書籍紹介

副田あけみ先生のblogにて知る。現在第2巻まで発売。以下、岩波書店HPより転載。


『ケア その思想と実践』岩波書店,2008  [編集委員]   上野千鶴子 大熊由紀子 大沢真理 神野直彦 副田義也 A5判・並製カバー・平均240頁 編集にあたって  介護保険制度がスタートして8年.「よいケア」を実現するにはどうすればよいのか,が今問われています.本シリーズは,利用者,ワーカー,事業者,制度,政策のそれぞれの側面から,介護保険以降の新しいケアの経験にアプローチする試みです.よいケアが供給されるためにはどのような条件が整えられなければならないのか.いかなる事業や運営が望まれるのか.それを実現するためにいかなる持続可能な制度や政策が求められるのか.そのためには何が問題で,何が必要か.  介護保険はケアする側にもケアされる側にとってもまったく新しい歴史的経験でした.その中には制度と運用上の問題が山積しています.介護保険利用者の急増とそれに伴う保険料負担と社会保障費の大幅アップ.改訂に伴う度重なる現場の混乱と,財政悪化に伴う給付水準の引き下げ.また,支援の実効性への疑問.制度の外に置かれた人々の問題,等々.ここには,日本社会の課題が凝縮して現れています.  本シリーズで提示されるケアの理論と実践は,高齢者はもとより,障害者,医療,育児支援等のケア全般についても示唆が得られるよう,応用可能な問題提起をめざします.専門家の批判にも耐えうる内容的な水準を維持しつつ,介護の現場に関わる実務家や介護の利用者や家族など一般の読者の期待にもこたえられるものを提供したいと考えます.ここで示されるケアの理論と実践とは,高齢者のみならず,障害者,患者,子どもなど,依存的とされる存在をうちに抱える社会にとって,汲めども尽きせぬ知恵の泉となることでしょう.    2008年1月         編集委員一同
○各巻 もくじ 【第1巻 ケアという思想】   ・ケアという思想 大熊由紀子  ・福祉財政の思想――社会的連帯のための 神野直彦  ・青い芝のケア思想 副田義也  ・情報アクセス・コミュニケーション・ケア  ――聴覚障害者の立場から (障害者欠格条項をなくす会) 臼井久実子  ・本を読む権利はみんなにある (静岡県立大学)石川 准  ・逆転の発想――問題だらけからの出発 (北海道医療大学向谷地生良  ・リハビリテーションという思想 (初台リハビリテーション病院)石川 誠  ・介助するとはどういうことか  ――脱・家族化と有償化の中で (東京大学)市野川容孝  ・ブリコラージュとしてのケア (生活とリハビリ研究所三好春樹  ・有限性という常套句をどう受けるか (立命館大学立岩真也  ・自立の神話「サクセスフル・エイジング」を解剖する (東京大学)秋山弘子  ・生きる権利・死ぬ権利――だけでなく (立命館大学)大谷いづみ  ・こんなになってまで生きることの意味 (仙台往診クリニック)川島孝一郎  ・老いるという経験 (浜田クリニック)浜田 晋 【第2巻 ケアすること】  ・ケアすることとは――ケアワーカー論 副田義也  ・介護の専門性 (理学療法士・介護アドバイザー)高口光子  ・「よいケア」とは何か  ――来るべき「ふつうのケア」の実現のために (東京大学)中村義哉  ・ケアワーカーの働き方とその意識  ――人手不足のなかで (東京大学)堀田聰子  ・感情労働としてのケア (国際基督教大学)田中かず子  ・ケアする性  ――ケア労働をめぐるジェンダー規範 (群馬パース大学)内藤和美  ・ケアワークにおけるストレス (ジャーナリスト)小笠原和彦  ・縛り放題! 閉じ込め放題!   あぁ懲りない国ニッポン (ジャーナリスト)大熊一夫  ・ケアをめぐる困難と厄介さについて (立命館大学)天田城介  ・ウソつきは認知症ケアのはじまり,なのか?  ――「認知症とされる」人とどうコミュニケーションするか (千葉大学)出口泰靖  ・認知症を生きる人たち (精神科医)小澤 勲  ・コミュニティ・ケア――幻想と現実 (元東京都立大学)星野信也

