鶴舞散歩(09.1.27)

・堀真奈美「イギリスの高齢者ケア」『健保連海外医療保障』№80,2008,pp.22-26 種類:総説 ※著者は、東海大学准教授。 【印象に残った箇所を要約】 ・地上自治体のソーシャルケアサービスは、ミーンズ・テスト(資産調査)とニーズ判定が行われることが前提となっている。ニーズ判定は2003年より全国統一基準(FACS)に従って行われているが、受給要件は自治体によって異なる。(p22) ・Fair Access to Care Services(FACS)は、高齢者自身のADLや生活環境および家族等の状況に応じて、Critical(重度)、Substantial(高度)、Moderate(中度)、Low(低度)に分けられる。Direct Payments(直接現金給付)やindividual budgets(個人別予算制度)の2つの方式がある。(p25) ・マスコミは、入院治療の必要がある人の病床がブロックされているという意味で、ベッドブロッキングとしていたが、この言葉のもつ否定的な意味合いから、公式には、「退院遅延」(delayed discharges)という用語が使用されている。(p25) ・2003年10月には、急性期病床における退院遅延対策として退院法(Communituy Care(Delayed Discharge etc)Act2003)が制定され、2004年4月から導入された。この法律により、自治体は、退院日が決定した患者に対し退院を可能にするための手続きを2日以内に行うことが義務付けられた。自治体が患者の退院後の環境を整備できないことにより、退院遅延が生じる際は、1日当り約100ポンド(ロンドンでは120ポンド)(1ポンド=約120円)の罰金を負担しなくてはならないことになった。このようなペナルティーを課す反面、退院遅延において有効な対策をとった自治体に対し、NHSから年間1億ポンドの補助金を出すという優遇政策も行った。この補助金政策は2003年度から2005年度までの3ヵ年の予定であったが、2007年度までさらに2年延長された。(pp.23-24) ※退院調整を行う部署・職種は国によって異なること、また地方自治体が受け皿を作るためのインセンティブを国が政策として実施したことが大変興味深い。日本ではあくまで退院調整担当者の責任!? 【関連】 ・岡久慶「2003年コミュニティ・ケア(遅延退院その他)法」『外国の立法218』2003.11,pp.145-150 ・門田直美第1章:イギリスの高齢者地域ケア施策の変遷と現在」『イギリスにおける認知症高齢者ケアマネジメント』2005 ・『矢部久美子のイギリス福祉情報№29 〈78〉自治体の「退院手続き遅れ」に対する罰金開始』 ・猪口雄二「病院経営」『病院』68巻1号,2009,pp35-38 種類:総説 ※著者は、医療法人財団寿康会理事長 ・池上直己「組織と人材」『病院』68巻1号,2009,pp.39-42 種類:総説 ※一部文章を加筆(2009.1.28)