地域一般病棟/亜急性期入院医療管理料/医療ソーシャルワーカー

2002年10月、四病協が厚労省に初めて要望した「地域一般病棟」が、本年10月10日付けの『医療提供体制および診療報酬のあり方に関する提案書』で改めて取り上げられている。同提案書によると、「地域一般病棟」の内容は以下の通り。


「地域一般病棟」の機能 <役割> 地域における急性期以降の入院医療、地域医療・在宅療養・介護保険施設の後方支援などの連携型入院を基軸とし、利用者の状態を配慮した医療を提供する。また、後期高齢者医療制度においては、地域連携の中心となる。 <対応疾患> 急性期病棟よりリハビリテーション、病状不安定などの患者を受け入れる。 (post-acute) また、地域医療・在宅療養・介護保険施設の後方支援として、肺炎・脳梗塞再発・骨折など、軽度~中等度の急性期疾患・慢性疾患増悪・繰り返し入院などの患者を24 時間体制で受け入れる。(sub-acute) <人員基準等> 医師・看護師は現行の一般病棟の基準以上とし、病棟または病院単位で運営する。リハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカーを配置する。 <診療報酬支払い方式> リハビリテーション・病状不安定・繰り返し入院などは状態別包括支払い方式、慢性疾患増悪・軽度~中等度の急性期疾患などは疾患別・重症度別包括支払い方式(DPC準拠)とする。
当初の要望から、人員基準に医療ソーシャルワーカーが謳われており、大変ありがたいことである。 この要望を受け、厚労省は「地域一般病棟」に近いものとして、2004年4月から新たな特定入院料に「亜急性期入院医療管理料」(2050点/日)を創設している。同管理料では「在宅復帰支援を担当する者」の人員配置が義務化され、当時医療ソーシャルワーカーの注目を集めた。 厚労省の発表によると「亜急性期入院医療管理料」の届出病院数は、以下の表の通り。2006年7月1日現在、全国にある病院の約1割に相当する病院で届出されていることが分かる。ちなみによく知られている「回復期リハビリテーション病棟入院料」の算定割合は、同年同月値で7.3%であるため、病院単位では、「亜急性期入院医療管理料」の方が届出している病院は多い。(但し、病床数では、「回復期リハビリテーション病棟入院料」が36,057床を数え、「亜急性期入院医療管理料」の病床数の約3倍も存在する。) 別の見方をすれば、全国に「在宅復帰支援を担当する者」が848人存在することを意味している。 表 亜急性期入院医療管理料の届出病院数推移 sub-acte.JPG 「在宅復帰支援を担当する者」の具体的な職種について、厚労省は「平成16年4月診療報酬改定に関する『Q&A』」で次の様に述べている。 Q5.専任の「在宅復帰支援を担当する者」とは具体的にどのような職種が該当するのか。 A5.職種に規定は設けられていない。届出の際、在宅復帰支援を担当する者を決めておく必要がある。 実際に、どの職種が担っているかは公式統計がないため不明だが、四病協の提案からすれば医療ソーシャルワーカーが想定されよう。但し、現実には全病院に医療ソーシャルワーカーがいない、あるいは経験が浅すぎて任せられないという理由から、他職種が担っていることも十分考えられる。 残念ながら、「在宅復帰支援を担当する者」となった医療ソーシャルワーカーによる報告は、私の知る範囲ではみつからず、篠田(2004)による退院調整看護師との関連で取り上げられた論文のみがCiNiiでみつかった。(どなたか、医療ソーシャルワーカーによる報告をご存知の方、教えて下さい。) 次期診療報酬改定において、この辺りがどの様に変化するのか(あるいはしないのか)注目したい。また、是非とも全国の「在宅復帰支援を担当する者」となった医療ソーシャルワーカーの方々からの報告が発表されることを期待したい。少なくとも、愛知県内で担われている方々を呼んで実践報告会をしたら面白いかもしれない。 四病協から差し伸べられた善意に、医療ソーシャルワーカーとして果たしてどんな貢献が出来るのであろうか。 【参考文献】 ・篠田道子「診療報酬の動きのなかでの退院計画--亜急性期入院医療管理料との関係を中心に (特集 退院調整看護師の専任化の意義)」『看護展望』(通号 355)Vol.29, No.9 ,2004,pp.1004-1008 ・武田誠一「亜急性期入院医療管理料を算定する病床に関する一考察」『新潟青陵大学紀要』第6号,2006,pp89-98 ・二木立『医療改革と病院』勁草書房,2004.4

高橋泰ほか『亜急性病床に関する調査報告書』全日本病院協会,2005を同協会へ依頼。(2007.10.29)