あいち医療情報ネットの可能性

6月8日の記事で、以下の論文を取り上げた。 ・「特集 ネットで詳細な医療機関情報を入手-医療機能情報提供制度の運用開始-」『週刊 社会保障』№2481,2008,pp.36-41 種類:制度解説 医療情報提供制度とは、「病院、診療所及び助産所(以下「病院等」という。)に対し、当該病院等の有する医療機能に関する情報(以下「医療機能情報」という。)について、都道府県知事への報告を義務付け、都道府県知事は報告を受けた情報を住民・患者に対し分かりやすい形で提供することにより、住民・患者による病院等の適切な選択を支援することを目的」として創設された。 根拠法は、改正医療法第6条の3第1項、「病院、診療所又は助産所(以下「病院等」という。)の管理者は、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に報告するとともに、当該事項を記載した書面を当該病院等において閲覧に供しなければならない」である。 平成18年の医療法改革で創設され、平成19年4月から施行されている。全国全ての医療機関(病院、診療所、歯科診療所、助産所)に対し、医療機能に関する一定の情報を都道府県に報告することが義務付けられた。年1回の更新。厚生労働省は、平成19年度に基本情報の掲載を、平成20年度中に全情報の掲載を各都道府県に依頼している。 愛知県では、「あいち医療情報ネット」として平成20年3月24日から運用が開始されている。 さて、具体的な中身であるが特徴として次の5点が挙げられる。 ①当該医療機関の病床種別が分かる 各医療機関ごとに独自のHPを解説しているところもあるが、病床種別(一般、療養、精神、結核感染症)が不明であることが多かった。 ②等が医療機関の平均在院日数が分かる 平均在院日数の定義は、「報告する年度の前年度の【在院患者延数/(1/2×(新入院患者数+退院患者数))】」となっている。ちなみに病床種別ごとに掲載されており、病床の回転状況が推測できる。より即物的に言えば、どれだけ入院させてもらえるかの目安ともなる。但し、重症の患者を積極的に受け入れている医療機関ほど、急性増悪により急性期病院へ再入院となる可能性が高いため、見かけ上平均在院日数が短くなることもありうる。 ③病院までの主な利用交通手段 クライエントに医療機関の情報を提供する際、特にお年寄りの場合車ではなく公共交通機関を利用する場合が多い。そのため最寄の駅等が掲載されていると説明がし易い。 ④医療ソーシャルワーカー等の配置人員が分かる 「医療に関する相談に対する体制の状況」という項目があり、この項目の定義は、「医療に関する相談窓口を設置している場合の、窓口対応を行う医療ソーシャルワーカー等の相談員の人数(※非常勤も含む。非常勤を含む場合には常勤換算により記載)」となっている。これは大変画期的なことであり、病院報告や医療施設調査では、中核市レベルまでの合計としてのMSW数は掲載されいているが、具体的にどこの医療機関に何人MSWがいるのかは分からなかったため、本制度によりそれが明らかとなる。本制度を創設する段階で、どういう議論を経てMSWの配置人員を掲載しようとなったかは不明であるが、いずれにしろインパクトは大であろう。 但し、医療ソーシャルワーカー等と表現されていることから、MSWでなくとも医療に関する相談を業としている相談員と、医療機関側が認識していれば誰でも良いため、正確な意味でMSWの配置人員が分かるわけではない。実際、私の職場の近隣の療養病院では、MSWがいるとは聞いたことがないし、電話で応対したこともないが「2名」と記載されており、情報の信憑性が疑われた。やはり「等」はまずいでしょう。 ⑤1日当たりの差額ベッド代が分かる 当該医療機関の選定療養のうち『「特別の療養環境の提供」に係る病室差額料が発生する病床数及び金額』において、いわゆる差額ベッド代が詳細に記述されている。療養先を探す際に、一つの判断材料となりそうである。但し、一般的に各医療機関によって自己負担項目や額はかなり異なるため、この指標のみで入院費用の多寡を判断することは出来ない。(例:オムツ代) また、使ってみて困った点は次の2点であった。 ①情報の欠損 全ての医療機関が掲載されているということだが、一部掲載されていない医療機関も存在する。ちなみに私が所属する医療機関,も何故か掲載されていなかった。 ②検索のしづらさ 通常の診察を受ける分には本システムでよいが、医療機関名検索が出来ずピンポイントで調べることが出来ない。また、「どこの病院が、いくらで、どれだけの期間を入院させてくれるのか」というのが本当に知りたい情報である。そういった意味では、病床種別による検索や別途自己負担細目も付加してもらえると、検索効率は上がると思われる。