斉藤恵美子『最後の椅子』思潮社,2005.6
お世話になっているN先生がブログで紹介されていた本。老人ホームでの日常を詩集というかたちで描いた作品。「施設で勤めている人たちにとっては日常的な光景」だからこそ、ここで描かれている日常を捉えた表現にドキリとさせられてしまった。読む側の立場・年齢によってかなり感想が異なるであろうことが興味深い。
「車椅子も、貧乏も 施設ぐらしも、退屈も 空気のように受け入れて 八十五まで生きてきた 二年前の正月以来、顔を見せないかみさんや 金だけせびる息子のことも いまでは、じゅうぶん許している おれの中を、覗きこんでも、あんたは誰にも会えないだろう」(「八十五歳」)
「ご飯のすがたはどこにもない 栄養だけが並んでいる」(「チューブ」)