「救える命・自殺未遂者を支える:第1部・現場/5 悩む精神保健福祉士 /秋田」『毎日新聞』2010年3月2日地方版

クライエントの相談に関わる過程で、援助者自身も大きなストレスを抱えることがあります。援助者の二次的外傷性ストレス、代理受傷、二次受傷などと呼ばれているようです。休日の気分転換やスーパービジョンなどの方法で自分の気持ちを整理する必要があります。 POSTLUDEさんのブログ記事が分かりやすい。 以下、毎日新聞HPより転載。
「救える命・自殺未遂者を支える:第1部・現場/5 悩む精神保健福祉士 /秋田」『毎日新聞』2010年3月2日地方版  ◇支え合う仕組みなく  「私が死なせちゃったのかな……」。精神保健福祉士の井上祥子さん(28)=仮名=はかつて、同僚にこう漏らした。  3年前の冬、受け持っていた20歳前後の女性患者が電話相談の直後に自ら命を絶った。今は「中途半端な気持ちで向き合っていたわけではない。やれることはやった」と思うようになった。それでも「彼女が好きだったミスターチルドレンの曲を聞くたび思い出す。もっとできることはあったのかなって」。      ◆   精神科や精神障害者デイケアなどの施設で、医師や作業療法士らと連携しながら医療者とは違う立場から患者や利用者を支援する精神保健福祉士。井上さんは中規模病院で、患者の相談に応じる「医療ソーシャルワーカー」を務めている。  かつて働いた精神障害者の社会復帰施設では、多くはないが利用者が自殺未遂を起こす場面に何度か遭遇した。女性患者も未遂を重ねた末の出来事だった。  自殺を図った人のほとんどは若い女性。不安になって井上さんのもとに電話がかかってくることもたびたびあった。とことんかかわればいいというわけではなく、適度な距離感が必要。しかし死の願望をほのめかし自傷や未遂を繰り返す人たちに対して、「話を聞き、その病状を医師に伝えることしかできない」もどかしさがあったという。  良くなったと思った人が突然落ち込んで自殺未遂を起こすこともあり、心理的負担は大きい。女性の死に触れた井上さんは「同僚と気持ちを出し合い、それが支えになった」というが、少ない人数に加えみな同じような悩みを抱える中で、別の職場へ移った同僚も多い。  「離れた立場の人も含め、もっと支え合う仕組みがあってもいいのでは」との思いを抱いている。      ◆  心の浮き沈みがあり自殺の危険性を抱える患者もいるが、「普段は優しい人たちばかりだった」と井上さんは強調する。当初は独り言などに怖いイメージを抱いていたが、仕事で「元気?」と声をかけられ、こちらが励まされることも多かった。逆に「家族が病気を分かってくれない」との嘆きを何度も聞き、周囲の無理解や偏見でさらに追い詰められていると考えている。  「精神障害者や自殺未遂者は、人の気持ちに敏感な人が多い。地域の中で身近に接する機会が増えれば、理解が深まりケアも広がるのでは」=つづく  ◇登録者、全国43位  財団法人社会福祉振興・試験センターによると、秋田県精神保健福祉士(PSW)登録者数は273人。隣県の青森(418人)、岩手(417人)の6割程度で、全国でも鳥取187人▽山梨254人▽山形257人▽和歌山258人--に次ぎ5番目に少ない(1月末現在)。県精神保健福祉士協会によると、秋田看護福祉大が09年4月に学科を新設する以前は養成機関がなかったことや、県内で活動する職場の絶対数が少ないという背景がある。加藤雅史会長は「PSWの仕事は、病院や相談機関など社会資源へつなぐ支援をすること。地域の行政や社会福祉士臨床心理士など他職種のネットワークと連携できれば、自殺未遂者や精神障害者のサポートができる」と強調する。