「60歳未満で退職・失業 年金保険料で『特例免除』」『読売新聞』2009年7月15日

国民年金保険料の特例免除制度。60才未満、退職、失業。免除期間は、最長で退職した翌月から2年間、全額が免除された期間の年金額は保険料全額を納めた場合の3分の1として計算されていたが、2009年4月分から2分の1に引き上げられた。 憶えておこう。
緩やかな所得制限審査
市区町村の担当部署では、特例免除に関する資料を配布している(東京・江東区役所で)

 60歳未満で会社を退職か失業した場合、企業の厚生年金から国民年金への変更が必要だ。その際、収入がなくなるなど、経済的な理由で保険料を支払えない場合、特例免除を受けることができる。所得の制限はあるが、審査は緩やかで申請者にとって利点が多い。6月の法改正で、さらに有利な内容になっている。  新潟県内の男性(35)は今年3月、福祉関係の会社を退職し現在、求職中。4月に厚生年金から国民年金に切り替えるために地元の役所を訪れ、特例免除の制度を教えられた。離職票や年金手帳を提示して申請し、1か月半後に免除が認められた。月額保険料1万4660円の納付が免除され、「出費を抑えたかったので助かりました」と話す。  特例免除は、申請する年度または前年度に退職か失業した場合が対象になる。免除期間は、最長で退職した翌月から2年間。手続きは市区町村役場か社会保険事務所で行う。東京・江東区の担当者は「不況の影響もあってか、昨年から特例免除を申請する人が増えてきている」と話す。  国民年金保険料の申請免除には所得制限がある。申請者本人はもちろん、配偶者や世帯主を含めた世帯全体での、退職した前年の所得が審査の対象となる。社会保険庁によると、夫婦2人世帯の場合、全額免除を受けられる所得の目安は92万円以下。  これに対し、特例免除の場合、退職した人の所得が除外されるため、所得制限の審査のハードルが低くなる。ファイナンシャルプランナーの音川敏枝さんによると、単身者や、妻が専業主婦など、退職者の所得しかない場合は、特例免除が認められる。  出費を抑えられることに加え、「保険料の未納期間をうまないメリットもある」と音川さんは強調する。病気や事故で障害が残った際に受ける障害年金や、遺族年金、老齢基礎年金は、受給資格に必要な加入期間がある。未納期間があると、年金を受けられなくなることがある。だが、免除を受けている期間は「年金に加入している」と見なされる。  さらに、支払いを免除された期間も将来の年金額が一定額保証される。6月に改正国民年金法が成立し、これまで全額が免除された期間の年金額は保険料全額を納めた場合の3分の1として計算されていたが、2009年4月分から2分の1に引き上げられた。  「退職時は雇用保険の手続きなどで忙しく、年金まで気が回らない人も多い。経済的に余裕のない人にとって有利な制度なので、役所に問い合わせてください」と音川さん。  納付を免除された後、10年以内なら、さかのぼって保険料を納め、将来受け取る年金額を増やすこともできる。今年4月の免除分なら、19年4月末までは追納できる。 国民年金保険料の申請免除 経済的に困っていれば、保険料の納付免除が認められる。全額免除のほか、所得に応じて保険料の「4分の1」「2分の1」、「4分の3」の納付が認められる一部免除もある。