浅野正嗣先生の言葉

昨日は、愛知県医療ソーシャルワーカー協会老人保健施設ソーシャルワーク部会主催の平成20年度支援相談員基礎研修(第1回)が行われた。 講師の金城学院大学教授浅野正嗣先生の言葉の中で印象に残った話を忘れないうちに書きとどめておこうと思う。 専門職性と経営 ・医師や看護師は、例え経営状況が悪くてもあくまでも専門職性は保つ。しかし、ソーシャルワーカーは同じ状況になると専門職性を放棄してしまう。この違いは何処から来るのか。 火消しの話 ・「経験の段階に応じて成長する」ということが大事。自分で解決出来る問題なのか、解決できない問題なのかを見分けることが必要。 ・そのことの例として私がいつも話す例が「火消し」の話。小さな火であれば足で消すことが出来る。しかし、てんぷら油を足で消すことは出来ない。火=水で消えるという基本知識を知っていても、油の火に水をかけるとどうなるか。水では消えないし、はじける危険性が高い。油の火には消火器がいる。つまり、アセスメントが適切でないと適切な方法論が選べない。自分が持っている方法を変える必要がある。誤ったアセスメントとと誤った方法論では、結果がとんでもないことになる。 ・(油の火は消火器で消すということが分かっても)では、ビルの8階で火事が起きたらどうするか。今度ははしご車が必要になる。 ・では、高層ビルではどうか?はしご車では届かないから、今後はヘリコプターが必要になる。 ・対人援助にも初級・中級・上級と段階がある。一つ一つ基礎を固めていくことが大切である。 (コメント) ・「経験の段階に応じて成長する」という言葉は、自分なりに解釈すると、最初からベストな解決はできるわけではない。自分の成長段階に応じた見立てと持っている解決方法を自覚する必要があるということ。解決の限界=ソーシャルワーカー一般の能力の限界ではない。それは私自身の成長段階での限界。別の見立てや別の解決方法を、段階的に習得するという視点が必要。研修を組む場合、ただ経験年数に応じた研修を組むだけでなく、獲得目標を設定した上で実施する必要があろう。大変参考になった。 ファーストニーズとセカンドニーズ ・例えば、「いつからだったら入所できますか?」という質問が相談員にあったとする。それは、あくまでもファーストニーズである。しかし、入所したいという質問の背景には、親の介護において何らかの生活問題が生じている訳で、そこにセカンドニーズがある。ファーストニーズだけをニーズと捉えてはいないか。対人援助ならぬ対物援助となってはいないか。 【備考】 ・心理社会的問題をアセスメントする際、DSM-Ⅳ-TR(2000)が参考になる。具体的項目は、「心理社会的および環境的問題」。 【研修中話題にあがった文献】 ・奥川幸子『未知との遭遇』三輪書店,1997 ・奥川幸子『身体知と言語中央法規出版,2007 ・渡部律子『基礎から学ぶ気づきの事例検討会中央法規出版,2007 ・フランシス・J・ターナー(米本秀仁監訳)『ソーシャルワーク・トリートメント相互連結理論アプローチ(上)中央法規出版,1999 ・フランシス・J・ターナー(米本秀仁監訳)『ソーシャルワーク・トリートメント相互連結理論アプローチ(下)中央法規出版,1999 2008.10.11 加筆