鶴舞散歩(06.6.16)

・村上須賀子「医療ソーシャルワーカーの活用を願って」『病院』65巻6号,2006,p485 種類:評論 【コメント】 今月号より「医療ソーシャルワーカーの働きを検証する」というタイトルで連載開始。序文にあたる本論文では、村上氏が、連載開始の背景とねらいについて述べている。「MSWの活用は、患者・家族・利用者にとって意味あるものであり、同時に病院にとっても社会的・経済的に有利であることを証左する」ことを意図して企画されたとのこと。連載構成として、①MSWによる実践事例だけではなく、かかわった他職種・他機関の執筆者から、活用、連携についてとりあげることや、②MSWの医療経済上の貢献を数量的データで示すために、東北大学大学院経済学研究科による調査研究の結果を示す、といった切り口は非常に斬新。メジャーな雑誌であり、かつ医療機関経営者が読者層であることから、私も大変期待している企画である。 ・竹内一夫「わが国における医療ソーシャルワーカーの現状と課題」『病院』65巻6号,2006,pp.486-488 種類:評論 【サマリー】 地域や家族の機能が低下しつつある中で、医療システムはますます複雑化してきており、それを主体的に活用できない患者・家族が出てきている。それらの人たちと医療機関有機的に結びつけるのが医療ソーシャルワーカーの役割である。医療ソーシャルワーカーは、診療報酬上評価されていないにも関わらず、毎年その数は増加傾向にある。医療ソーシャルワーカーは、病院の経済活動に貢献しており、①入院期間の短縮②回転率の上昇稼働率の上昇④病院へ患者・家族の信頼感の向上といった効果を発揮する。しかし、それでも絶対数が足りず、退院計画の支援や転院準備の圧倒されてしまっている。もしこの数が圧倒的に増加されるならば、業務の有効性がますます明確に示されることとなろう。 【コメント】 『病院』誌の読者層(医療機関経営者)を意識して書かれた文章。3ページと短い文章ながら、医療ソーシャルワーカーの現状と課題について上手くまとめている。特に、経営への貢献具合に文章の比重を置いているところがポイント。但し、貢献内容の稼働率の上昇という点については、医療ソーシャルワーカーのどのような行為がそれに影響を与えているのかが、本文からは分からなかった。 また、本論文の余白部分には、二木先生による「海外医療情報」(海外の医療経済論文のサマリー)が掲載されており、何だか笑えた。 ・小山秀夫「特集どう転換していく療養病床:高齢者医療制度の変革には高齢者の専門医療確立の議論を真剣に行うことが必須条件」『GPnet』june,2006,pp.18-21 種類:評論 【コメント】 本年4月より、国立保健医療科学院経営科学部部長から静岡県立大学大学院経営情報学研究科教授へと転身。自己の研究半生について振り返りつつ、老人病院制度成立からから療養病床削減に至るまでの経過について大変分かりやすく述べられており、参考になる。決して無味乾燥な文章ではなく、自分の言葉できちんと書いているところにいつも感心させられる。介護保険給付の療養病床を持つ経営者に対して、医療保険給付の療養病床として転換するのか、他施設へと転換するのか、さもなくば市場から撤退するのか、経営戦略上それらの手段を検討する前に、そもそも己の法人全体の方針を検討し文章化せよとの指摘は大変説得力がある。 ・御園生妙子「自宅へ退院する患者の現状と今後 退院調整の現場から」『訪問看護と介護』vol.11,№6,2006,pp.568-572 種類:実践報告 ・「追跡 リハビリテーションはどう変わる(上)」『日本医事新報』№4284,pp.16-19 種類:解説 ・鈴木晃「住宅改修の評価システムの構築を-自立支援としての意義を高めるために-」『月刊介護保険』№124,2006,pp.26-27 種類:評論 【サマリー】 介護保険下の住宅改修においては、専門技術者による関与が必要であり、また自立支援という理念に基づいたアセスメントを実施する必要がある。「神奈川県城山町の単独事業『住宅改造相談』の利用者を、介護保険制度実施前後で比較したところ、相談担当者(ソーシャルワーカー)が判断した『改修の必要性』は介護保険制度実施前では87%が『必要性あり』とされたが、実施後ではそれが63%に低下した。さらに介護保険実施後では、改修の必要性が認められなかった群も、『必要性あり』とされた群とほぼ同程度の割合で改修が実行に移されていた。」(p27)。 【コメント】 著者は、国立保健医療科学院建築衛生部健康住宅室長。相談担当員による住宅改修のアセスメントの妥当性について、疑問を投げかけている。相談担当員がたまたま配属になった町職員なのか、また相談担当員=ソーシャルワーカーなのかは、本文からは不明ではあるが、実際に改修行為に参画している自分にとっては、考えされられる文章である。引用されている文章の該当論文が、日福図書館に所蔵されているので、次回美浜遠征時には要チェック。 関連:鈴木晃ほか「介護保険の住宅改修サービスにおけるニーズ・アセスメントの課題」『国民生活研究』第45巻第1号,2005,pp24-36 ------------------------------------------------- ①06.6.19 6:00 修正