研修5日目

前半も修了。体調も問題ないです。あと、敷地内にたぬきが出たそうです。のどかなところだなぁ。


1限 「診療情報と個人情報保護」※タイトル変更 講師:岡本悦司 氏(国立保健医療科学院経営科学部経営管理室長) 【内容】 冒頭、個人情報保護法施行後の余波(過剰反応)について触れた後、国家資格所有者としての守秘義務と通報義務の今日的解釈、公衆衛生と人権、診療情報をめぐる刑罰法規、プライバシー保護と行政の対応動向、診療情報の開示、メーガン法(性犯罪者の個人情報公開)について幅広く解説。 【印象に残った文章・言葉】 ・個人情報保護法(条例)の名称は妥当?個人情報悪用禁止(防止)法(条例)ではないのか。個人情報保護=情報を持たず、集めず、利用せずと誤解するむきも。(p2) ・公衆衛生は究極的には全体主義です。個人の利益よりも集団の利益を優先します。 ・医師は、患者から感染症法1~4類感染症指定感染症を発見した場合、その患者の氏名、生年月日、性別、住所、職業を最寄の保健所長を経て知事へ直ちに届け出る義務がある。また、5類感染症後天性免疫不全症候群、梅毒、マラリア等14疾患)の場合は、年齢と性別を最寄の保健所長を経て知事へ7日以内に知事に届け出る義務がある。但し、氏名、住所、生年月日は届け出る義務はない。(p6)一方、レセプトデータから辿れば個人を特定できてしまう。この当りの制度矛盾は理解に苦しむ。 ・覚せい剤取締法に医師の通報義務はない。 ・「物的証拠は法の適正な手続きに基づいて入手したものでなくてはならず、例えそれが重大な証拠であっても不当な手続きによって入手してものは証拠とみなされない。」とは言い切れない最高裁判例もある。(p11) ・医療従事者行政処分の公表 -医師・歯科医師(1971年~) -看護師等(2000年~) -他医療従事者(2002年~)あんま、マッサージ、指圧師、柔道整復師救急救命士、薬剤師(p16) ・がん登録に法的根拠はないため、医師に届出義務はない。32都道府県が参加している(平成18年8月現在)のみ。韓国は、法律で登録が義務付けられている。なお、疾患によって医師や研究者も本人へのインフォームドコンセントの手続きはまちまちであり課題がある。 ・厚生労働省のHPには、医師等資格確認検索というものがある。このおかげで岐阜の無免許医師が捕まったという事件も発生。医業停止処分を受けている場合は、備考欄にある「*」をクリックすると理由は不掲載だが業務停止期間が掲載されている。停止期間が修了すると「*」は消える。(pp.23-24) ・2007年4月より医師に対する再教育制度が施行された。2007年9月に行われた医道審では、88人の医師等が諮問された。 【感想】 ・簡潔でテンポ良く大変分かり易かった。講師の事情で12:00に講義は終了。「魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えます。」という言葉通り、具体的事例を交えつつ解説してくれた。総論であり、各論の対応策については触れず。 ・医師による行政への通報義務と、それを契機とした医師に対する犯罪捜査は常に緊張関係の中に成り立っている。 ・脳卒中登録は、自治体への情報提供に係る報酬として診療情報提供料(220点)で対応できるとのことであるが、誰が支払うのか? ・医師に対する再教育制度では、どの処分内容(戒告、業務停止)でも団体研修が組まれているが、行政処分を受けた者同士が一同に集まって講義を受けるのだろうか?そうであるならば、極めて強烈な研修である。 ・岡本先生は、自分のイメージよりもずっと若かった。 【評価】 ○ 【参考】 ・地域がん登録の技術支援のページ国立がんセンターがん対策情報センター内)
