新刊案内

山北さんが、日本大学にいらっしゃるとは…。驚きました。 青木秀男編『ホームレススタディーズ』ミネルヴァ書房,2010.11 ○内容 ますます深く錯綜する〈問題〉 転回するホームレス問題の諸相に分け入り、現代社会に刻まれた亀裂をとらえる かつて寄せ場へと凝集されてきた野宿生活者が1990年代半ばより大都市部を中心に急増し、ホームレス問題としてひろく社会問題と認められるようになった。さらに近年の不安定居住者の増加はホームレス問題が今後ますます広がることを予示していよう。 本書はこの拡大するホームレス問題における排除と包摂の諸相に、歴史・労働現場・支援といったさまざまな文脈から鋭くせまる。 ○目次 はじめに――本書への誘い 序 章 ホームレス・スタディーズへの招待(堤圭史郎)  1)「ホームレス」と「野宿者」  2)隠蔽され続けたホームレス問題  3)特措法体制における排除と包摂  4)「ホームレス問題」の現在  第Ⅰ部 労働の歴史と空間 第1章 排除する近代     ――大正期広島の乞食世界(青木秀男)  1)排除の原基  2)階層的な排除  3)社会的な排除  4)排除を生きる  5)乞食という問題 第2章 寄せ場釜ヶ崎」の生産過程にみる空間の政治     ――「場所の構築」と「制度的実践」の視点から(原口 剛)  1)戦後「釜ヶ崎」をめぐる問い  2)「釜ヶ崎」の概観  3)場所の構築――集合的イメージから社会学的・政策的定義へ  4)制度的実践――「釜ヶ崎(あいりん)対策」の展開過程と空間の変容  5)政治的帰結としての「ホームレス問題」 第3章 飯場労働者における「勤勉」と「怠け」     ――労働者の選別と排除のメカニズム(渡辺拓也)  1)「勤勉」と「怠け」という問題  2)飯場飯場労働者の概要  3)飯場労働の中身  4)飯場労働者のモチベーション  5)飯場労働者間の関係性  6)怠け者扱いの効用と落とし穴 第4章 放置された不安定就労の拡大とホームレス問題     ――寄せ場日雇労働者を野宿生活に追い込んだ要因(大倉祐二)  1)「派遣切り」問題のウソ  2)寄せ場における就労・生活の不安定性  3)労働市場としての釜ヶ崎の「変容」  4)なにが釜ヶ崎日雇労働者を野宿生活に追い込んだのか  5)就業構造の変容について  6)新たな就労経路の確立・拡大について  7)寄せ場化しない寄せ場の拡大  8)就労・生活の不安定化の深化とその隠蔽  第Ⅱ部 社会関係と意味世界  第5章 家族規範とホームレス     ――扶助か桎梏か(妻木進吾/堤圭史郎)  1)ホームレスの急増と問題化される家族  2)野宿者の家族史――1999年野宿者調査から  3)ネットカフェ生活者の家族史――2007年調査から  4)家族イデオロギーの社会的帰結 第6章 ジェンダー化された排除の過程     ――女性ホームレスという問題(丸山里美)  1)隠れた女性のホームレス  2)なぜ女性の野宿者は少ないのか  3)貧困女性の生活実態  4)ホームレスへと至る排除の過程  5)女性ホームレスという問題 第7章 教会に集う野宿者の意味世界     ――釜ヶ崎における救世軍の活動を事例に(白波瀬達也)  1)公助から排除される野宿者  2)釜ヶ崎におけるキリスト教の概況  3)救世軍西成小隊による野宿者の包摂  4)入信・所属した野宿者の生活史  5)野宿者の入信・所属プロセスの差異と共通点  6)どのような野宿者が入信・所属するのか 第8章 野宿者と支援者の協同     ――「見守り」の懊悩の超克に向けて(山北輝裕)  1)意図せざる排除を越えて  2)「見守り」という社会的実践  3)「見守り」と差異  4)〈対話〉の知に向けた課題 おわりに――旅を終えて 文献一覧/索引 [コラム] 野宿者の仕事 生活保護と野宿者 「福祉の街」へと変わりゆく釜ヶ崎 強制撤去の論理 「公園テント住民票」裁判 ホームレスの(支援)運動