激昂する佐藤敏信保険局医療課長

中医協という場で、エキサイトすることもあるんですね。(赤文字は、筆者が加工。)
「10月22日の中医協」『CBニュース』2008.10.23 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は10月22日、総会(第135回)と診療報酬基本問題小委員会(第124回)を開催した。総会では、来年1月から開始する「産科医療補償制度」の加入を促進するための診療報酬上の対応(ハイリスク妊娠管理加算・同分娩管理加算の施設基準見直し)について議論したが、意見がまとまらず継続審議となった。基本問題小委員会では、「これまでのDPCの評価」をテーマに議論し、医療の標準化や質向上などが今後の課題であるとの認識で一致した。(新井裕充) 【関連記事】 医療機器103件の保険適用を承認―中医協 臨床検査3件の保険適用を承認―中医協 「献血グロベニン-I-ニチヤク」を出来高算定に ハイリスク妊娠加算の要件見直し、継続審議に DPC導入、医療効率化などで効果―基本小委  総会の議題は、▽医療機器の保険適用 ▽臨床検査の保険適用 ▽DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応 ▽産科医療補償制度創設に係る診療報酬上の対応 ▽医療経済実態調査の実施 ▽その他―の6点。  「医療機器の保険適用」では、3テスラのMRI装置「MAGNETOM ベリオ」(シーメンス旭メディテック)など、医科と歯科合わせて103件の医療機器の保険適用を承認した。  ※ 詳しくは、【医療機器103件の保険適用を承認―中医協】をご覧ください。  「臨床検査の保険適用」では、乳がんを主な対象とする新たな測定項目「サイトケラチン(CK)19mRNA」(シスメックス)など3件の保険適用を承認した。  ※ 詳しくは、【臨床検査3件の保険適用を承認―中医協】をご覧ください。  「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応」では、「天疱瘡(ステロイド剤の効果不十分な場合)」の効能が追加された医薬品「献血グロベニン-I-ニチヤク」を、DPCの包括算定から外し、出来高算定とすることを了承した。対象となる診断群分類は、「MDC108 皮膚・皮下組織の疾患」。  ※ 詳しくは、【「献血グロベニン-I-ニチヤク」を出来高算定に】をご覧ください。  産科医療補償制度創設に係る診療報酬上の対応」では、来年1月から開始する「産科医療補償制度」の加入を促進するための診療報酬上の対応について議論。厚労省は、「ハイリスク妊娠管理加算」と「ハイリスク分娩管理加算」の施設基準に、同制度と同一の補償制度の実施を追加することを提案したが、診療側と支払側の双方から反対意見が出たため、継続審議となった。  診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は「制度自体には賛成」としながらも、「民間医療保険への加入が公的医療保険の加算の要件になるのは、診療報酬の在り方としておかしい」と繰り返した。一連の会議終了後、保険局の佐藤敏信医療課長が西澤委員に対して激高する一幕もあった。  同制度の開始に伴う「出産育児一時金」の引き上げを承認した9月12日の「社会保障審議会医療保険部会」では、藤原淳委員(日本医師会常任理事)が同制度への加入促進策として、「診療報酬の要件を加えるなど、もう少し強い対応を検討しているか」と質問していた。このため、佐藤課長は「委員から診療報酬上の対応を求める声があったから提案した。もし反対するなら、その時に言ってほしい。今ごろになってひっくり返すのはどうか」と反論した。  ※ 詳しくは、【ハイリスク妊娠加算の要件見直し、継続審議に】をご覧ください。  「医療経済実態調査の実施」では、2010年度診療報酬改定の基礎資料にするために実施する「医療経済実態調査」について、厚労省が示したスケジュール案を了承した。09年6月を「調査月」として、8-9月に調査票を集計・分析し、速報値を10月下旬の「調査実施小委員会」と「中医協総会」に報告する予定。  日医は、「6月単月の調査」であること、調査対象が少ないことなどをあらためて指摘した上で、「決算ベースでの把握」などの「改善案」を示した。  「その他」では、老人保健施設老健施設)での医療サービスに関する資料が厚労省から示された。9月24日の前回総会で、委員から「老健施設内の医師が対応した場合と、外部の医師が対応した場合を整理してほしい」との要望が出たことを受けたもの。 ■診療報酬基本問題小委員会(小委、委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)  前回の小委(7月16日開催)に引き続き、今後のDPCの在り方について意見交換した。厚労省は前回、▽これまでのDPCの評価 ▽DPCの適用がふさわしい病院 ▽新たな機能評価係数の設定 ▽調整係数の廃止―の4つの検討項目を示している。今回は、「これまでのDPCの評価」がテーマになった。  意見交換に先立ち厚労省は、「DPCの評価」に関する資料を提示し、▽平均在院日数 ▽再入院率 ▽転帰(治癒・軽快) ▽DPC対象病院での診療状況―について説明した。厚労省は、「平均在院日数が短縮し、病院間のばらつきも縮小」「再入院率の上昇は、がんの化学療法が大きな要因」「治癒が減少して軽快が増加しているのは、急性期病院の医療の在り方の変化が原因」「DPCの導入で医療の質は低下していない」などの考えを示した。  厚労省はまた、「DPCに係る(特定)共同指導の実施状況および制度運用の改善」について説明。06年度に指導した医療機関は23施設で、前年度から7施設増加しているものの、指導したDPC対象病院は11施設で、前年度から5施設減少している。厚労省は、「指導の結果、DPCに関する診療報酬請求の疑義により、監査に移行した医療機関はなかった」と報告した。  続いて、診療側は7人全員の連名で「DPCに関する方向性について」と題する意見書を遠藤会長あてに提出。診療側は、▽急性期病院の診療報酬は、DPCと出来高払いが2本柱 ▽急性期病院のコストを適切に反映 ▽DPCと出来高払いの適切な評価 ▽一定のルールの下での自主的なDPCの辞退―の4点を要望した。  意見交換では、委員から「医療の効率化」「透明性」「標準化」「質向上」「医療経営への影響」など、さまざまな観点から意見が出された。議論を終えて遠藤委員長は、「DPCの導入により、医療の効率化、透明化については一定の効果が認められたと考えられるが、医療の標準化や質向上など、より総合的な視点からの検証、分析が今後必要であるというまとめでよろしいか」と提案し、了承された。  ※ 詳しくは、【DPC導入、医療効率化などで効果―基本小委】をご覧ください。  予定の終了時間を40分以上オーバーしたため、この日に予定していた「診療報酬改定結果検証部会」は11月5日に延期になった。 【前回までの中医協 9月24日の中医協 8月27日の中医協 7月16日の中医協 7月9日の中医協 6月25日の中医協