しており、議連メンバーになっていることが確認できる。

上記の議員連盟は、議員立法による特定の法案成立を目的としたものであるが、先日紹介した通り特定の業界を支援するための議員連盟として今後発足予定の「福祉士のための議連」もある。

■職能団体の政治連盟
また、連盟違いではあるが日本医師連盟の様に、特定の団体の掲げる理念と政策を実現するために活動する政治連盟もある。この場合、前述の連盟とは異なり構成員が必ずしも国会議員とは限らない。(例:日本医師連盟委員長は日本医師会会長である)

以下、2つの記事は多分に日経の視点が色濃く出てはいるが事実部分については、各職能団体の政治連盟の組織票の力を知ることができる。

「既得権サークルの聖域 カネと票、厚労族走らす」『日本経済新聞』2017年6月26日
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO18090850W7A620C1MM8000/

「変わる『厚労族』 社会保障票90万の虚実、利害調整困難に」『日本経済新聞』2017年6月26日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO17965970S7A620C1I00000/
※本記事の表が有用

2001年の参院選比例代表から個人名と政党名のいずれかに投票できる「非拘束名簿式」が採用された。衆院選比例代表は、各政党があらかじめ優先順位を決めるが、参院選比例代表の「非拘束名簿式」は、優先順位はなく投票数に応じて各政党に当選数が割り振られ、その当選数に応じて名簿内から投票数の多い順に当選することとなる。この方式により自らの職能団体から議員を擁立し、職能団体の組織票で当選させるという方法を採用できる。

各職能団体の会員が、どの政党・どの議員に投票するかは基本的に自由であろう。そのため、日本看護協会平成28年度現在72万人の会員数であるが、同年の参院選では髙階恵美子氏を擁立したのに対し、獲得票数は約18万票に留まった。とはいえ約18万票は、当時の自民党の比例名簿25名中11位の成績である。

他にも参議院議員1名と衆議院議員2名が日本看護連盟に所属している。衆議院議員阿部俊子氏は、選挙区では4期連続で敗れるも、いずれも比例代表で当選。第48回衆議院議員選挙では選挙区から当選を果たしている(5期目)。同じく衆議院議員木村弥生氏は、第48回衆議院議員選挙で選挙区では敗れるも比例代表で当選している(1期目)。いずれも自民党からの立候補である。ポイントは、衆議院議員選挙の比例代表は拘束名簿式のため、自民党が優先順位を付ける訳だが、その中であっても当選を果たしたということだ。

■福祉士連盟
以上見てきた通り、「福祉士のための議連」と職能団体の政治連盟(福祉士連盟)ではその構成や性格が異なる。

日本ソーシャルワーク教育学校連盟は、『日本における社会福祉・ソーシャルワーク教育・研究の鳥瞰図』を適宜改定しているが(最新版は2018年1月版)、その中で、(公社)日本社会福祉士会41,656名、(公社)日本精神保健福祉士協会11,264名、(公社)日本医療社会福祉協会5,401名、(特非)日本ソーシャルワーカー協会約600名、(公社)日本介護福祉士会47,335名と記載されており、合計106,256名である。無論、重複して加入している会員も含まれるため、実数はもう少し減る。

2016年の参院選比例代表では、全国介護政治連盟が擁立した園田修光氏が101,154票で当選。日本診療放射線技師連盟が擁立した畦元将吾氏は37,731票で落選している。

仮に、ソーシャルワーカーの職能団体が合同で福祉士連盟を創設した場合、独自の議員を当選させるには、10万票を集められるかどうかであろう。

参考になるのは、日本臨床衛生検査技師会だ。会員は57,797名(平成28年3月31日現在)だが、同会宮島喜文会長が政治連盟である日本臨床検査技師連盟を通じて第24回参議院議員選に出馬し、122,833票を獲得し当選を果たしている。(なお、第22回時は当選。第23回時は落選)会員数を2.1倍上回る投票数を捻出するためには並々ならぬ努力があったものと推察する。福祉士連盟も独自候補を擁立するのであれば、基本この構図(職能団体の会員だけでは足りないので会員外の人にも擁立候補者に投票をお願いする)となる。

ソーシャルケアサービス研究協議会は、毎年新年賀詞交歓会を開催して、国会議員・職能団体・関係省・大学を招いているが、福祉新聞の記事も今年の新年賀詞交歓会でのことを取材している。とても重要な取組だ。今後「福祉士のための議連」の正式発足が予定されているが、その動向に注目したい。