愛知県医療ソーシャルワーカー協会老人保健施設ソーシャルワーク部会研修会(06.9.16)レポート

はじめに 06916日(土)、東別院ホール名古屋市中区)にて、県協会老健部会主催の研修会を開催。会場は、参加者52名と主催者側6名の計58名のSW(うち、支援相談員56名、ケアマネジャー1名、MSW1名)の熱気で溢れ返っていた。以下では、研修会当日の様子を主催者側のメンバー1個人の視点からレポートしたい。 ※写真は、プライバシー保護のため一部修正を加えています。 1.研修内容 研修会のメインテーマは、「インテーク面接、あなたはどうしていますか?」。参加者は、それぞれ78名で1グループをつくり、ファシリテーターとして主催者側1名(一部兼務)が加わって計7グループで、ワークショップ形式の研修を行った。メインテーマを踏まえて設問を2つ出題。はじめに、問1「支援相談員として、インテークの時に大切にしていることは何ですか?」。次に、問2「インテーク面接で、他職種から求められる情報収集内容は何ですか?」。 問1では、支援相談員(以下、相談員)としてインテークの時に大切にしていることを1つ(①キーワード、②理由・視点・ポイント)、ポストイットに書いてもらい、グループ内で各自報告。さらに出されたキーワードを、グループのメンバー内で協議してもらい、分類。最後に、他のグループに対して、発表してもらうという内容構成であった。 問2では、特に優先順位が高いと各自が思う内容を3つ(①職種名、②情報収集内容)を、それぞれポストイットに書いてもらい、以下問1と同様の形式で発表してもらった。 060916 老健部会 0007.JPG

2.属性で異なる回答傾向 1SW歴で異なる回答傾向 1「支援相談員として、インテークの時に大切にしていることは何ですか?」で感じたことは、回答者のSW歴(支援相談員歴と一部前職でのSW歴の合計)によって、回答傾向に違いが見られたことであった。例えば、経験年数が短いSWの回答では、「入所目的をきちんと漏らさずに聞いています。」という基本的なものだが、中堅者のSWでは、「ケアスタッフへ利用者にきちんと情報提供を行い、スムーズにケアを行ってもらうために、認知症高齢者の具体的な症状を確認している。」といった、大変実践的な意見が出された。 さらに経験年数を積んだSWでは、「ラポールの形成に時間を割き、まずは本人・家族が相談したいことを、本音で話せる職種なんだと思って頂ける様にしている。」という、技術依然の、より根源的な相談員としての基本的なスタンスに関する言及も見られ、目からウロコであった。結果、私の様な新人にとってはよい気づきを、中堅者以上にとっては自己の経験の言語化・文章化作業を促す機会となった。

