医療法人による特養運営について

昨日、職場の事務員さんが日経新聞を持ってきて「厚労省、特養運営を病院に解禁・長期入院を抑制 」の記事を紹介してくれた。 もともとは、5月18日に開かれた「第4回 介護施設等の在り方に関する委員会」にて資料2「療養病床の転換支援に関し追加的に検討を要する事項」が配布されその中で「2.医療法人による特別養護老人ホームの設置について療養病床の入院患者にとって望ましいと考えられる施設として特養が挙げられることがあるが、現在、医療法人による特養の設置は認められていない。」と示されたことから端を発している。(読売新聞2007年5月19日) この件と関連して2006年7月23日の記事で私は次の様に述べている。 本来であれば、在宅復帰困難な医療依存度の高くない患者の受け皿としては、介護老人福祉施設が適切なのだが、その場合、当該の医療機関は別立てで社会福祉法人を作らなければいけなくなる。その設立コスト(手間と費用)を考えると、現状の医療法人のままで建設可能な老健介護老人福祉施設的に運用すれば、最小限のコストで目的を達成できる。その結果、「在宅復帰を必ずしも掲げていない」老健が誕生することになる。これは是か非かの問題ではなくて、経営者の設立趣旨の選択の結果である。老健は一枚岩ではない。退院調整担当者には、その辺りを見極めて老健を活用して頂きたい。 今回の介護療養病床廃止を背景に法律改定がなされるならば、最初から特養(介護老人福祉施設)に転換あるいは新設する医療法人が増えることになる。これまで、設立コストの面で老健を設置してきたところが多いが、これにより「在宅復帰を必ずしも掲げていない」老健の誕生が幾分かは抑制されることになる。 但し、介護療養病床に勤務していた医療職の雇用の確保という点から言えば、医療職の人員配置が少ない特養ではなく老健を設立して、そちらで継続雇用するという選択がなされるであろう。結局、従来の「在宅復帰を必ずしも掲げていない」老健が誕生する構造が維持される可能性が高い。また、現行の介護報酬の算定構造においても老健の方が特養よりも高いという点が更にその構造を強化することになる。 どんな策でもバラ色ではない。 なお、別の観点からみると今回の介護療養病床廃止を受けて、特養、有老ホーム、老健に転換した場合、それぞれ生活相談員や支援相談員の設置が義務付けられることとなり、結果としてソーシャルワーカーの雇用が増大するということも指摘できる。 介護療養病床時代からソーシャルワーカーを雇用していた場合はまだしも、新規にソーシャルワーカーを雇用する場合には、彼ら・彼女らの技術的支援を職能団体が行うことにより、利用者の権利を守る手助けをする必要がある。そういった視点も今回の一連の動きの中では重要であろう。