全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会 平成18年度第1回ソーシャルワーカー研修会(06.6.24) 参加レポート

以前の記事でも紹介した通り、6/24日に上記研修会が、東京の三田NNホールにて開催された。 そこに参加した、回復期リハビリテーション病院でソーシャルワーカーとして働いている後輩K君より参加レポートを頂いたので、本人の了解を得て下記の通り掲載します。後輩K君どうもありがとう。 みなさんどうぞ、参考までに。


昨日、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会が主催した会員病院のソーシャルワーカーのみを集めた初の研修会が開催された。北は北海道、南は沖縄まで全国から133名が参加した。実は200名近くの応募があったそうだが、会場のキャパシティの問題があり、お断りをしたとのこと。全国でがんばっている仲間と交流できたと同時に、皆おなじ悩みを抱えながらソーシャルワーク実践をしているのだと逆に励まされることになった。 午前中は各分野のトップランナーの講演、午後は会員病院のソーシャルワーカー同士の懇談・フリーディスカッションと全体討議(会場から質問を受け、回答者が質疑応答)であった。 基調講演:全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会常務理事 石川 誠 回復期リハビリテーション病棟の使命 医療制度改革の行方と今後のリハのあり方について言及。4月の診療報酬改定により、発症から2ヶ月以内の受け入れと回復期リハ医療の条件等も大きく変化し、より「亜急性期」患者を中心に受け入れることになると指摘した。しかしこのことで急性期の在院日数を短縮に貢献できるとともに、早期リハが開始できると主張した。 また次回診療報酬改定にはソーシャルワーカー社会福祉士)がほぼ必置制になるだろうと述べた。実はこのことは今改定に盛り込まれるはずだったが、土壇場で×になったと解説した。厚生労働省からはまずは回復期リハ医療の地域間格差(人口10万人に50床を整備目標)をなくしてから、その後ソーシャルワーカーの必置制をと意見があったそうである。そのため次回改定には必置がほぼ決まっているとの話題提供があった。 ほかには、急性期でのDPC導入が大きく進み、4、5年後には急性期においてはDPCの導入されなければ急性期病院ではないといわれる時代が来ると述べた。また現在は大腿骨頸部骨折のみに適応となっている「地域連携クリティカルパス」も数年後には脳卒中なども加わると紹介した。 介護保険の行方については、介護保険3施設が今後はケアハウスや有料老人ホームなどのいわゆる居住系施設と統合され、ホテルコストを除き支給限度額で「居住」の扱いで設定されることになると驚きの内容が話された。 講演1:NTT東日本伊豆病院 ソーシャルワーカー 手束 美和子 回復期リハビリテーション病棟の現状と課題 講演2:太田熱海病院 ソーシャルワーカー 大川原 順子 回復期リハビリテーション病棟の現状と課題 また、リハビリテーションソーシャルワークの分野では先人ともいえるNTT東日本伊豆病院の手束氏、太田熱海病院の大川原氏の自身の取り組みについての紹介も勉強になる点が多かった。とくに、ソーシャルワーク業務は他職種とは異なり、「目に見える貢献」が現れにくい傾向にあるため、患者・家族へのソーシャルワーカーの介入率が高ければ在院日数が短縮化され、概ね比例関係にあるといった紹介は斬新であり、今後のエビデンスづくりの一助になるかもしれないと感じた。 また、退院援助の理念として「入院前の生活の場に帰ることが当たり前」といった紹介も当然といえばそうなのかもしれないが、あらためて噛み締めることになった。ただし、両氏ともやはり目の前の膨大な業務におわれ、回復期リハビリテーション病棟でソーシャルワーカーの専門性の定着を目指していくことや、病棟必置制に向けては、まだまだ解決すべき課題があると指摘され(とくに人員不足、そして回復期リハビリテーション病棟のみの医療機関ではないため他科からも依頼があり、時間的制約もあるなど)、私たちと同じことを感じているのだとも思った。 講演3:熊本機能病院 ソーシャルワーカー 加来 克幸 回復期リハビリテーション病棟のソーシャルワーカーの現状に関するアンケート調査結果のポイント 熊本機能病院の加来氏の「回復期リハビリテーション病棟のソーシャルワーカーの現状に関するアンケート調査結果のポイント」も大変興味深いものであり、協議会に加盟する医療機関ではすべてソーシャルワーカーが配置されており、専任となっている施設も55施設44%と私の予想をはるかに上回るものであった。ただし、患者・家族への介入の仕方はそれぞれであり、他職種の依頼がなければ介入しない施設などもあるなど、必置制・全患者担当制ではないことから全国的にはまだ標準化されていないことも分かった。忙しさにおわれるためか、全国的にも業務分析が進んでおらず、エビデンスづくりのためにもこれらの分析は急務と感じることになった。 ※ちなみに私の出身大学の大先輩。いつもお世話になっており、頼りになります。 フリーディスカッション:グループごと4名にわかれて 全体討議:総合司会/高田玲子(東京医科歯科大学非常勤講師) 回答者/手束美和子、大川原順子、榊原次郎(霞ヶ関南病院)、西本奈加(近森リハビリテーション病院)、取出涼子(初台リハビリテーション病院) 全体討議ではこれもまたリハビリテーションソーシャルワークの分野で活躍されている先輩方から刺激のあるアドバイスをいただいた。総合司会の高田氏の「迷ったり、悩んだり、ソーシャルワーカーとしてのアイデンティティーが崩れそうになったときには原点(ソーシャルワークの定義)にかえる」といった指摘は現場で崩れそうになりながらも業務に取り組んでいる仲間へのエールとなった。 <まとめ> 私の職場は他の医療機関に比べるとソーシャルワーカーが大変に働きやすい環境にあり、手塚・大川原両氏が課題にあげたように、「目に見える貢献」ができるように次の取り組みが必要と思われる。ひとつはただ時間が足りないと嘆くのではなく、どのようにすれば効率的かつ有効的な業務を行うことができるのかを検討することである。入院相談への対応やカンファレンスへの参加のあり方、記録の書き方など現状に満足することなく、さらに部門内でも話し合いを行って、管理部門へ相談・提言することも必要だと感じた。 もうひとつはソーシャルワーカーが回復期リハビリテーション病棟に貢献できる指標を生み出すための業務分析に取り組む必要がある。他の部門と違ってとくにソーシャルワークの領域では業務分析が遅滞していることは間違いない。まずはできることから、さまざまな角度からの分析を行うことも必要と思われた。