研修会レポート

昨日、研修に参加した。募集人数100名を大幅に上回る200名以上が参加。以下、忘れないうちにメモ。


【概要】 ・2007年3月25日(日)10:00~16:30 2006年度 医療ソーシャルワーク研修会 ○プログラム 1.講演 テーマ:ソーシャルワーカーと診療報酬を考える 講師:小山秀夫 静岡県立大学経営情報学部教授 2.シンポジウム テーマ:evidence based social workその現状と課題 シンポジスト 急性期病院の立場から  原田とも子 氏(NTT東日本関東病院) 回復期リハビリの立場から  取手涼子 氏 (初台リハビリテーション病院) 医療療養型病院の立場から 榊原次郎 氏 (霞ヶ関南病院) 緩和ケアの立場から  福地智巴 氏 (静岡県立静岡がんセンター) 司会 日本医療社会事業協会 副会長 村上信 氏(新潟医療福祉大学) 3.対談 テーマ:ソーシャルワーカーの必置制を目指して 小山秀夫氏(静岡県立大学) 小松智世美氏(元福島県医療ソーシャルワーカー協会副会長) 堀越由紀子氏(田園調布学園大学) 司会 宮内佳代子氏(帝京大学医学部附属溝口病院) 会場:文京学院大学 本郷キャンパス D館6F スカイホール 募集人数:100名 主催:日本医療社会事業協会


※各演者の発言は、あくまでも私が聞き取ったものですので、正確さに欠けます。 【印象に残ったこと】 小山秀夫 静岡県立大学経営情報学部教授ソーシャルワーカーは、ピンキリが多い。こんなヤツに診療報酬をつけてもらいたくないと思われないようにしないといけない。まあ、それは医者でも同じですけどね。」 ・イノベーション=「成長の本質は、創造的な破壊である。」(シュンペーター) ・1病院あたりのMSW数が増加する要因の1つには、この5年間で900病院が廃業し、母集団が小さくなったことも考えられる。 ・(MSWについて)「みなさんハートはいいけど、やっぱりマニー、マニーですよ。」 ・出来高払いの診療報酬に乗っかるには10年遅かった。包括化が進む現代においては、如何に必要経費を抑えるかという発想が求められる。その中で経費の係るものは当然淘汰される。これからは、MSWが参画することにより、必要経費を抑えることが出来るんだということを経営者層に伝えることが重要。 ・少数精鋭は危険。多くのことに気をとられるとミスが多い。チームでやることが大切。多数精鋭を目指せ。 ・MSWはナラティブな人が多い。話が長すぎる。何を相手に伝えたいのか。それを明確に伝えることが大切。よく、いきなり事例から話し始める人がいるが、「ああ、またそれか。」と思ってしまう。データ根拠を示し、分析結果を伝え、相手から「具体的な事例は?」と問われた時に、これだと思って準備しておいた事例について話す。こういった論理で会話をしてほしい。文系の頭をもう少し、理系にして下さい。 ・ただし、事例・ナラティブを否定しているのではない。ソーシャルワーカーには、Evidence basedだけではなく、そういったものでは計ることのできない、Value based なものだってある。人権とか虐待とか、そういったことがあれば、ソーシャルワーカーの倫理綱領に基づいて行動することも必要ではないか。これまで大切にしてきたものは、今後も大切に。その上で、Evidence basedな行動を進めて欲しい。 ・「地域連携パス」の算定用件に、「連携医療機関間で、情報交換のための会合を定期的開催」と書いてある。ここに、ソーシャルワーカーがチームの一員として参画していくことが大切。地域連携を今まで以上に進めるには、SWが必要。但し、院長クラス・看護部長クラスのマネジメントにおいて実現するもの。MSWだけでやれるとは思わないように。変化に乗り遅れたら死ぬよ。 榊原次郎 氏 霞ヶ関南病院 ・(急性期HPにおいて他職種は何らかの手段を用いて連続性を保っているが、MSWにはそういった手段が無いのではないかというフロアからの意見を踏まえて。)他機関へMSWのアセスメントを伝える場合、その手段としてサマリーか口頭いずれかが考えられる。 以下3つのうちどの方法を用いることがクライエントにとって適切なのかを考えることもアセスメントのひとつである。失敗すると、本人・家族からクレームがくる場合もあるので慎重に。 ①本人・家族も交えてアセスメントをしたものをサマリーにする。これが原則。 ②家族とアセスメントしたものをサマリーにする。 ③他機関へ口頭で伝える。 小松智世美氏 元福島県医療ソーシャルワーカー協会副会長 ・MSWを1名体制から、法人全体で18名にまで増員できた秘訣。 ①業務規定や職務規定および組織図にMSWを明文化した ②昇進試験規定を定めた ③採用規定における資格規定は、社会福祉士及び社会福祉士受験資格保持者とした ④給与規定を明文化した ⑤MSWとしてやらなければいけない仕事、やれるかもしれないがやってはいけない仕事を意識すること。その判断は、倫理綱領に基づく。 ⑥他職種と社会福祉士とそれぞれ取得科目を比較して見せることで、違いを理解してもらう ⑦倫理綱領を院長クラスに見せて理解を得る ⑧MSWはフリーアクセスであるとして、院外の患者の相談も受け入れた。それにより地域連携がスムーズに ⑨他職種に貢献できる点を伝える ⑩どの様な経路で相談がきたのかをきちんと数値化し、必要な時に経営者層へ伝える準備をしておく ・足りなかった取り組み ①「患者○人にMSW1人を置く」という定員規定を院内に設けられなかった ②「どの部署にどの位のMSWを配置するか」という配置基準を院内に設けられなかった ③MSWの必置制を訴える時に、患者にとってのメリットを明確に出来ていなかった ④学術団体との連携 ・時代が変わってもMSWにとって変わらないもの。それは、『ソーシャルワーカーの倫理綱領』です。 堀越由紀子氏 田園調布学園大学ソーシャルワーカーのファンド(財源)はどの様に賄われているのか、という視点が必要。今自分の部署が上げている成果を出すためには年間どれだけの予算が必要なのか。これは国によって異なる。診療報酬に乗ることで、MSWが独自にファンドを賄う手段が生まれる。ただし、診療報酬で支出を全てカバーしようという発想や、逆に診療報酬には乗らないという発想はお互いに両極端だと思う。医療機関の中に、MSW同様独自の収入源がない職種はいる。しかし、そういった職種が存在することでチームとしての効率・効果が上がるのだという視点が必要。 ・仕事の意義を理解してもらいたい職種・職位にどのように見せていくかが重要。 【思ったこと】 ・「在宅か施設化ではなく、両者の壁をなくすこと。」と小山氏。最近良く耳にする表現だがいまいち理解できていなかった。今回分かったのは、在宅でずっと生活するか、施設でずっと生活するかという二項対立的な発想ではなく、必要に応じて、在宅と施設を行き来するという発想が重要だということ。在宅と施設は、生活場面において連続線上にあるという発想をようやく理解できた。 ・外部に情報発信しなければならなくなった時、初めて共通言語が産れる。これまで身内だけで議論してきたため、「あれって言ったら、あれだよね」といったニュアンスをたぶんに含んだ形で議論し、用語の定義においても神学論争的な感が否めなかったので、大変良い傾向である。 【耳寄り情報】 近日中に、社会福祉士の病院実習に関する書籍が、勁草書房から出版されるとのこと。また、『医療福祉総合ガイドブック』もこれまでの不定期改訂から、毎年度改訂に方式を変更したとのこと。こちらも近日中に、医学書院より2007年度版が出版されるとのこと。