【第3巻 ケアされること】  ・ケアされるということ――思想・技法・作法 上野千鶴子  ・おんながケアされること (日本ALS協会)橋本みさお  ・誰がお金を払うのか――ダイレクト・ペイメント論 (立教大学)岡部耕典  ・ケアされる当事者がふるう権力 (金城学院大学)時岡 新  ・成年後見制度  ――誰が要介護者の代弁をするのか (高村浩法律事務所)村 浩  ・認知症者はどうケアされたいのか (認知症介護研究・研修東京センター)永田久美子  ・当事者運動の統合に向けて (全国自立生活センター協議会)中西正司  ・知的障害者の自立 (大阪府立大学)三田優子  ・ピアカウンセリングの思想  ――当事者による当事者介護 (CILくにたち援助為センター)安積遊歩  ・ケアされる身体 (劇団「態変」)金満里  ・夫の母を介護した15年の経験から (日本向老学学会)高橋ますみ  ・専門家が当事者から何を学ぶか (原宿カウンセリングセンター)信田さよ子 【第4巻 家族のケア 家族へのケア】  ・家族のケア,家族へのケア (高齢社会をよくする女性の会)樋口恵子  ・「人間性」の発見という希望と隘路  ――認知症の人を介護する家族のアイデンティティ信州大学)井口高志  ・何のための遺留分制度か?  ――戦後民法改正に注目して (学習院大学阿部真大  ・ケアする権利/ケアしない権利 (国立保健医療科学院)森川美絵  ・女が家族介護者を引き受けるとき  ――ジェンダーとライフコースのポリティックス (北海道教育大学)笹谷春美  ・高齢者虐待と養護者支援  ――増大し続ける実子(とりわけ単身子)加害者問題を中心として (松山大学)春日キスヨ  ・ケアをめぐる家族の葛藤 (国際医療福祉大学竹内孝仁  ・介護家族を支える (認知症の人と家族の会)高見国生  ・家族介護は軽減されたか (東京家政学院大学)袖井孝子  ・家で死ぬ条件 (グループホーム福さん家)宮崎和加子  ・障害児家族の権利 (信州大学)玉井真理子 【第5巻 ケアを支えるしくみ】  ・ケアを支えるしくみ――ビジョンと設計 神野直彦  ・サービス格差に見るケアシステムの課題 (日本福祉大学)訓覇法子  ・自治体改革と介護保険日本大学)沼尾波子  ・自治体福祉の光と影 (龍谷大学)大友信勝  ・ケアを支える国民負担意識 (東京大学武川正吾  ・ケア市場化の可能性と限界 (お茶の水女子大学平岡公一  ・介護保険の通信簿 大熊由紀子  ・国際比較の中の介護保険制度 (ミシガン大学)John C. Campbell  ・比較高齢者ケア・レジーム論 大沢真理  ・ケアマネージャー論――制度と現実 (淑徳大学)結城康博  ・求められる介護教育 (淑徳大学)山下幸子   【第6巻 ケアを実践するしかけ】   ・福祉の最適混合を目指して 大沢真理  ・地域でターミナルケアを支える (聖ヨハネ桜町病院)山崎章郎  ・先進ケアを支える福祉経営 上野千鶴子  ・NPOの実践から見えるもの (NPO法人サポートハウス年輪)安岡厚子  ・介護NPOの達成と課題 (九州大学)安立清史  ・生協の介護事業 (社会福祉法人生活クラブ)池田 徹  ・介護施設の福祉経営論 (佛教大学)永和良之助  ・ケア産業論 (慶應義塾大学)田中 滋  ・ケアの雇用管理――人材活用と能力開発 (東京大学佐藤博樹  ・介護事業と第三者評価 (NPO法人播磨地域福祉サービス第三者評価機構)河原正明  ・ケアのための空間 (大阪市立大学)三浦 研  ・市民セクター福祉を育てる (千葉県我孫子市前市長) 福嶋浩彦  ・ともに生きる社会と福祉の町づくり (埼玉県東松山市総合福祉エリア)曽根直樹  ・住民参加による地域福祉の実現 (長野県栄村村長)高橋彦芳