新刊案内

今月発売。ソーシャルワーク特集。『総合リハビリテーション』でソーシャルワークを扱ったのは、以下の連載が記憶に。そういった意味では9年振り。

2010年9~12月号の連載「講座 ソーシャルワークの理論と実践」
1.中村佐織  ソーシャルワークとは何か
2.岩間伸之  総合相談
3.副田あけみ チームワーク
4.福山和女  医療・保健・福祉領域での協働のあり方―医学的リハビリテーションにソーシャルワークの視点を援用して

1995年7~12月号の連載「実践講座 ソーシャルワークの技法」
1.児島美都子 ソーシャルワークの技法―総論
2.砂子田篤     脳卒中患者のケースワーク
3.長谷川良雄  脊髄損傷患者へのケースワーク援助
4.後藤親彦・砂子田篤 筋ジストロフィー児のケースワーク―Duchenne型の場合 
5.田中誠   脳卒中患者のグループワーク―患者会の中での援助者の役割
6.熊谷 忠和    コミュニティ・オーガニゼーションとリハビリテーション


「特集 リハビリテーション医療におけるソーシャルワーク」『総合リハビリテーション』Vol.47,No.12,2019年12月号

特集 リハビリテーション医療におけるソーシャルワーク
リハビリテーション医療における急性期病院ソーシャルワークの取り組み 寺田 祥子
回復期リハビリテーションにおけるソーシャルワーク 藤井 由記代
医療療養型病院 小林 紀子・他
緩和ケアとソーシャルワーク 宮田 佳代子
小児専門病院におけるリハビリテーションソーシャルワーク 佐藤 杏


 

■印象に残ったこと
リハビリテーション医療における急性期病院ソーシャルワークの取り組み 寺田 祥子
救命救急センター入院中の患者の家族と早期に面接が出来る様に、「面談予約システム」(電子カルテ上に、MSWの面談予約枠をつくり、救急外来で入院を決めた際に、医師が家族に相談して、その予約枠に家族が来院する予約を入力するシステム)を採用した。(p1163)
厚生労働省医政局地域医療計画課長通知『(医政地発0216第1号)救命救急センターの新しい充実段階評価について』2018年2月16日
「5 転院及び転棟の調整を行う者の配置」
・院内外の連携を推進し、転院及び転棟の調整を行う者が、救命救急センター専任として配置されている:1点
・院内外の連携を推進し、転院及び転棟の調整を行う者が、平日の日勤帯に救命救急センターに常時勤務している:2点

「転院及び転棟の調整を行う者」とは、救命救急センターに搬送等により来院した患者が他院や一般病棟での診療が可能になった場合に、その患者の転院及び転棟等に係る調整を専らの業務とする者をいう。
「転院及び転棟の調整を行う者」には、救命救急センター以外に勤務している場合であっても、救命救急センター専任として転院及び転棟等の調節を行う事ができる者を含む。
※「常時勤務している」とは、複数の者が交替で救命救急センターに常時勤務している場合も含む。
・「平成30年度救命救急センター充実度評価結果」から(中略)、「5 転院及び転棟の調整を行う者の配置」については、2点:157病院、1点:106病院、満たさない:26病院であった。地域別にみると、神奈川県、大阪、兵庫、岡山が充実している。(p1165)
・この充実度段階評価の結果は、救命救急センター運営事業費の補助額(スライド2)に反映され、診療報酬点数の救命救急入院料加算(スライド12)の施設基準にも含まれる、重要なものである。今後、MSWを常勤配置する救命救急センターが増加することが期待される。(p1165)
・救急認定ソーシャルワーカー認定機構についても紹介くださっている。(p1164)

・著者は、「熱中症による脳障害を来した患者の背景と転帰―ソーシャルワーカーの視点から」『総合リハビリテーション』42巻1号,2014,pp.63-66の筆頭著者でもある。

〇回復期リハビリテーションにおけるソーシャルワーク 藤井 由記代
・「できる・できない、ではなく、どうすれば何ができるかを理解してもらうために、患者・家族の理解力に合わせた説明ツールや意思決定をサポートするツールの作成もSwrに必要なスキルといえる」(pp.1169-1170)
・「以前には、各機関との連携によりOSN(大阪脳卒中医療連携ネットワーク)の実績を活用し、脳卒中発症後6ヶ月後の身体障害認定基準を発症後3か月に変更することを要望し、変更された経験がある。」(p1171)
・「最近では『医療機関で経済的困難や支援者不在などの課題が放置されたまま、生活期の資源紹介がなされている』との課題がOSNに報告され、当地域における急性期・回復期リハビリテーション病棟のソーシャルワーク機能の課題が明らかとなった。退院先の確保や身体介助・環境整備を優先する退院援助が先行し、ソーシャルハイリスク(身寄りのない方の支援、経済的支援を要する状態)がアセスメントされ、支援されていないとの指摘である」(p1171)
・「回復期リハビリテーション病棟協会実態調査(2018年度)によると、一定期間に退院した患者のうち、ソーシャルハイリスクのある患者は10.1%であった。」(p1172)※元データでは、10.2%
・「スピードだけでなく、どれだけの生活課題を把握し支援できたかのかなど、支援の質も問われている」(p1173)

■コメント
平成30年度診療報酬改定で、入退院支援加算でも対象である「退院困難な要因」に、入院早期から福祉等の関係機関との連携が必要な状態として、「エ家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがあること」「オ生活困窮者であること」が追加された。しかし、チェックしたとしても、どれだけ・どの様に支援して(procce)どうなったか(outcome)までは問われないため、見て見ぬふりをして早く退院させることが優先されてしまう。何故なら、その生活課題に触れてしまうと、「スムーズ」に退院できなくなってしまうからである。この議論は退院援助・退院支援の議論の当初から存在しており、一周回って改めて脚光を浴びているか。臨床倫理チームの議論もそうだが、従来MSWが重視していた患者の権利擁護のための言動は「青臭い」と一蹴されてきたが、今日的には重視されるようになってきている。この潮目の変化を捉えて、卑下することなくしっかりとソーシャルワーク機能を発揮して欲しい。それも、ミクロソーシャルワークだけでなく、組織メゾ・地域メゾレベルでの展開もより重要である。

〇小児専門病院におけるリハビリテーションソーシャルワーク 佐藤 杏
・「2016年6月に改正された障害者総合支援法および児童福祉法に『医療的ケア児』の文言が採用され、医療的ケアをもった子どもたちも支援の対象として認められ注目を集めている。その結果、在宅医療サービスにおいても成人だけでなく小児を対象とした訪問診療や訪問看護、訪問リハビリテーションなど僅少といわれてきた社会資源が徐々に増えてきている。」(p1192)
・「本来であれば、子どもの可能性や成長を最大限伸ばすための教育的支援や配慮の具体として、特別支援学校や特別支援学級への修学を選択肢として考えられるとよいが、保護者にとって時にそれはスティグマと認識されることもある。」(p1193)
・『厚生労働省障害保健福祉関係主管課長会議資料』2011年10月31日に掲載された、「年齢に応じた重層的な支援体制イメージ」
・『教育課程部会教育課程企画特別部会(第6回)配付資料』2015年4月28日に掲載された、「就学先決定の流れ」
ポンチ絵は、全体のイメージを掴むのに有用。
・著者は、厚生労働省「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ」構成員(日本医療社会福祉協会調査研究部周産期・小児領域担当)でもある。