060916 老健部会 0002.JPG 2)立場によっても異なる回答傾向 また、相談員の勤務する施設で置かれている立場が、事務職寄りか、ケア職寄りかによっても回答傾向に違いが見られた。前者では、インテークの最優先事項として、ADLを確認する場合に、転倒のリスク説明をきちんと行い、同意を得ることが相談員に求められていた。加えて、家族内での役割の確認・整理(保証人・日常的な来所者・キーパーソン・主介護者・緊急時の対応が出来る人)を行うことが求められている事例が見受けられた。 後者では、同じADLを確認する場合でも、これまでどの様なADLだったのか?また、家族としては、どこまでよくなって欲しいのか、といったことの情報収集をインテークの最優先事項として確認していた。 無論、個々の答えのみで、その施設の相談員の業務が判断できるわけではないが、「施設の方針や、相談員と他職種との力関係によって、業務にも違いがみられる。」という事実を本ワークショップを通して、個々の相談員が目の当たりにし、自己の業務を相対化するという機会を持って頂くことが出来た。参加者の言葉を借りれば、「自分の施設では、当たり前に行っていることが、他施設では当たり前でなかったり(又は、その逆)することも分かった。」訳である。 060916 老健部会 0006.JPG 3.施設内の職種による力関係が垣間見られる回答内容 2を始める頃には、参加者の緊張も幾分か和らいだようで、徐々に意見も活発になってきた。「インテーク面接で、他職種から求められる情報収集内容は何ですか?」という問であったが、参加者からの回答は、意識的にか無意識的にか、施設内で「声の大きい」職種の意見を中心に取り上げていた。施設によっては、施設長が最も声が大きく、また管理栄養士の声が大きい施設も、そして看護師の声が大きい施設もみられた。 自分の勤務する施設では最重要事項として求められる情報でも、他施設ではまったく聞いていない情報もあった。参考になる情報収集内容もあったが、それよりも、その施設独自の価値観(正確には、声の大きな人の個性)で確認を求めていると思われる情報収集内容もあり、参加者一同、思わず苦笑してしまう場面も見られた。なお、施設が特定されてしまう恐れがあるため、具体的内容はここでは割愛する。報告した施設の参加者は、問1と同様に、自分の施設では当たり前となっている情報収集内容が、他施設では当たり前ではなかったことを知る機会となったようで、今後の業務に活かしていきたいという声が多かった。 また、もう少し突っ込んで言えば、「こんな情報を聞いていったいどれ程役に立つのだろうか?」と疑問に感じながらも日々悶々と業務を続けてきた相談員にとって、他の施設でも似たり寄ったりのことが起きていることが分かって、少し気が楽になったというのが本音ではないだろうか。 060916 老健部会 0005.JPG 4.支援相談員同士が話す機会の少なさ ワークショップも後半。全体での感想を述べて頂く下りで、ある相談員が「グループ内でもう少し話がしたいのですが、いかがでしょうか?」と提案。ノリの良い司会者は、即座にOKと返答(笑)10分程度の短い時間ではあったが、グループ内でフリートークとなった。 私の参加したグループでは、「他科受診の方法」や「薬価の高い入所者への対応方法」について意見交換。施設方針によって、対応方法は様々であった。ここの場で出された、様々な方法については、どうか施設都合ではなく、利用者・家族の利益を最大化するために活用して頂きたいと、強く願う次第である。 いずれにせよ、相談員は、制度や環境因子(家族状況、家屋状況、経済状況)、施設方針を上手く調節して、利用者・家族を支援するため、他職種のように目に見える対象を扱っていない。そのため、なかなか技術が受け継がれにくい側面があるのは否めない。 加えて、常々申し上げている様に、医療機関SWと違い、老健の相談員同士は、原則的に入所者のやりとりを倫理上(施設の無目的なたらい回し)行っていないため、交流が生まれにくい。その為、ますます他施設の相談員がどんな人で、どんな実践をしているのか分からないでいるという背景がある。 だからこそ、本ワークショップは、予定定員を上回る参加者から申し込みがあり、かつ、フリートークを望む声が上がったのだと思う。そう、我々支援相談員は、他施設の相談員と「会話する」といった根源的なことに飢えているのである。 そういった意味では、「会話する」場を提供できる当部会の存在は大変重要かつ貴重である。まあ、そうは言っても、部会員は有志で実行しているのだから、やれることにはやはり限界がある。志を同じくする相談員の方に、是非部会員になって頂き、今後とも当部会を支えてもらいたいものである。 060916 老健部会 0004.JPG おわりに 今回、この様なワークショップを実施することが出来て、大変うれしかった。参加者の皆さんに感謝を、部会員の仲間にはお疲れ様を言いたい。当部会では、今年度あともう1回、研修会を開催する予定である。現在内容を検討中なので、是非次回もご参加頂きたい。また、今回のワークショップの最後で皆さんにアンケートにご協力頂いた。この結果についても、今後何らかの方法でみなさんにフィードバックしていきたいと思うので、どうぞお楽しみに。 060916 老健部会 0002.JPG