小西加保留「保健医療領域における対人援助技術」『桃山学院大学総合研究所紀要』第30巻第2号,2004.pp.31-44

小西加保留「保健医療領域における対人援助技術」『桃山学院大学総合研究所紀要』第30巻第2号,2004.pp.31-44 著者は、06年より関西学院大学教授。HIV感染者へのソーシャルワーク研究の第一人者。9月に開催された日本医療福祉学会にて著者の発表を聞いたが、臨床経験者でこれほどまでに学術的水準を高められることができるのだと、ただただ関心。政策的意味合いの明確な実証研究や具体的な臨床技術にまで言及することが出来る著者の姿は、ロールモデルとなりうる。 昨日のブログで、フェルトニーズ・ノーマティブニーズ・リアルニーズについて述べた箇所で紹介したが、それ以外にも興味深い概念が取り上げられていたので、備忘録として以下引用。 関連:小西加保留「HIV陽性者の療養生活と就労に関する調査研究」『HIV感染症の医療体制の整備に関する研究』(平成16年度厚生労働科学研究費エイズ対策研究事業),2005.3


予備的共感 共に独居生活を続けてきた親子の場合、何とかぎりぎりのところで生活してきた父親の病状が、以前より重くなり介護が必要になった時、あるいは在宅酸素という慣れない医療行為が必要と医師から言われた時、いったい人はどのような気持ちになるのか、特にこれまでこのような相談をしたことが無い人の気持ちはどんなものだろうか、などクライエントの置かれている状況に対して想像力を膨らませること。そこから得られた多くのアンテナを立てて面接に望み、現実にクライエントにフィットするアンテナを選んでいくという内面の作業を繰り返し行うことにより、理解や共感のレベルが深まり、信頼関係に繋がる。保険医療分野のソーシャルワーカーは大変忙しいのが普通であり、決められた時間内で結論を出していく必要性に迫られることが多い。感性を磨き、共感の能力を高めることで、迅速にクライエントの思いや考えを察知し、その道筋に沿った形で情報収集・提供を行うことで、面接の効率性を高めることが可能である。(p36) 事前の情報収集 この事例のように病院に入院中のケースの場合は、事前に例えば看護師から本人の様子や生活歴や家族関係等に関する情報、また既往歴や現病歴など、可能な範囲で情報収集をしておくこともクライエントの状況や置かれている立場を理解するために有用である。但し、このように事前に収集された情報は、その内容によっては情報提供者の主観に影響されることもあるため、ソーシャルワーカーの立場で再統合しアセスメントすることで、間違った先入観に繋がらないよう注意する必要がある。(p36)