2限 「タイトルなし」 講師:熊川寿郎 氏(国立保健医療科学院経営科学部部長) 【内容】 11月26日の講義で聞けなかった「3ヘルスケアシステムのパラダイムシフト」について講義。また、gavernance、CSR(Corporate Social Responsibility)、PRI(Principles for Responsible)についても講義。なお、ヘルスケアシステムのパラダイムシフトとは、提供者の論理(経験主義、パターナリズム、画一化、プロセス重視)から消費者の論理(Evidenc-based Medicine、Informed Consent、多様化、アウトカム重視)への転換を意味している。 【印象に残った文章・言葉】 ・CSRとは、義務を超えてより高い目標を定めて社会とかかわること。 ・2002年 欧米内科学会新ミレニアムの医師憲章には、社会正義という言葉が載っている。 【感想】 ・ソーシャルワーカーも医師も、社会正義を目指しているということに驚いた。営利・非営利いずれの組織でも社会に対して関わっていくことが求められていることも合わせると、ソーシャルワークの国際定義も浮世離れしている訳ではなさそうだと思った。 【評価】 ○ 【参考】 ・熊川寿郎「2つのシステムのマネジメント-controlとHarnessing-」『医療経済白書2005年度版』日本医療企画,2005.9(追加資料)
3限 「終末期医療を考える※タイトル変更 講師:林謙治 氏(国立保健医療科学院次長) 【内容】 終末期医療について、講師の事実認識と価値判断にきちんと分けて報告。 【印象に残った文章・言葉】 ・日本で議論されているのは尊厳死である。安楽死を議論しているのではない。安楽死とは、命を絶つこと。尊厳死に熱心な議員は、セットで臓器移植法にも熱心。脳死状態でまだ新鮮な他臓器を如何に移植するかに関心があるようだ。しかし、尊厳死の問題と臓器移植の問題は基本的に分けて議論するべきであろう。 ・脳死は、本人が事前に認めていれば死である。しかし認めていなければ死ではない。死にダブルスタンダードが出来てしまった。これは、意図的な脳死判定による不正を防止しなければと、国会議員から意見があったため。 ・終末期は、疾患によって予後が異なる。1つのルールで対応することは困難。 ○医療の実践倫理 ・医療は100%患者に利益をもたらすものではなく、利益が害を超えることで判断される。 ・害もしくは不必要な過剰医療は暴力である。 ・患者が医療に同意するだけでなく、有益であっても拒否する権利がある(輸血裁判)。 ・終末期において治療の利益と害の分岐点は必ず訪れる。 ・医療の使命を救命だけに限定するならば、医療は究極的に100%失敗することになる。 ・終末期だけの問題ではない。日常的な医療に関する判断の問題が残っている。 ・欧米の様に、相談員制度やPatient Advocateの制度化と配置が望まれるが、日本に導入する場合、SWのみなさんの仕事にそれを入れ込んでいく方が良いのではないのかな。看護師でもいいけど別に仕事があるしね。アメリカではベテランの看護師がやっているが、逆説的だけれども訴訟対策として病院のために患者側に立つ姿勢をアピールしている。そうしないと、訴訟で負けてしまうから。 【感想】 ・講師は、元産婦人科医。講師作成の『終末期がん患者の治療中止・差し控えに関するガイドライン(試案)』については、勉強にはなった。権利擁護の講義やソーシャルワーカーの倫理の講義とオーバーラップしており、記憶の強化にもなった。 【評価】 △ 【参考】 ・日本尊厳死協会(会員数12万人:H19現在) ・国立保健医療科学院内に2007.11.29に現れた、たぬきの写真。 tanuki@niph.jpg
晩は、大学院時代にお世話になった長沼先生に早稲田大学を案内してもらい、生協書店で本を散策。多田富雄『わたしのリハビリ闘争 最弱者の生存権は守られたか』青土社,2007.11を購入。その後、金城庵で天丼、餃子荘ムロにて餃子を食し、先生に別れを告げて、門限ギリギリに寄宿舎へ。先生どうもありがとうございました! 07-11-30_18-41.jpg 長沼先生(早稲田大学社会科学部ロビーにて)
(来週月曜日の予定) 1限 「医療保険介護保険制度の現状と課題」 講師:小林江梨子 氏(国立保健医療科学院経営科学部主任研究官) 2限 「医療経済とソーシャルワーク」 講師:菅原琢磨 氏(国立保健医療科学院経営科学部サービス評価室長) 3限 「他職種とチームワークのあり方」 講師:浅山倫子 氏(東京臨海病院中央施設部医療福祉事業課課長) 晩 第2回老人保健施設支援相談員交流会 ①2007.12.8 加筆 ②2007.12.9 加筆