東京都福祉保健局高齢社会対策部計画課『特別養護老人ホーム入所希望者等実態調査報告書』2005.7

【価値判断】○          【種類】量的調査

事実認識

特別養護老人ホーム(以下、特養)入所希望者と入所を希望しない高齢者の実態等を把握し、計画に反映させること」を目的に東京都が実施した調査。以下、印象に残った結果をメモ。

なお、入所希望者とは、都内9区市の住民で、特養への入所を希望している人を指す。在宅高齢者とは、都内9区市の65歳以上の住民で、特養への申し込みを行っていない人を指す。

(※特養、申し込みの有無を把握した時点と、実際に調査を行った時点でタイムラグが生じているため、在宅高齢者の中に若干入所希望者が含まれている。)

・回答者は、入所希望者では、「本人」の回答が13.5%であり、在宅高齢者では、78.7%であった。(p.17)

・要介護度は、入所希望者では「要介護4」が27.1%で最も多く、在宅高齢者では「未認定」が56.9%を占めている。(p.20)

・収入は、入所希望者より在宅高齢者が高い傾向にある。(p.21)

・近所とのお付き合いは、入所希望者では「挨拶程度の最小限の付き合い」が最も多く、在宅高齢者では「立ち話程度の付き合い」が多い。(p.47)

介護保険利用割合、入所希望者は「上限いっぱい」が43.8%と最も多く、在宅高齢者でも21.9%と最も多いが、入所希望者のそれは在宅高齢者と2倍の開きがある。(p.71)

・予約的希望者(「今の家で生活を続けたい」「可能な限り今の家で生活したい」「いつかは特養へ入所したい」の合成変数)は、50.8%に及ぶ。(p.103)

・ホテルコスト徴収時の入所希望、「相部屋でもよい」は6割超える。(p.106)

・主な介護者、入所希望者は「娘」、在宅高齢者は「配偶者」が最多。(p.114)

・主な介護者の介護期間は、入所希望者では平均70.9ヶ月、在宅高齢者では平均61.7ヶ月と、入所希望者の方が9ヶ月ほど長い。(p.117)

・主な介護者のストレス/身体的負担感/精神的負担感/経済的負担感、いづれにおいても、入所希望者が在宅高齢者の数値を上回っている。(pp.125-130)

・介護を手伝ってくれる家族は、入所希望者でも在宅高齢者でも、「いない」と回答した者が約3割と同数。(p.123)

認知症の可能性は、入所希望者では「重度」が51.8%と最も多く、在宅高齢者では「軽度」が41.0%と最も多い。

・家族以外で介護を手伝ってくれる人は、入所希望者では「手伝いはいない」が78.5%、在宅高齢者で69.8%と、入所希望者の方が8.7%ポイント上回っている。加えて、在宅高齢者では、「近隣、近所の人」「友人、知人」「その他」において入所希望者の数値を若干上回っている。(p.136)

【コメント】

入所希望者は、総じて身体・認知面において在宅高齢者より状態が悪く、家族の介護期間も長く、またストレス等の蓄積割合が高い。主介護者が配偶者から娘や子供の配偶者にバトンタッチすること、収入が相対的に低いこと、地域とのつながりが弱いことも入所を促進させている因子と考えられた。なお、介護を行ってくれる家族の有無については、両者に差がなかったことは大変興味深い事実であり、逆説的に言えば、入所の促進因子は、家族がいるかいないかというより、本人の心身状況を踏まえて家族がそれをどう受け止めているか、またそれを負担と感じた場合にどの程度・どういった方法で緩和できているかによることが確認された。東京の9区市では、入所希望者のうち約5割が予約的希望者であった。私の勤務している地域の市及び近隣市町村ではどうなのだろうか。


取り寄せを忘れないようメモ。

→12/13、上記同課に依頼。郵送にて送ってくれるとのこと。

→12/15、報告書着

【関連資料】

特別養護老人ホーム入所指針ガイドライン検討委員会報告書』東京都,2003.2

→日福美浜図書館に資料あり。

【問い合わせ先】

03-5321-1111

○情報源

「資料ガイド」『福祉広報』東京都社会福祉協議会№564,2005.12,p10