中四国地方エイズ拠点病院第2回MSWネットワーク会議(07.2.17-18)

疾患別・分野別SWのうちの1つとも言えよう。小西加保留先生の精力的な活動にはただただ感心するばかりだ。彼女の方法論は、他の疾患別・分野別SWの発展にも十分活用できると思う。 以下、広島大学病院エイズ医療対策室『AIDS Update』2007(70)より転載。


[会議報告] 中四国地方エイズ拠点病院のソーシャルワーカーが集まりました! エイズ医療対策室 ソーシャルワーカー 舩附祥子 【MSWネットワーク会議 プログラム概要】
・講義 「システム理論について」 県立広島大学 大下由美先生 ・「HIV治療の最近の動向」 愛媛大学 高田清式先生 ・「地域における長期療養者への支援」 関西学院大学 小西加保留先生 ・現状報告 各参加者より ・討議 「今後のネットワークのあり方について」 

2007年2月17日~18日に愛媛県松山市で開催された第2回MSWネットワーク会議に参加しました。 これは各県のエイズ拠点病院に勤務するソーシャルワーカーを対象とした会議で、18名の参加があり ました。 討議では、小西先生がこれまでに実施されたHIV感染者と社会福祉制度に関するいくつかの調査結果報告を受けて、寝たきりなどで長期療養が必要となるHIV感染者への支援が主に話題となり、現在の高齢者支援における課題等も踏まえながら検討が行なわれました。 現在の日本におけるHIV感染者は20~50代が多く、そのほとんどが外来通院で治療継続しており、今後この層が高齢化や病状の進行などによって介護が必要な状態になると、ヘルパーや訪問看護などの在宅サービスや、施設サービスなどとの連携が予測されます。 しかし、先の社会福祉サービス利用についての調査報告では、HIV感染を公開して受け入れをお願いするのは、現在難しい状況であることが報告されました。その大きな要因として、病気への理解不足やプライバシー漏洩への対応、感染対策などが挙げられ、これらについては職員への研修が受け入れに有効であることが示されました。 そして、実際に長期療養が必要なHIV患者の地域支援を経験したソーシャルワーカーからは、院内・院外の支援ネットワーク作りが重要であり、拠点病院ソーシャルワーカーに求められる役割はそれらのコーディネートとサポートであると述べられました。 一方で、抗HIV薬が非常に高価であるために、現在の包括医療制度それ自体が、服薬が必要なHIV感染者の介護福祉施設医療機関等の利用に対する大きな阻害要因の一つとなっており、早急な改革が望まれることも論議されました。 一般的に実施されているソーシャルワーカー向けの研修では、HIV感染者支援に関わる話題が上ることはほとんどありません。そのため、今回の会議では患者さんへの対応に関する知識や制度などについてソーシャルワーカー同士で学び、情報を共有できる貴重な場となりました。 また、HIV支援経験がない参加者からは、患者さんの受診があっても、ソーシャルワーカーHIV治療チームの一員として位置づけられておらず、関わりが持てなかった場合もあり、患者さんのメリットとなる社会福祉制度の存在やソーシャルワーカーの役割について病院内で広報し、今後の支援体制の構築に役立てたいという声がありました。それぞれ病院によってソーシャルワーカーの置かれている状況は異なりますが、どのソーシャルワーカーからも、いつかHIV患者さんが来院された時のためにしっかり学びたいという強い意欲を感じました。 今後は患者さんの講演や事例検討、セクシュアリティについての講義などの希望があり、ソーシャルワーカーが実践的な知識を獲得できる場として、この会議の継続が望まれます。


【関連】 ・中四国エイズセンター ・高田昇ほか「エイズ治療の中四国ブロック拠点病院と拠点病院におけるメディカルソーシャルワーカーの役割」『平成9年度厚生省吉崎班研究報告・補遺』1998 ・小西加保留編『エイズとソーシャルワーク』中央法規出版,1997.8 ・兒玉憲一『医療従事者のための援助的コミュニケーションの技法』2000 ・兒玉憲一『HAART時代のHIVカウンセリング』2000