「最近の転院問題-その背景と現状とMSWの役割、課題を考える(上)」『社会保険旬報』№2378,2009.2.11,pp.6-12

2/8の記事で、『転院問題を考える会』 による座談会が、『社会保険旬報』誌に掲載される予定である旨について取り上げた。早速、2/11の『社会保険旬報』誌に掲載されていたので、感想を述べたいと思う。 ○印象に残った言葉 ・ここ数年は、在院日数の短縮化だけではなく、稼働率を上げることにもかかわっています。(p9) ・東京は老人保健施設に入るのに2ヶ月待ちは当たり前(p10) ・一般病棟では、当院でもどちらかというと平均在院日数より稼働率が重視されています。(p12) ○本座談会を読んで思ったこと、考えたこと 出席者の一人である、東京医科大学病院のMSW品田雄市氏も述べていたが、地域連携パスやクリティカルパスといったシステムが構築されていく中で、そういったシステムから外れた患者を支援していくことがMSWの役割の一つにあると思った。ともするとルーティン化した制度から逸脱者が発生した場合、組織の第一線のスタッフは制度の欠点を探るのではなく逸脱者の欠点を探ってしまう。また、「こういうものだ」という組織の都合を患者に暗に押しつける。 制度の谷間にこぼれ落ちた人々に援助し、ニーズに対応した制度に結びつけたり、また新しい制度を作りだしたりするのがソーシャルワーカーの役割だと教えられてきた。そういった意味では、逸脱者と呼ばれてしまう患者を具体的な個人として認め、接し、治療を受ける権利や社会保障制度を活用する権利を保証することは至極もっともな業務だと思う。 昔、大学院のある先生が学会で次の様にコメントし、そのことがとても印象に残っている。 「ソーシャルワーカーは制度の無いところで困っている人を発見し、その人のニーズに合ったしかるべき専門家を連れて来る。制度ができあがりニーズを解消できたら、ソーシャルワーカーは役割を終える。そして、また次の所に移っていく。」 翻って、パスで言われるところのバリアンスにMSWは関わり、その中で多少工夫したら制度に乗れそうなグループを発見し、制度に再統合する。そのグループが制度に乗るとMSWの役割は終わり、また次のグループを見つけ出す。疾病構造や、社会環境、医療・介護保険制度が変化していく中で、この作業は恐らくずっと続くであろう。組織の論理や医療政策の論理で、患者に対してバリアンス、逸脱者といったレッテルを貼り、攻撃するのではなく、限界はあれど常に患者の権利を保証するといった視点からMSWは関わる必要があると思った。