「霞が関、崩壊への危機感 職場を愛した元官僚が語る現実」『朝日新聞』2021年1月29日

霞が関、崩壊への危機感 職場を愛した元官僚が語る現実」『朝日新聞』2021年1月29日
https://digital.asahi.com/articles/ASP1T2PDQP1PULFA01D.html?ref=mor_mail_topix3_6

ブラック霞が関」の著者。元厚生労働省職員。かなり踏み込んだ発言をしていて清々しい。インタビュアーは、浜田陽太郎記者。

・異常な長時間労働などで健康を害したり、家庭との両立ができなかったり、というのが大きな要因です。もう一つは上から降ってくる仕事に追われて自分で政策を考えて実現できる感覚がなくなってきているのも若手の悩みです。

・政策作りの中核を担うエース級も含めてどんどん離職が進み、志望者も減っている。このままだと行政の質は落ち、ミスも増える。霞が関の政策を作るという機能は崩壊して、国民に迷惑がかかってしまう。そんな危機感を抱いてきました。

・例えば、忙しい厚労省の定員を増やしたとします。それは、厚労省や、社会保障や雇用の仕事を一生懸命やっている国会議員にとってはありがたい。でも、減らされる役所にとっては困るし、その関連の仕事をしている国会議員も困る。だから、政治的な問題にしないために客観的な業務量の把握が大事です。

霞が関全体の人員調整は、省庁のレベルを超えて力を持つ政治家にしかできません。行政の人員体制の縦割りの打破が必要なんです。

・官邸は、政権の支持率を高く保つため、注目度の高い課題に素早く政策を打ち国民の期待に応えようとします。そのこと自体は望ましいけれど、専門家の知恵を使うことや、現場や国民に届けるプロセスやスケジュールは顧みられなくなりました。

・国会の改革は不可欠です。期限を守らない質問通告の改善や質問主意書のルール見直しをしなければ、霞が関を改革しても、官僚の深夜労働、土日対応がデフォルトになる状況は変わらない。

・野党が不祥事や政権を追及する合同ヒアリングに官僚を出席させるのもきつい。官僚は、上司の大臣ら政治家の判断なしには新しい情報を提供できない。だからゼロ回答しかできず、罵倒される。政策ならともかく、森友学園桜を見る会といった政権の姿勢を問う問題は本来、政治家同士で議論しないと先には進めない。

・時がたてばみんな飽きてしまうし、主要な話題でなくなってしまいますよね。情報を出せ、説明しろという追及を突っぱねておいて、世の中の関心が薄れるまでの間、誰が『防波堤』になっているかといえば、情報を出すことを許されずに追及の場に出ていかざるを得ない官僚です


■関連
「コロナで激務に ~霞が関の官僚にいま何が~」『NHK』2020年12月10日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201210/k10012756281000.html