新刊案内

広瀬美千代『家族介護者のアンビバレントな世界―エビデンスとナラティブからのアプローチ 』ミネルヴァ書房,2010.10 中谷陽明「在宅の家族介護者の負担」『現代のエスプリ』no.519,2010.10,pp.27-38にて、末文で「ネガティブ・ポジティブ両側面を測定するスケールの開発・測定を試み、両側面から家族介護者支援のアプローチを統合的に行っていこうとする研究もみられる。在宅介護者の負担研究の今後の新しい展開として、大いに期待できるもの」(pp.36-37)と紹介された一連の研究が収められている書籍。 ○内容 介護の現実を捉え直し、その絶対的な価値と幸福を探究した1冊。 本書は家族介護者のアンビバレンス(両価性)の本質を、「負担が持つ意味」に焦点を当て、異なる2つのアプローチから探究したものである。 家族介護者がアンビバレンスに耐えることで介護と共存し、価値や信念により充足や学びを見出すことによって、ストレングスを成し遂げていくという過程の分析について詳述した1冊。 ○目次 まえがき 序 章 研究背景と目的  1)量的研究  2)質的研究 第1章 家族介護者の精神的側面の研究における成果と課題  1)家族介護者の精神的健康に関する主な理論  2)否定的評価に関する概念整理  3)肯定的評価に関する概念整理 第2章 アンビバレンスを測定する研究の枠組み  1)「介護評価」に関する概念整理  2)「認知的介護評価」尺度の提案 第3章 アンビバレンスを測定する尺度の構造  1)領域設定  2)研究方法  3)尺度の構造的妥当性 第4章 否定的評価における要因分析  1)否定的評価に関連する要介護高齢者・介護者要因  2)否定的評価に関連する要介護高齢者のADLの要因 第5章 肯定的評価における要因分析  1)肯定的評価に関連する要介護高齢者・介護者要因  2)肯定的評価に関連するサポート要因  3)関連要因からみた両評価の特徴 第6章 肯定的評価が否定的評価に与える緩衝効果  1)肯定的評価と否定的評価の関係  2)研究方法  3)資源要因別の効果  4)否定的評価に対する緩衝効果と軽減効果 第7章 アンビバレントなタイプの特徴と対処スタイル  1)介護者タイプの類型化の意義と方法  2)研究方法  3)アンビバレントなタイプとは 第8章 夜間介護と精神的健康  1)家族介護者の抑うつ  2)研究方法  3)夜間介護を行う家族介護者の健康度  4)夜間介護を行う家族介護者 第9章 「アンビバレントな世界」の表れ方  1)「アンビバレントな世界」と現象学的アプローチ  2)研究方法  3)行為を通して価値を獲得していく過程  4)「アンビバレントな世界」 第10章 家族介護者の「生きられた世界」の構造  1)「アンビバレントな世界」を支える世界  2)介護にみられる人生観  3)「生きられた世界」 第11章 「認知」と「構築」のパラダイム  1)2つのパラダイムに基づく知見――現象学的態度に学ぶ  2)量的研究と質的研究の融合に向けて 第12章 介護者理解のプラクティス  1)介護者支援の福祉体制  2)介護者支援における心理学的アプローチ 終 章 アンビバレンスからストレングスへ  1)「科学的根拠」と「語り」からの考察  2)ストレングスに向けた家族介護者研究の展望 参考文献 あとがき 索  引