第4回愛知県医療ソーシャルワーク学会を終えて

昨日は、第4回愛知県医療ソーシャルワーク学会でした。以下、当日の感想を述べます。 午前の講演は、国立保健医療科学院の岡本悦司先生。 テーマは、「医療制度改革と医療ソーシャルワーカーへの期待」。 医療費抑制政策として以下の4本柱を中心に講演されました。 ・医療保険都道府県単位の再編 ・特定健康診査、保健指導による生活習慣病対策 ・療養病床再編による在院日数短縮 ・新医療計画によける4疾病、5事業の医療連携 【印象に残った言葉】 ・岡本悦司「個別健康支援プログラムは医療費を減らすか?--国保ヘルスアップモデル事業のシステマティックレビュー」『日本公衆衛生雑誌』Vol.55, No.12 ,2008, pp. 822~829の調査結果では、確かに医療費削減出来ていた市町村もあるが、一方で医療費が膨張しているところもあった。よく医療費削減が出来たところだけを紹介することがあるが、そうでないところは取り上げられない。 ・平均在院日数については、精神病床の平均在院日数が最も長い。一般病床は、全国平均と最も低い長野県で比較してもそんなに差がある訳ではない。私が療養病床を持つ院長だったら、「何故、療養病床だけがこんなに厳しく言われなきゃいけないんだ。精神病床については何も手つかずなのに不公平じゃないか」と言いたい。 ・医療費の財源問題について、二木先生や権丈先生の仰っていることには賛成。確かに国民の社会保障費用負担は国際的に見て高くない。まだ上げる余地があるという意見はその通りだ。しかし、国の抱えている借金が問題。例えば、住宅ローンを抱えている人に負担増をお願いするのと、住宅ローンがない人に負担増をお願いすることは意味が異なる。借金を国際水準並みに減らすことが出来れば、私は社会保障財源増について賛成と考えている。yes,butである。 ・(医療費適正化計画)5ヵ年計画と聞くと、ロシアのスターリン政権下の5ヵ年計画を思い出す。計画が達成されなかった場合、担当者は相当にひどい粛清を受けた。日本ではその様なことが起きなければ良いのだが・・・。 ・従来の医療計画は病床規制計画であったように思う。新医療計画ではようやく本当の意味での計画が出来るのではないか。具体的は、4疾病・5事業に代表される医療連携である。医療ソーシャルワーカーの皆さんには、是非この分野において活躍して頂きたいと思っている。


午後は、分科会。私は、第2分科会「老健分野のソーシャルワーク」(座長:眞野潤 ケアプランニングセンター豊明・豊明老人保健施設)にて報告させて頂きました。私の研究テーマは「社会資源データベースを用いた社会資源情報標準化の試み」でした。 大変盛況で40名定員の会場が発表時には立ち見も出るくらいで、熱気溢れる分科会でした。 印象的だったのは、学生さんの参加(病院ではなく、老健の話を聞こうと思ったところがエライ!!)があったことや、イギリスの中間ケア(Intermediate Care)についてご研究されている児島美都子先生に参加頂けたことです。 各発表については、事例報告や職場内における支援相談員業務確立のための方策、支援相談員研修プログラムの開催報告、地域で利用してもらえる老健への転換を図った報告、業務開発など多彩な内容でした。 病院とは異なり、クライエントや家族との関わりが比較的長く保てることの強みを十分に活かした実践をされていらっしゃる。 座長からは、「明日からの業務に直接参考となる報告が多かったです。」と全体講評を頂きました。 これまで、愛知県医療ソーシャルワーカー協会の会員でありつつも所在無げだった老健支援相談員にとって、今回の分科会は大変意義深いものとなったのではないでしょうか。これがはじめの一歩ですね。この勢いを絶やさず、継続されることを強く望みます。 20090228132839.jpg 総評として、今回学会参加者数が過去最高だったとのこと。また、抄録提出段階で査読制度が導入され、一定の質の担保に向けた取り組みが始まりました。回を重ねるごとに発表水準が上がることを期待しています。 但し、そのためには研究方法に関する研修を臨床家の中から講師を選出して実施することが重要だと思います。是非、そういった研修を次年度以降の研修プログラムに加えて頂きたい。そうすれば、査読制度も含め複線的に発表水準の質向上の仕組みが徐々に出来上がっていくように思います。 学会終了後の懇親会では、児島美都子先生から「地域と病院を結ぶのは老健。とても大切な存在。みなさんがやりたいと思うソーシャルワークを大いにおやりなさい。ただし、方策を持って、根拠立てて、実行していくことが大事よ。」と貴重なお言葉を頂きました。他にも現在取り組んでいらっしゃるご研究に関するお話や幼少時代の思い出についてお話を伺いました。 今回の学会の成功にあたって、学会運営委員のみなさんのご努力に深く感謝の意を表したいと思います。お疲れ様でした。