「社会復帰支える『福祉士』」『読売新聞』2009年8月28日

精神保健福祉士も頑張っています。ただ、十分な社会資源が無いままにうつ病患者が病院から地域に放り出されてしまうのではないかという指摘もあるようです。ちなみに。社会福祉士の2009年3月31日現在の合格者数は、124,359人。登録者数は、109,158 人(平成21年2月末現在)。
「社会復帰支える『福祉士』」『読売新聞』2009年8月28日
患者の状態について意見を交わす精神保健福祉士佐藤直子さん(右)と教授の平安良雄さん(横浜市大病院で)

 統合失調症の患者では病状が良くなっても、自立して生計を営むあてがないなどの理由から長期入院を強いられるケースが少なくない。こういった患者の社会復帰を手助けするため、精神保健福祉士の役割が注目されている。

 中部地方に住んでいた40歳代の女性は、統合失調症で10年ほど前から入退院を繰り返した。両親は他界しており、知人宅に近い神奈川県内の病院に転院した。

 入院から1年たったころ、女性の貯金は底をついていた。病状は安定し、「仕事をしたい」と意欲もあったが、住まいのあてはなく、自立のめどは立たなかった。

 そこで、病院の精神保健福祉士佐藤直子さん(34)は、「再び働くためにも、まずは生活基盤作りが大切」と、女性に生活保護を受けてはどうかと勧めた。病気の前には自分で働き生活保護には抵抗感があったこの女性も、佐藤さんのアドバイスを受け入れ、3か月後、市役所に付き添われ手続きをすませた。

 次は住まいの確保だった。見知らぬ土地での独り暮らしに、女性は強い不安を感じていた。そこで、患者が共同生活するグループホームの見学や、生活雑貨の買い物、料理作りなどを一緒に行い、1年ほどかけて不安を解消していった。

 女性は3年たった今は友達も多くでき、軽作業の仕事を行うことを目標に元気に暮らしている。

 精神保健福祉士は1997年に国家資格として生まれた。精神保健福祉法障害者自立支援法などの知識を持ち、精神科の患者、障害者を手助けする。統合失調症うつ病などの精神科の病気の知識も兼ね備え、患者の病状に見合った支援を行えるのが特徴だ。

 佐藤さんは、会社勤務を経て福祉職に興味を持ち、7年前にこの資格を取った。昨年秋からは横浜市大病院に移り、うつ病患者の復職支援などに携わる。

 精神保健福祉士は現在4万4000人おり、病院や精神保健福祉施設、行政などで働いている。読売新聞の精神科主要病院への調査では、回答した222病院のうち8割で置かれていた。病院の相談窓口などで患者や家族の相談に応じる。

 厚生労働省は先月、19万人いる統合失調症の入院患者を、5年後に15万人に減らす目標を示している。横浜市大精神科教授の平安良雄さんは、「在宅復帰によって病状が改善する患者も多く、精神保健福祉士への期待は大きい」と話す。