研修担当者の心得

研修担当者の心得について、現時点での私の理解を文章化しておく。不十分であるかもしれないが、その限界点を明らかにしておくことも、今後理解を深める上で有用と思うため。 講師選定の基準 ・研修テーマが理論的なことであれば、教員を講師に。実務的なことであれば臨床家を講師に。但し、実務研修において臨床家に実践報告をして頂いた後、教員にコメントをもらうという方法も良い。演繹的ではなく、帰納的なコメントの方が、臨床家は受け入れやすい。即興でコメントすることで教員の力量も試される。中には理論的なことと実務的なことの両方に長けている講師もいるため、日頃からそういった人材を探す癖を研修担当者が身につける必要がある。 ・臨床家の中から講師を養成する作業を、日本協会の様に行わないと、いつまでたっても、「教員から教えて頂く」という研修スタイル「だけ」しかレパートリーが無い。また、漫然と臨床家に報告を依頼すると、現場至上主義が横行したり、お互いの傷の舐め合いとなったりして、悲惨な研修になりかねない。研修の目的やねらいを明確にして、講師と研修担当者の間で共有することが必要。臨床家が臨床家を養成する、という他職種と同じことが一日でも早く出来るようにしたい。また、経験年数が10年以上の臨床家は謙虚さ「だけ」から脱却し、講師として依頼を受ければ、これに積極的に応じ、社会的に後進を育成していくという覚悟を決める必要がある。 社会福祉援助に関する研修テーマを選定する場合 社会福祉援助に関する研修テーマでは、臨床経験のある教員とそうでない教員の特性を研修担当者がよく吟味した上で選定すること。どちらが優れているということではなく、どちらがよりそのテーマの講師として適切かどうかで判断する。 講師選定の方法 ・そもそも研修担当者だけで講師の選定をするだけではなく日本協会の講師紹介(派遣)事業をもっと積極的に活用してもよいのではないだろうか。 1日研修(10:00開始16:30終了とした場合)の費用 講師代:(8,000円/1時間)×6.5時間=52,000円 交通費:実費 ただ、地理的に離れたところに在住の講師と、研修内容について協議することは至難の業である。顔が見えないところではどうしてもお互いの意図にズレが生じてしまう。講師と研修担当者の契約書ともいえる企画書をたとえ入念に作成したとしても必ずズレは生じる。 参加者と研修内容のレベル分けの峻別 ・初任者研修や中堅者研修という様に参加者を分けて研修を提供することは出来ているが、果たして研修の中身までレベルを分けることができているかというと疑問。参加者のレベルに応じて、研修内容のレベルを分けるということを、研修担当者は意識する必要がある。 テーマ選定の基準 ・奇をてらったテーマではなく、あくまで実務に即した真面目なテーマを選定すること。研修が質・両共にしっかりした上で、トピック的に行う分には良い。 専門的であることへの警告 ・他職種の研修制度からも謙虚に学び、決して「たこつぼ」に入らないよう意識すること。 講師への研修担当者のポジション ・講師への過度な配慮は、結果的に無配慮に等しい場合がある。研修担当者として言うべきことはきちんと講師に伝え、理解を得ることが時には必要。 ワークショップの注意点 ・ワークショップは、参加者がお互いに発言しやすい環境を作り出すことができる。しかし、臨床家同士が集まると、どうしても無意識のうちにテーマと離れ日頃の悩みや愚痴ばかりを話し出してしまう。そういったことは懇親会にまわして、あくまでテーマに沿った話し合いが出来るよう、研修担当者、講師、グループ内の司会者、参加者は意識しなければいけない。 ①A先生より、字句の誤りについてご指摘を頂きましたので修正しました。(2009.1.27)