>「介護殺人未遂、裁判員『ひとごとと思えない』 山口地裁」『asahi.com』2009.9.9

裁判員制度になったからこそ、裁判に携わる人の意見が聞けた訳で。市民が市民を裁くって難しいことですね。 以下、朝日新聞HPより転載。
「介護殺人未遂、裁判員『ひとごとと思えない』 山口地裁」『asahi.com』2009.9.9 山口地裁で8日に始まった裁判員裁判は、介護に疲れた夫が寝たきりの妻を刺殺しようとしてけがをさせた殺人未遂事件が対象だ。審理は半日で終わり、検察側は懲役4年を求刑した。身近な介護の問題を裁判員らはどう判断するのか。  山口県周南市の無職岩崎政司(まさし)被告(63)は公判の冒頭、5月15日に自宅の寝室で妻百合江さん(60)の首を包丁で1回刺し、10日間のけがをさせたとする起訴内容を「間違いありません」と認めた。  検察側は、被告が脳の出血で寝たきりになった妻を96年から1人で介護していたと説明。介護疲れから無理心中を決意し、妻を刺した後、自分の首を刺したり、殺鼠剤(さっそざい)を飲んだりしたが死にきれず、110番して自首した経緯を明らかにした。  証人として出廷した被告の妹は「体の向きを変えたり水分の補給をしたり一生懸命だった。だから床ずれはなかった」などと、被告の献身的な介護ぶりを証言した。弁護人に心境を問われた被告は、妻を「ユリさん」と呼び、「ぼくが好いた人です。今でも好きです。ごめんね、すまなかったね、と真っ先に謝りたい」と嗚咽(おえつ)をもらした。  被告に対して、黒いスーツ姿の女性裁判員が法壇から身を乗り出し、目を見つめて語りかけた。「あなたが社会復帰した後の、奥さんとの関係が心配なんです」  この裁判員は、午前中にあった選任手続きの前に、報道陣の取材に「両親が遠方に住んでいて、父親が認知症の母を介護している」と明かしたうえで、「事件をひとごととは思えない」と話していた女性だった。    被告が「私が介護することはできないですから。(妻は)施設で一生生活して、私は家で生きていきたい」と語ると、女性は諭すように続けた。「あまり人に頼らない性格の方らしいですが、ぜひ人の手を借りてでも社会復帰をしてほしい」  被告は白髪交じりの短髪の頭を下げ、「頑張って前向きに生きていきたいと思います」と声を絞り出した。  弁護側は「被害者は被告が刑務所へ行くことを望んでいない」と主張。近所の人の減刑嘆願書も提出し、「懲役3年執行猶予4年が相当だ」と裁判員に訴えた。判決は9日に言い渡される。